(執筆者:弁護士 竹田千穂)
【Q.】
_「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)」が一部改正され、民間企業が公共施設等の運営事業に参入しやすくなると聞きました。改正の概要等を教えてください。
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【A.】
_1.PFI方式及びPFI法改正の経緯
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PFI(Private Finance Initiative)方式とは、従来、公共部門が費用を負担して直接提供していた公共サービスを、民間部門の資金及び経営能力等を活用して、公共部門と民間部門が協働して提供する手法です。
我が国では、平成11年7月にPFI法が制定され、同法に準拠したPFI事業を行う民間事業者には一定の法制上・税制上(固定資産税、不動産取得税、都市計画税等)の特例措置が講じられることなどから、教育文化関係(学校、美術館等)や健康・環境関係(病院、斎場等)を中心に利用されてきました。
もっとも旧法下では、民間事業者の創意工夫の余地の大きい「独立採算型」(民間事業者が整備した施設等に利用者が料金等を支払うことで事業コストを賄う方式)が採用された事例は少なく、多くの案件が「サービス購入型」(民間事業者が整備した施設等に公共部門が対価を支払うことで事業コストを賄う方式)を採用していました。
そこで、国などの財政状況が厳しい中、民間の資金や創意工夫を最大限活用できるよう制度を整え、民間事業者の企業価値が向上する蓋然性が高い「独立採算型」の普及促進を目指す必要があるとの観点から、法改正が行われました。改正法は平成23年5月24日に衆議院本会議で可決され、成立しています。
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2.改正の概要について
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�@ 対象施設の拡大
改正により、対象施設が、従来のインフラ(道路、空港等)、庁舎、病院等のみならず、公的賃貸住宅、船舶・航空機・人工衛星等まで拡大され、民間事業者は、従来よりも幅広い分野への参入が可能になります。
�A 民間事業者による提案制度の導入
従来、PFI事業は、主に公共部門の主導により計画されていましたが、改正後は、民間事業者がPFI事業を計画して行政に提案し、提案を受けた行政は、当該提案についての検討結果を遅滞なく民間事業者に通知しなければならなくなりました。
これにより民間事業者は、価値のある事業領域を特定し、採算の見込める具体的なプロジェクトを行政に提案できるようになります。
�B コンセッション方式の導入
これまで上下水道事業等、いわゆる公物管理法が規制する公共施設を民間事業者が管理・運営することはできませんでしたが、改正法では、上下水道事業・鉄道・港湾施設・浄化槽などの14事業につき、コンセッション方式が導入されました。
コンセッション方式とは、公共施設等の所有権は公共部門が保持したまま、民間事業者が事業運営権を付与される方式で、民間事業者は、サービス内容や施設の利用料金等を自ら決定できることになります。
この方式の導入により、利用者のニーズを反映した柔軟で質の高いサービスの提供が可能になるとともに、民間事業者は、運営権に抵当権を設定することで円滑な資金調達が可能になります。また、初年度の運営権取得にかかる費用を減価償却制度により事業期間を通して損金算入できるため、法人税の減税になるだけでなく、所有権の取得を前提としないため、民間事業者は固定資産税等を負担しなくてよいなどの利点もあります。
�C 民間事業者への公務員の派遣等への配慮
改正法では、民間事業者への公務員の派遣等について配慮するよう求めており、これにより、公務員が蓄積してきたノウハウを民間事業者に伝達することができ、PFI事業の円滑な遂行が可能になります。
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3.最後に
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東日本大震災の復興等、公共施設整備の需要は高まっており、今後、PFI事業へ参入する民間事業者は増加が予想されます。しかし、参入する民間事業者には、事業性を見抜く力と参入後の運営力(創意工夫により、長期的に価値を創出し続ける力)が求められます。
※ PFI法の詳細は、内閣府HP(http://www8.cao.go.jp/pfi/index2.html)をご覧ください。
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_(以上)
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