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労働契約法改正による「2018年問題」に備える

2017/09/20

(執筆者:弁護士 福田泰親)

【Q.】
労働契約法の改正により、2018年から本格的に有期労働契約から無期労働契約への転換が開始すると聞きました。具体的にどのような制度なのでしょうか。またどのような準備が必要でしょうか。

【A.】
1.無期転換ルールの導入
 2013年4月1日に有期契約労働者の雇用安定等を図る目的で改正労働契約法が施行されました。新たに導入された制度として、通算5年を超えて反復更新された有期労働契約を、期間の定めのない労働契約に転換する制度(以下「無期転換ルール」という)があります。2018年4月1日には改正労働契約法の施行から5年が経過するため、本格的に無期転換の発生が見込まれています。これは、いわゆる「2018年問題」として新聞報道でも取り上げられているところです。
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2.無期転換の申し込み
 無期転換ルールの対象となるのは、アルバイト、パートタイマー、契約社員などの名称に関わらず、労働契約に契約期間の定めがある労働者です。これらの労働者が、同一の使用者の下で通算5年を超えて契約が更新された場合、労働者に「無期転換を申し込む権利」が発生します。たとえば契約期間が1年の場合には5回目の更新後の1年間、契約期間が3年の場合には1回目の更新後の3年間、無期転換申込権が発生します。
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3.転換
 労働者から無期転換の申し込みがあれば、その時点で期間の定めのない雇用契約が成立し、当該有期労働契約が終了する翌日から無期に転換されます。ただし、無期転換された場合の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は、就業規則等で別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一となります。

4.企業に求められる準備
 2018年問題を来年に控え、有期契約労働者を受け入れている企業には次の対応が求められています。
 �@ 社内の有期契約労働者の就労実態(人数、更新回数、勤続年数、担当業務等)を整理する
 �A 無期転換ルールの適用が見込まれるのであれば、無期転換した労働者をどのように活用するかを検討する
 �B �Aの活用方針を踏まえ、無期転換した労働者の具体的な労働条件を検討する(正社員として登用するのか、新たな社員区分(勤務地限定、時間限定、職務限定など)を設定するのか、あるいは雇用期間は無期にしつつその他の労働条件は従来通りにするのかなど、企業の実情に合わせて柔軟な制度設計が可能です)。

 そして、無期転換をスムーズに進める上で大切なのは、制度設計の段階から、労使のコミュニケーションを密にとることです。非正規労働者の8割以上が無期転換ルールを知らないという新聞報道もありますので、後々のトラブルを招かないためにも、労使双方の考え方をすり合わせておく必要があります。
 他方、無期転換ルールの適用を回避する方策として、通算5年が経過する前に雇止めを行うという対応もあり得るところです。しかし、厚生労働省のホームページでも「無期転換申込権が発生する前に雇止めをすることは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではありません」と明記されており、慎重な判断が必要です。
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5.まとめ
 会社側としては、長年コストをかけて育てた有期労働契約者を、無期転換の回避という理由だけで手放すことの不利益(技能の喪失、新規採用・教育コスト、不安定雇用による人離れなど)は小さくないため、無期転換を前提とした制度設計は重要な選択肢といえます。2018年問題は目前に迫っています。この機会に、無期転換ルールへの準備状況をご確認ください。

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