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【解説】預貯金口座へのマイナンバーの付番(2018年1月から開始)

2017/09/05

【執筆者:渡邉雅之】

今回は、2018年1月1日から開始をする預貯金口座へのマイナンバーの付番について解説いたします。

なお、ご相談については下記にご連絡ください。

弁護士法人三宅法律事務所 パートナー

弁護士 渡邉 雅之

TEL: 03-5288-1021

Email: m-watanabe@miyake.gr.jp

【関連リンク】
個人情報保護法・マイナンバー法対応規程集
匿名加工情報への対応(第1回):匿名化された個人情報の取扱いについて
匿名加工情報への対応(第2回):匿名加工情報について
匿名加工情報への対応(第3回):匿名加工情報取扱規程・匿名加工情報取扱方針(規程付)
医療ビックデータ法の概要

1 預貯金口座へのマイナンバーの付番
 マイナンバー法の改正により、2018年1月から、預金保険機構によるペイオフのための預貯金額の合算や金融機関に対する社会保障制度における資力調査や税務調査のために、預貯金口座にマイナンバーが付番されることになります。
 これにより、社会保障制度において所得や資産を適正に把握することができ、また、公平・適正に税務を執行することができることが期待されています。また、金融機関の利用者にとっては、例えば金融機関が破綻したときに、預金保険機構が預貯金額を合算することにより、あるいは激甚災害のときにスムーズな支払い等々ができる等のメリットもあります。さらに、現在も認められている税務調査や社会保障における資力調査の実効性を高めることにもなります。
 年金の給付額等を適正なものにするために、マイナンバーを利用して対象者の預貯金口座を調べることを目的としているものであり、高齢者の金融資産を調べて、一定の資産のある低年金者の負担を引き上げるためというふうなことを目的としているものではありません。
 銀行等の金融機関は、預貯金者等情報(預貯金者の氏名(法人については、名称)及び住所又は居所その他預貯金等の内容に関する事項)を当該預貯金者の番号(個人番号又は法人番号)により検索することができる状態で管理しなければならなくなります。
したがって、金融機関は、複数口座について一つの個人番号や法人番号ですべて紐付けすることが求められることになります。
2 利用目的の通知等
 銀行等の金融機関は、お客さまに対して、「預貯金口座付番に関する事務」という利用目的を通知・公表・明示等することが求められます。「預貯金口座付番に関する事務」との利用目的には、税務調査、社会保障における資力調査、預金保険法の規定に基づく名寄せ等の対応が特定されていると解釈されます。
新規のお客様については、預金口座開設申込書に個人番号や法人番号の記載欄が設けられることになると考えられます。既存のお客さまに対しては、個別にマイナンバーの記載を求める通知書を送付し、それを返送してもらうという手続を取ると考えられます。
3 任意の付番
 預貯金口座にもマイナンバーが付番されますが、お客さまからのマイナンバーの告知は任意のものに限られることに留意しなければなりません。新規のお客さまが個人番号を提供しないことを理由として、預金口座の開設を拒否することもできないでしょう。
4 3年以内の見直し
 預貯金付番の規定の施行後3年を目途として、金融機関が預貯金者から適切にマイナンバーの提供を受ける方策及び施行状況についての検討を加えて、必要があると認めるときは、その結果に基づいて国民の理解を得ながら所要の措置を講ずるものとされております。したがって、預貯金口座へのマイナンバーの任意による付番開始の3年以内(2021年まで)には、個人の預貯金口座についてもマイナンバーの付番が義務化される可能性があります。
5 既存口座への対応
 既存の個人の預貯金口座については、同一の金融機関において、投資信託の特定口座等を開設しており、既に個人番号の申告をしているお客様については、「金融商品取引に関する法定調書作成事務」等の利用目的の変更をウェブサイトへの掲載や営業拠点へのポスター・書面等の掲示の方法で通知・変更することにより、「預貯金口座付番に関する事務」という利用目的を追加できると考えられます。お客様への通知・公表は、預貯金口座付番の開始日を明示したうえで、開始日の半年程度前から実施することが望ましいです。
6 お客さまの懸念への対応
 お客様としては、自らが金融機関に届け出ている個人番号に紐づけられている投資信託口座や預貯金口座について、自らの預貯金口座や投資信託口座が税務署等の政府当局に知られてしまうと懸念されて、金融機関に対して個人番号を届け出るのを躊躇されるかもしれません。
 しかしながら、銀行等の預貯金口座に個人番号が付番されていない現在においても、国税通則法に基づく税務職員が有する質問調査権(質問したり、帳簿書類を確認することができる権利)は調査対象者の取引先にも及ぶことが認められています。銀行も取引先の一つであるので、この質問調査権に基づき税務職員は、お客様の預貯金口座に対して調査が可能なのです。
 すなわち、預貯金口座に対して個人番号が付番されるか否かを問わず、お客様の預貯金口座は税務調査の対象となっています。
 そもそも、お客様が所得税や相続税等の税金をきちんと納めている限りは、税務調査について恐れることはありません。したがって、銀行等のマイナンバーの提供の求めに対してご協力いただければ幸いです。

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