TOPICS

トピックス・法律情報

【改正民法】施行期日政令の公布

2017/12/20

【執筆者:渡邉雅之】

平成29年(2017年)12月20日に、「民法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」(平成29年政令309号、以下「民法改正法施行期日政令」といいます。)が公布されました。
同政令は、平成29年(2017年)6月2日に公布された「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号、以下「民法改正法」といいます。)の施行期日を定める政令です。

政令第309号
民法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令
内閣は、民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号) 附則第1条 (第1号を除く。)の規定に基づき、この政令を制定する。
_
民法の一部を改正する法律の施行期日は平成32年4月1日とし、同法附則第1条第2号に掲げる規定の施行期日は平成30年4月1日とし、同条第3号に掲げる規定の施行期日は平成32年3月1日とする。
_
法務大臣    上川 陽子
内閣総理大臣  安倍 晋三

民法改正法附則1条には、以下のとおり、民法改正法の施行期日が定められ、具体的な施行期日は政令によることとされています。
民法改正法施行期日政令は、民法改正法の具体的な施行期日を定めるものです。

(施行期日)
第1条 この法律は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
 一 附則第37条の規定 公布の日
 二 附則第33条第三項の規定 公布の日から起算して1年を超えない範囲内に
_ _ _ _ _ _おいて政令で定める日
_ _ 三 附則第21条第2項及び第3項の規定 公布の日から起算して2年9月を
_ _ _ _ _ _超えない範囲内において政令で定める日

民法改正法施行期日政令により定められたことは、次の3点です。

1 民法改正法の原則的な施行期日
 民法改正法施行期日政令により、民法改正法の原則的な施行期日は、2020年4月1日とされました。
 民法改正法においては、「定型約款に関する規律」、「瑕疵担保責任の廃止・契約不適合性の重視」、「消滅時効制度の見直し」、「法定利率の見直し」、「保証制度の見直し」、「不動産賃貸借契約における敷金の返還や原状回復義務の明確化」などの改正が行われますが、原則としてこの日から適用が行われることになります。

2 定型約款の規律の不適用に関する反対の意思表示の行使が可能となる期日

(定型約款に関する経過措置)
第33条 新法第548条の2から第548条の4までの規定は、施行日前に締結された定型取引(新法第548条の2第1項に規定する定型取引をいう。)に係る契約についても、適用する。ただし、旧法の規定によって生じた効力を妨げない。
2 前項の規定は、同項に規定する契約の当事者の一方(契約又は法律の規定により解除権を現に行使することができる者を除く。)により反対の意思の表示が書面でされた場合(その内容を記録した電磁的記録によってされた場合を含む。)には、適用しない。
3 前項に規定する反対の意思の表示は、施行日前にしなければならない。

民法改正法により、新たに定型約款に関する規律が設けられます(改正548条の2〜548条の4)。
改正548条の2第1項では、定型約款の定義が定められるとともに、みなし合意の効力が認められるための組入要件が定められています。この組入要件の関係では、一部の特別法による手当もされています。また、改正548条の2条第2項では、不当条項と不意打ち条項を規制するため、みなし合意の効力が認められない場合について定めています。
改正548条の3では、定型約款の内容の表示に係る相手方の請求権について定められています。
改正548条の4では、定型約款の変更について定められています。
民法改正法附則33条1項においては、これらの定型約款に関する規律が、施行日前に締結された定型取引に係る契約にも適用することとされています。
ただし、定型取引の当事者の一方(契約又は法律の規定により解除権を現に行使することができる者を除く。)により反対の意思の表示が書面でされた場合(電磁的記録による場合を含む。)には、定型約款に関する規律は適用されないことになります(民法改正法附則33条2項)。
この反対の意思表示は、「改正法の公布の日から起算して1年を超えない範囲内で定める政令で定める日」(民法改正法附則1条2号)からすることができ、施行日の前までにしなければなりません(同33条3項)。
民法改正法施行期日政令により、この反対の意思表示が平成30年(2018年)4月1日から2020年3月31日までになされなければならないことになりました。

預金約款は、定型約款に該当すると考えられますが、普通預金約款においては、預金者はいつでも預金契約を中途解約することができることとされているので、定型約款に関する規律を適用しないこととする反対の意思表示を行使することはできないと考えられます。これに対して、定期預金約款においては、預金者は預金契約を中途解約することが制限されているのが通常ですので、定型約款に関する規律を適用しないこととする反対の意思表示を行使することができると考えられます。

3 保証人保護のための公正証書の作成の嘱託が可能となる期日

(保証債務に関する経過措置)
第21条 施行日前に締結された保証契約に係る保証債務については、なお従前の例による。
2 保証人になろうとする者は、施行日前においても、新法第465条の6第1項(新法第465条の8第1項において準用する場合を含む。)の公正証書の作成を嘱託することができる。
3 公証人は、前項の規定による公正証書の作成の嘱託があった場合には、施行日前においても、新法第465条の6第2項及び第465条の7(これらの規定を新法第465条の8第1項において準用する場合を含む。)の規定の例により、その作成をすることができる。

民法改正法により、以下のような保証人保護のための制度の拡充がなされます。

●個人保証については、『事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約』または『主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約』は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一か月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じないこととされます(改正465条の6)。
●保証人保護のために情報提供義務が拡充されます(改正465条の10、458条の2、458条の3)。
●個人の根保証契約については、極度額の定めを置くことが求められることになります(改正465条の4)。
●連帯保証人に対する履行の請求が主債務者には及ぶこととされています(絶対効)が、これが及ばないこと(相対効)になります(改正458条、441条)。

民法改正法附則21条1項により、施行日(2020年4月1日)前に締結された保証債務については、民法改正法の施行前の民法の規定が適用されることとされています。

ただし、保証人になろうとする者は、個人保証に関して、公正証書の作成を要する場合(改正465条の6第1項)において、「公布の日から起算して2年9月を超えない範囲内において政令で定める日」から公正証書の作成の嘱託ができることとされています(民法改正法附則21条2項)。そして、公証人は、この保証人となろうとする者から公正証書の作成の嘱託があった場合は、同日から改正465条の6第2項の規定にしたがって作成することができることとされています(民法改正法附則21条3項)。
民法改正法施行期日政令により、保証人となろうとする者は、2020年3月1日より、公正証書の作成の嘱託ができ、公証人も公正証書の作成ができることとされました。

ACCESS 所在地
弁護士法人 三宅法律事務所  MIYAKE & PARTNERS

大阪事務所 OSAKA OFFICE

〒541-0042
大阪市中央区今橋3丁目3番13号
ニッセイ淀屋橋イースト16階
FAX
06-6202-5089

東京事務所 TOKYO OFFICE

〒100-0006
東京都千代田区有楽町1丁目7番1号
有楽町電気ビルヂング北館9階
FAX
03-5288-1025