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執筆者:渡邉雅之
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【2020年10月15日更新】_
厚生労働省のウェブページ『医療保険の被保険者等記号・番号等の告知要求制限について』の『3.本人確認等のために被保険者証の提示等を求める際の留意事項』において、健康保険証上のQRコードの取扱いについての記載がなされました。
『※被保険者証等にQRコードがある場合について、そのQRコードを読み取ると2.の記号・番号等がわかるものについては、2.の記号・番号等同様にマスキングを施す必要があります』
これにより、2020年10月以降に金融機関等が本人確認書類として受領した健康保険証に、QRコードで記号・番号等がわかるものについては、QRコードをマスキングすることが必要となりましたのでご留意ください。
※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です
【本人確認書類】2020年10月1日より、健康保険証の「保険者番号及び被保険者等記号・番号」が告知要求制限に〜本人確認書類としての取扱いはどうなるか〜(2020年10月15日更新版)
『医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律』(令和元年法律第9号)により、健康保険法その他の医療保険関連の法律が改正され、2020年(令和2年)10月1日より、健康保険証等の「被保険者等記号・番号等」について告知要求が制限されることになりました。
本ニュースレターでは、健康保険証等の「被保険者等記号・番号等」の告知要求制限の背景および実務上の取扱いについて説明いたします。
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1.健康保険証等の「被保険者等記号・番号等」の告知要求制限がなされる背景
2021年3月から、保険医療機関等で療養の給付等を受ける場合の被保険者資格の確認について、個人番号カード(マイナンバーカード)によるオンライン資格確認を導入されます。すなわち、マイナンバーカードが、健康保険証として使えることになります。(※)
(※)「マイナポータル」でマイナンバーカードを健康保険証として利用することの事前登録が必要です。【マイナンバーカードの健康保険証利用が始まります〜病院・歯科医院・薬局で利用可能〜】
オンライン資格確認では、マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等により、オンラインで資格情報が確認できます。
【出所】厚生労働省作成資料
健康保険証等の被保険者記号・番号は、これまで、世帯単位で付与されていました。新規発行の保険証については、個人を識別する2桁の番号が追加され、個人単位となります。発行済みの保険証は、2桁番号がなくても使用できることとし、回収・再発行を不要とされます。
なお、75歳以上の後期高齢者医療制度は個人単位なので、保険証は変更されません。
【出所】厚生労働省作成資料
医療保険の被保険者等記号・番号が個人単位化されることに伴い、保険者番号及び被保険者等記号・番号(「被保険者等記号・番号等」)について、個人情報保護の観点から、健康保険事業又はこれに関連する事務の遂行等の目的以外で告知を求めることを禁止する「告知要求制限」の規定が設けられました。
告知要求制限の規定は2020年(令和2年)10月1日から施行され、同日以降、原則とし て、本人確認等を目的として被保険者等記号・番号等の告知を求めることが禁止されます。
【出所】厚生労働省作成資料
2.告知要求制限の対象となる被保険者等記号・番号等
告知要求制限の対象となる被保険者等記号・番号等は、次に掲げる記号・番号等です。
健康保険法(大正11 年法律第70 号)第194 条の2第1項に規定する「被保険者等記号・番号等」(保険者番号及び被保険者等記号・番号)
船員保険法(昭和14 年法律第73 号)第143 条の2第1項に規定する「被保険者等記号・番号等」(保険者番号及び被保険者等記号・番号)
私立学校教職員共済法(昭和28 年法律第245 号)第45 条第1項に規定する加入者等記号・番号等(保険者番号及び加入者等記号・番号)
国家公務員共済組合法(昭和33 年法律第128 号)第112 条の2第1項に規定する組合員等記号・番号等(保険者番号及び組合員等記号・番号)
国民健康保険法(昭和33 年法律第192 号)第111 条の2第1項に規定する「被保険者記号・番号等」(保険者番号及び被保険者記号・番号)
地方公務員等共済組合法(昭和37 年法律第152 号)第144 条の24 の2第1項に規定する組合員等記号・番号等(保険者番号及び組合員等記号・番号)
・高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57 年法律第80 号)第161 条の2第1項に規定する「被保険者番号等」(保険者番号及び被保険者番号)
