(執筆者:渡邉雅之)
〇連載
【相続法改正】施行日政令・預貯金の仮払いの限度額
【相続法改正】相続法改正の経緯と概要
【相続法改正】配偶者居住権・配偶者短期居住権
【相続法改正】長期間婚姻している夫婦間での居住用建物の贈与に関する改正
【相続法改正】遺産分割前の預貯金債権の仮払いを認める改正
平成30年(2018年)11月21日、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(平成30年法律第72号)および「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(平成30年法律第73号)の施行日政令が公布されました。同改正については、法務省の「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」もご覧ください。
「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」(平成30年政令第316号)によれば、相続法改正の施行期日は以下のとおりとなります。
�@原則:平成31年(2019年)7月1日
・持戻し免除の意思表示の推定規定
・預貯金債権の仮払い制度の創設(家事事件手続法の保全処分の要件の緩和・家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払戻しを認める方策)
・遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲
・遺言執行者の権限の明確化
・遺留分制度に関する見直し
・相続の効力等に関する見直し
・相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
�A配偶者短期居住権、配偶者居住権:平成32年(2020年)4月1日
※なお、自筆証書遺言の要件の緩和については、平成31年(2019年)1月13日に施行されることが既に法律上定まっております。
「法務局における遺言書の保管等に関する法律の施行期日を定める政令」(平成30年政令第317号)によれば、自筆証書遺言の保管制度が施行されるのは、平成32年(2020年)7月10日とされています。
※法務省も施行期日を公表しています(「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日について」)。
なお、相続法改正では、家庭裁判所の判断を経ずに、各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に当該共同相続人の法定相続分を乗じた額の払戻しが認められることになりますが(改正909条の2)、「標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額」を限度とすることとされています。
本日公布された、「民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令」(平成30年法務省令第29号)によれば、この金額は「150万円」とされます。すなわち、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始時の債権額の3分の1(各金融機関ごとに150万円を限度)とした払戻しが認められることになります。
「150万円」は、 約1年間分の生計費又は平均的な葬式費用を賄うことができると考えられる金額とされています(「民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令案」 に関する意見募集の結果について)。