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『計画停電時の労働時間の取り扱い』

2012/07/01

(執筆者:弁護士 神部美香)

【Q.】
6月22日に関西電力より「万が一の備えとしての計画停電の準備について」が公表されました。これによると、計画停電が実施される場合には、供給エリアを6グループに分割した上、各グループ1日につき2時間程度の停電を行うとのことですが、当社には自動車部品の製造工場があり、計画停電のために一旦工場の稼働を止めて、わずか数時間後に再稼働させるとなると、却って非効率です。そのため、計画停電が行われるときは終日休業としたいのですが、この場合、休業手当を支払う必要があるのでしょうか。_

【A.】
はじめに、労働者が労務提供しない(できない)場合については、大きく分けて、
�@給料を支払う必要があるか
�A給料を支払う必要がないとしても、休業手当の支払いが必要か
という2つの問題があります。本稿では、計画停電の際に問題となりうる�Aについて、以下にご紹介します。

休業手当については、労働基準法26条に、「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と規定されています。そして、同条にいう「休業」には、丸1日の休業のみならず、1日の所定労働時間の一部のみの休業も含まれます。
行政通達(平成23年3月15日基監発0315第1号、昭和26年10月11日基発696号)によれば、計画停電の時間帯に事業場に電力が供給されないことを理由とする休業は、原則として「使用者の責に帰すべき事由による休業」には該当しないとされています。したがって、停電時間帯のみを休業とした場合、休業手当を支払う義務はありません。
これに対し、計画停電の時間帯以外の時間帯の休業は、原則として「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当するとされています。例えば、計画停電を考慮し、その時間を含めた「午前中の休業」や「早めの早退」等の対応をした場合、原則として、計画停電の時間帯以外の時間については、休業手当の支払いが必要になります。
ただし、他の手段の可能性や使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときには、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」には該当しないとされています(前記通達)。
具体的に、計画停電の結果、工場・物流等に大きな乱れが生じ、製品・原材料納入が欠品したため、店舗等での終日休業等を余儀なくされるような場合には、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて、休業手当の支払い義務は発生しないものと考えられます。これに対し、計画停電の影響を受けない企業が、売上の見通しが立たないなどの曖昧な理由で休業するような場合には、「使用者の責めに帰すべき休業」に該当することになります。

ご質問のケースでは、計画停電の時間帯だけを休業とするのは却って非効率であることから、計画停電の時間帯以外の時間帯をも休業とすることについて一定の経営上の理由はあると思われます。しかし、その時間帯に従事可能な事務作業等があるような場合には、計画停電の時間帯以外の時間帯の休業について、休業手当の支払いが必要になるものと考えられます。
上記の通り、計画停電の時間帯以外の時間帯の休業については、注意が必要であり、業務内容や就労形態によっても休業手当の支払い要否の判断は異なり得ますので、詳しくは、所轄の労働基準監督署にご相談されるなど、慎重な対応が望まれます。_

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