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その下請代金の減額は、下請法違反ではありませんか?

2019/05/27

(執筆者:弁護士 福田泰親)
【Q.】
 当社は、コスト構造の見直しの一環として、下請先へ支払う代金について2%の値下げを行うこととしました。下請業者との協議の結果、値下げが了承され、また、改定後の価格を先月の発注分に遡って適用することで合意しました。
下請法では、下請代金の減額が禁止されていると聞きましたが、当社は下請業者との協議を経て減額を合意し、また契約書も作成していますので、下請法には抵触しないという理解でよいでしょうか。
【A.】

1.はじめに
 平成29年度に行われた公正取引委員会による下請法違反行為に対する勧告件数は合計9件で、その対象となった違反行為類型はいずれも「下請代金の減額」です。また、指導件数(実体規定違反)は合計5778件で、その10.6%(611件、第3位)がやはり「下請代金の減額」です。
 このように、「下請代金の減額」は、下請法違反行為のなかでも処分事例が多い類型の1つですので、慎重な検討が必要です。
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2.下請代金の減額の禁止とは
 親事業者が、「下請事業者の責めに帰すべき理由」がないのに、発注時の下請代金を減じて支払うことは、「下請代金の減額」に該当します(下請法第4条第1項第3号)。
 なお、下請法の適用となる取引は、資本金規模と取引の内容で定義されています。詳細は、公正取引委員会のHPをご参照ください。
○公正取引委員会 https://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukegaiyo/gaiyo.html
 下請法に抵触するか否かのポイントとなるのは、�@下請代金の減額、及び、�A下請事業者の責めに帰すべき理由です。以下で詳しくご説明します。

 �@下請代金の減額とは、発注時の下請代金を減額することをいいます。違反行為事例としては、消費税・地方消費税相当分を支払わなかった事例や、下請事業者との合意なく振込手数料を下請代金から値引きして支払った事例のほか、ご質問のように、下請事業者との間で単価の引き下げの合意が成立して単価改定を行い、旧単価で発注したものにまで新単価を遡及適用した事例などがあります。「歩引き」や「リベート」「協賛金」等の減額の名目、方法、金額を問わず、発注後いつの時点で減額しても下請法違反となります。

 �A下請事業者の責めに帰すべき理由があるとして下請代金を減額できる場合とは、次のア、イまたはウの場合に限定されます。
ア 納品物に瑕疵または納期遅れ等があるとして受領拒否または返品をした場合に、当該納品物の下請代金の額を減ずるとき
イ アの場合で受領拒否または返品せずに親事業者が手直しをした場合に、手直しに要した相当費用を減ずるとき
ウ 瑕疵の存在または納期遅れ等による商品価値の低下が明らかな場合に、客観的に相当と認められる額を減ずるとき
 下請法に違反した場合には、公正取引委員会から勧告や指導を受けるとともに、下請事業者から減額分の返還を求められる場合もあります。
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3.おわりに
 下請法では、減額について下請事業者と合意し、これを書面化していても、その内容が下請事業者の責任のない理由によるものであれば問題とされる点に注意が必要です。ご質問の事例では、新単価をすでに発注済みのものに遡って適用することについて、下請事業者と合意してはいるものの、下請事業者に責任のない理由による減額にあたりますので、下請法違反になります。
 この機会に、取引先との契約において、発注時に定めた下請代金を支払っているか、あるいは支払われているかをご確認ください。

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