(執筆者:弁護士 福田泰親)
【Q.】
売店の一部が、当社の商品をインターネットで安く販売していることが判明しました。当社のブランドイメージを保持するため、インターネット販売をやめさせたいと思いますが、これは違法になりますか?
【A.】
1.はじめに
メーカーは、自社商品の品質確保やブランドイメージ等のため、様々な販売方法を打ち立て、これを小売店に実践させています。他方、小売店からすれば、本来自由であるはずの販売活動が一定の範囲で制限されることになりますので、メーカーによる制限は常に認められるものではありません。では、どのような制限であれば認められるのでしょうか。
_
2.独占禁止法上の考え方
メーカーが、小売店の販売方法に関する制限を手段として、小売店の販売価格等についての制限を行っている場合には、価格競争を阻害しているとして違法性が認められる場合があります(一般指定12項[拘束条件付取引]、独占禁止法第19条)。この点について、公正取引委員会が策定する「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(以下「ガイドライン」)では、メーカーが小売店に対して販売方法を制限することは、商品の安全性の確保、品質の保持、商標の信用の維持等、当該商品の適切な販売のためのそれなりの合理的な理由が認められ(�@)、かつ、ほかの小売店に対しても同等の条件が課せられている場合(�A)には、それ自体は独占禁止法上問題となるものではないとしています。
�@の「それなりの合理的な理由」について、一見するとかなり緩やかに認められるように思えますが、インターネット販売を制限する場面では、安売りの禁止を目的としていると考えられやすいため、メーカーにとってインターネット販売を制限する合理的な理由があるのかをよく検討する必要があります。
�Aの「同等の条件」について、販売方法を制限する場合には特定の小売店にのみ制限を設けることはできず、すべての小売店に対して一律に同等の制限を設ける必要があります。
_
3.具体的検討
ご質問のインターネット販売の禁止については、どのように評価されるでしょうか。
「�@それなりの合理的な理由」でみると、そもそもこれまでにインターネット販売を禁止していたのかどうかが問題となります。これまでは特に制限していなかったにもかかわらず、インターネットで安売りされていることがわかった途端、新たに制限をかけるようになったという場合には、まさに価格競争を制限する目的といえますので、そこに合理的な理由を認めることは難しいでしょう。また、ブランドイメージの保持という目的も抽象的です。商品がインターネットで販売された場合にはどのようなことが懸念されるのかという点を、具体的に整理しておく必要があります。
「�A同等の条件」でみると、安売りをする小売店だけでなく、ほかの小売店に対しても一律にインターネット販売を制限することが必要です。
販売方法の制限が独占禁止法に違反すると判断された場合、排除措置命令の対象になるほか(独占禁止法第20条)、小売店から差止請求や損害賠償請求がなされる場合があります(独占禁止法第24条及び第25条)。
_
4.事業者の留意点
ガイドラインは、�@及び�Aの要件を満たさない場合は常に違法とする、というものではありません。販売方法の制限に関する適法性の判断にあたっては、商品の内容、市場シェア、市場の構造などを個別具体的に検討する必要がありますので、判断に迷われた場合には専門家にご相談ください。