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3.告知要求制限の具体的内容
健康保険法では、以下の告知制限が設けられています(健康保険法194条の2)。
何人も、業として行う行為に関し、取引の契約の締結した相手方又は当該相手方以外の者に係る被保険者等記号・番号等を告知することを求めてはなりません(同条3項)。
業として、被保険者等記号・番号等の記録されたデータベースを構成することも禁止されます(同条4項)。
厚生労働大臣は、これらの規定に違反した者が更に反復してこれらの規定に違反する行為をするおそれがあると認めるときは、当該行為をした者に対し、当該行為を中止することを勧告し、又は当該行為が中止されることを確保するために必要な措置を講ずることを勧告することができます(同条5項)。
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〇健康保険法
(被保険者等記号・番号等の利用制限等)
第百九十四条の二 厚生労働大臣、保険者、保険医療機関等、指定訪問看護事業者その他の健康保険事業又は当該事業に関連する事務の遂行のため保険者番号及び被保険者等記号・番号(以下この条において「被保険者等記号・番号等」という。)を利用する者として厚生労働省令で定める者(以下この条において「厚生労働大臣等」という。)は、当該事業又は事務の遂行のため必要がある場合を除き、何人に対しても、その者又はその者以外の者に係る被保険者等記号・番号等を告知することを求めてはならない。
2 厚生労働大臣等以外の者は、健康保険事業又は当該事業に関連する事務の遂行のため被保険者等記号・番号等の利用が特に必要な場合として厚生労働省令で定める場合を除き、何人に対しても、その者又はその者以外の者に係る被保険者等記号・番号等を告知することを求めてはならない。
3 何人も、次に掲げる場合を除き、その者が業として行う行為に関し、その者に対し売買、貸借、雇用その他の契約(以下この項において「契約」という。)の申込みをしようとする者若しくは申込みをする者又はその者と契約の締結をした者に対し、当該者又は当該者以外の者に係る被保険者等記号・番号等を告知することを求めてはならない。
一 厚生労働大臣等が、第一項に規定する場合に、被保険者等記号・番号等を告知することを求めるとき。
二 厚生労働大臣等以外の者が、前項に規定する厚生労働省令で定める場合に、被保険者等記号・番号等を告知することを求めるとき。
4 何人も、次に掲げる場合を除き、業として、被保険者等記号・番号等の記録されたデータベース(その者以外の者に係る被保険者等記号・番号等を含む情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。)であって、当該データベースに記録された情報が他に提供されることが予定されているもの(以下この項において「提供データベース」という。)を構成してはならない。
一 厚生労働大臣等が、第一項に規定する場合に、提供データベースを構成するとき。
二 厚生労働大臣等以外の者が、第二項に規定する厚生労働省令で定める場合に、提供データベースを構成するとき。
5 厚生労働大臣は、前二項の規定に違反する行為が行われた場合において、当該行為をした者が更に反復してこれらの規定に違反する行為をするおそれがあると認めるときは、当該行為をした者に対し、当該行為を中止することを勧告し、又は当該行為が中止されることを確保するために必要な措置を講ずることを勧告することができる。
6 厚生労働大臣は、前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その者に対し、期限を定めて、当該勧告に従うべきことを命ずることができる。
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4.告知要求制限の対象とならない場合
(1)医療保険者や保険医療機関等、健康保険事業又はこれに関連する事務の遂行のために被保険者証の記号・番号等を利用する者、 (2)(1)以外の者が健康保険事業又はこれに関連する事務の遂行のために被保険者証の記号・番号等の利用が特に必要な場合 は、告知要求制限の対象にならず、記号・番号等の告知を求めることが出来ます。これらは健康保険法施行規則等に定められており、具体例として以下のようなケースが挙げられます。
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(1)に該当する者(健康保険法施行規則第156条の2第1項)の例
・保険医療機関、保険薬局、指定訪問看護事業者等
・医療保険の保険者
・都道府県知事、市町村長 他
(2)に該当する場合の例
・保険者から委託を受けた者が、当該委託を受けた健康保健事業に関連する事務を行う場合(例:医療保険者と 委託契約を締結したスポーツクラブ)
・被保険者の同意を得た者又は被保険者から委託を受けた者が、それぞれ当該同意を得た又は当該委託を受けた 保険者(当該保険者から委託を受けた者を含む。)に対する保険給付に係る請求その他の行為を行う場合(例: 保育施設が児童の被保険者証の写しを預かる場合)
