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その求人サイト、悪徳業者かも? 無料求人広告にまつわるトラブル

2024/08/06

(執筆者:弁護士 植村一晴)

【Q.】
電話で「無料で当社のサイトに求人広告を掲載しませんか」と勧誘されて、契約をしたのですが、後日、業者から、無料掲載期間が経過し、自動的に有料掲載に移行したとして、多額の広告料金を請求されました。よく確認すると、申込書の下に「14日の無料掲載期間が経過した後は有料掲載へ移行する」と小さく記載されていたのですが、電話では有料掲載の話はなく、記載内容に気がつきませんでした。
業者から請求された広告料金を支払わないといけないのでしょうか。

【A.】
1.はじめに
近年、ご相談のようなトラブルが増えており、厚生労働省所管のハローワークのサイト(※1)や、日本弁護士連合会と全国の弁護士会が提供するひまわりほっとダイヤルのサイト(※2)などでも注意喚起がされています。このような事例の特徴として、申込者が消費者ではなく事業者であるため、クーリング・オフができず、その他消費者契約法などの消費者保護のための法律も適用されないという点が挙げられます。
本コラムでは、悪徳業者の具体的手口を紹介するとともに、被害に遭わないための防止策や、申し込みをしてしまった後の対処法等についてご説明します。
※1 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/news/invitation_caution.html
※2 https://www.nichibenren.or.jp/ja/sme/lp202212.html

2.悪徳業者の具体的手口
悪徳業者の手口と言っても様々で、例えば、①無料掲載から有料掲載へ移行することが説明されないケース、②有料掲載への移行前に連絡をするので、そのとき解約をすれば有料にはならないと説明しておいて、実際には連絡がされないケース、③有料掲載への移行前に解約用の書面を送るので、それで解約をすれば有料にはならないと説明しておいて、実際には解約用の書面が送られない(または、送られていたとしても、それが解約用の書面とは気づけない体裁・内容のものである)ケースなどがあります。
なお、③のケースでは、「解約用の書面が送られてきていない」と伝えると、解約用の書面は特定記録郵便(日本郵便株式会社のホームページにおいて追跡番号を入力することで配達状況が確認できるもの)で送付したとして、配達状況に関する証拠を示してくることがあります。しかし、特定記録郵便は、送付された書面の内容を証明するものではなく、必ずしも解約用の書面が送られていたとは限りませんので、悪徳業者の主張を鵜吞みにしないよう注意する必要があります。

3.被害に遭わないための防止策
無料求人サイトへの掲載を勧誘されて、それが聞いたことのない名前の業者からだった場合、まずは疑ってかかることが重要です。その上での悪徳業者の見分け方ですが、例えば、「求人」や「求人サイト」といったキーワードでインターネット検索をして、検索結果の数ページ以内に表示されないような求人サイトであった場合、実体のないサイトである可能性があり、サイト運営者が悪徳業者であることが疑われます。そのほか、業者名や求人サイト名を「詐欺」「評判」といったキーワードとともにインターネット検索し、悪徳業者であることを疑わせる検索結果が出てこないかを確認する方法なども考えられます。

4.申し込みをしてしまった後の対処法
(1)無料掲載期間中の場合
前述の検索結果等により、有料掲載への移行前に悪徳業者であることが疑われた場合は、ただちに解約をして広告料金を請求されないようにすることが賢明です。通知の方法としては、後に解約の有無が争われるのを避けるため、通知内容や差出日を証拠として残すことができる内容証明郵便によることが望ましいです。
(2)広告料金の請求を受けた後の場合
ア.考えられる法的主張
業者からの広告料金の請求に対しては、㋐錯誤に基づく契約の取り消し(民法95条)、㋑詐欺に基づく契約の取り消し(民法96条)、㋒公序良俗違反による契約無効(民法90条)等の法的主張をすることが考えられます。これらの主張が認められるかは、事案の具体的な内容次第ですが、同種事例の裁判例において、詐欺に基づく契約取り消しを認めたものや(那覇簡裁令和3年10月21日判決、津簡裁令和5年11月7日判決)、公序良俗違反による契約無効を認めたもの(東京地裁令和元年9月9日判決、前記津簡裁判決)などがあります。
イ.具体的な対処法 
業者から広告料金の請求があった場合、上記㋐~㋒等を理由に支払いには応じない旨を通知することが考えられます。この場合も、内容証明郵便により通知するのが望ましいです。請求を放置していると、契約が自動更新されて、請求額が増加しかねませんし、それに伴い、訴訟等をしてくるリスクが高まることも懸念されますので、支払いに応じない意思を書面で明確にしておくことが肝要です。
業者が、訴訟等の法的手続きをとってきた場合も、基本的には、上記㋐~㋒等を主張して支払いを拒否することになると思われます。なお、訴訟等への対応をせずに放置していると、業者の請求を認める判決が出ることになるため、注意が必要です。

5.おわりに
前述の4で述べたような対処には専門的な知見が必要となりますし、特に内容証明郵便については、専門家が代理人名義で送付したほうが効果的な場合もあるものと思われます。実際、弁護士名義で内容証明郵便を出した場合、業者からの請求が止むことが多い傾向もあります。また、業者によっては、支払いを断ってもしつこく連絡をしてきたり、語気を荒らげてきたりするということもあるようなので、自社で対応するのが難しい場合には、専門家へ相談することをご検討ください。

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