・特定健康診査、特定保健指導その他の健康診断を実施する機関が、当該健康診断を実施する場合
5.本人確認等のために被保険者証の提示等を求める際の留意事項
総務省、財務省、文部科学省、厚生労働省は共同で、2020年(令和2年)7月8日に「医療保険の被保険者等記号・番号等の告知要求制限について」と題する事務連絡(「事務連絡」)を発出しました。この事務連絡は、同年10月5日付の事務連絡「医療保険の被保険者等記号・番号等の告知要求制限について」で更新されています。
これらの事務連絡では、犯罪による収益の移転の防止に関する法律(「犯収法」)などで求められる本人確認等のために被保険者証の提示等を求める際の留意事項として以下の点について留意することとされています。
�@被保険者証の提示を受ける場合には、当該被保険者証の被保険者等記号・番号等を書き写すことのないようにすること。また、当該被保険者証の写しをとる際には、当該写しの被保険者等記号・番号等を復元できない程度にマスキングを施すこと。
�A被保険者証の写しの送付を受けることにより本人確認等を行う場合には、あらかじめ申請者や顧客等に対し被保険者等記号・番号等にマスキングを施すよう求め、マスキングを施された写しの送付を受けること。また、被保険者等記号・番号等にマスキングが施されていない写しを受けた場合には、当該写しの提供を受けた者においてマスキングを施すこと。
�B被保険者等記号・番号等の告知を求めているかのような説明を行わないこと。例えば、ホームページ等において、「被保険者証の記号・番号が記載された面の写しを送付してください」といった記載を行わないよう留意すること。
�Cなお、これらの取扱いは、令和2年10 月1日の改正法施行以降に被保険者等記号・番号等の告知を求める場合に適用されるものであり、改正法施行前に取得した被保険者証の写し等について、改めてマスキングを施す等の対応を求めるものではないこと。(※2020年10月5日付の事務連絡で追加された留意事項)
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上記�Aのとおり、非対面で健康保険証の写しを本人確認書類として送付を受ける場合には、事前に顧客に対して被保険者等記号・番号等にマスキングを施すよう求め、マスキングを施された写しの送付を受けることが必要となります。
また、仮に顧客が被保険者等記号・番号等をマスキングしないで健康保険証の写しを送付してきた場合には、事業者側においてマスキングを施すことが必要となります。
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6.健康保険証のQRコードはどうするのか?
※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です
協会けんぽが発行する保険証には2015年(平成27年)からQRコードが券面に表示されています。
これをスマートフォンのQRコード読み取りアプリで読み取ると当該被保険者の記号・番号が分かります。
「事務連絡」には記載がありませんが、厚生労働省のウェブページ『医療保険の被保険者等記号・番号等の告知要求制限について』の『3.本人確認等のために被保険者証の提示等を求める際の留意事項』において、以下の健康保険証上のQRコードの取扱いについての記載がなされました。
『※被保険者証等にQRコードがある場合について、そのQRコードを読み取ると2.の記号・番号等がわかるものについては、2.の記号・番号等同様にマスキングを施す必要があります』
これにより、2020年10月以降に金融機関等が本人確認書類として受領した健康保険証に、QRコードで記号・番号等がわかるものについては、QRコードをマスキングすることが必要となりましたのでご留意ください。
なお、QRコードに関する株式会社デンソーウェーブのFAQによれば、商標利用しない場合であっても、登録商標文の記載を求めていることから、「※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です」といった記載をした方がよいと思われます(商用利用でない場合に商標権侵害とまで言えるかは疑問がありますが・・・)。このような登録商標文を記載したくないのであれば、「二次元バーコード」といった言葉を代わりに用いることも考えられます。
7.確認記録への記録事項
犯収法では確認記録に「記号番号その他の当該本人確認書類又は補完書類を特定するに足りる事項」(犯収法施行規則20条1項11号)を記録することが求められます。
この点、健康保険証については、今後は「被保険者等記号・番号等」を確認記録に記録することが許されなくなるので、代わりに何を記録すればよいか問題となります。
この点、同様に告知要求制限が設けられている国民年金手帳の基礎年金番号(国民年金法108条の4)については、基礎年金番号以外の事項(例えば、交付年月日等の国民年金手帳に記載されている事項)を記載することとされています。
この取扱いを参考にすると、健康保険証の「保険者名称」「交付年月日」を記録することが考えられます。