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『派遣切りと2009年問題』

2009/03/01

(執筆者:弁護士 荻野伸一)
【Q.】派遣切りは違法ですか?
近時、派遣契約の解除が「派遣切り」として社会問題となっていますが、派遣先が「派遣切り」を行うことは違法なのでしょうか。
また、「2009年問題」という言葉を耳にしますが、どのような問題なのでしょうか。派遣先としての対処法を教えてください。
【A.】
1.いわゆる「派遣切り」について
派遣をめぐる契約関係には、労働者、派遣元、派遣労働者受入企業(以下、派遣先)の三者が関与しています。派遣元が、労働者と雇用契約を結び、派遣先と派遣契約を結ぶことで、労働者を派遣先に派遣します。ここで契約関係にあるのは、派遣元と労働者、派遣元と派遣先であって、労働者と派遣先は契約関係にはありません。したがって、派遣先が派遣契約を解除(派遣切り)しても、派遣先と労働者との間で、通常の解雇に伴う問題は生じません。
しかし派遣先が、労働者の国籍、信条、性別、社会的身分等を理由として派遣契約を解除することは禁止されています(「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律<労働者派遣法>」26条)。
また、派遣先の事情で、派遣期間満了前に派遣契約を解除する場合は、以下のような措置を講ずる必要があります(「平成11年労働省告示第138号<派遣先指針>」第2の6 http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/haken/16.html)。
�@派遣元に対して相当の猶予期間をもって解除の申入れを行い、その合意を得ること
�A派遣先の関連会社での就業をあっせんする等して、労働者の新たな就業機会の確保を図ること。これができないときは、解除を行おうとする日の少なくとも30日前に派遣元に対してその旨の予告を行うこと
�B予告を行わない場合は、少なくとも30日分以上の賃金に相当する額について損害賠償を行うこと
派遣先としては、派遣契約の解除がやむを得ないかを検討し、仮に解除する場合には、このような措置を講ずる必要があります。正当な理由のない解除や、措置を講じない解除は、違法となり得ます。
2.いわゆる「2009年問題」について
「2009年問題」とは、製造業における多くの派遣契約が2009年2月28日以降、順次終了することに関する問題です。
製造業のように、派遣期間に制限がある業務(従来から派遣が認められていた26業務以外の業務)については、派遣先が一定期間経過後も派遣使用を継続することが禁止されています(<労働者派遣法>40条の2)。
派遣先がその期間経過後も派遣使用を行おうとする場合は、雇用契約の申込義務が生じ得るため(同法40条の4)、派遣先としては派遣期間満了を機に、�@派遣使用を止める、�A労働者を直接雇用する、�B派遣使用によりまかなっていた仕事を請負として外部化する、という対応策を採る必要があります。
その場合に留意すべき事項として、�Aに関して、派遣先が一定期間(※)のみ労働者を直接雇用した後に、派遣元がその労働者を改めて雇い入れ、再度、派遣労働者として派遣先に派遣すると事前に合意するのは違法となること、このような場合には、3ヶ月を超えても適正なクーリング期間とは認められないことがあります(この場合、雇用申込義務が生ずる可能性もあります)。
※“クーリング期間”とよばれる3ヶ月以上の期間。この期間をあければ、再度、派遣使用が可能とされる(<派遣先指針>第2の14参照)
また、�Bに関して、契約の形式が請負でありながら発注者が直接請負労働者を指揮命令するなどの“偽装請負”とならないよう留意すること等があります(厚生労働省通達「いわゆる『2009年問題』への対応について」http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/09/dl/h0926-6c.pdf)。
派遣先としては、以上のような点に留意して、いずれの対応を採るのかについて、慎重に検討する必要があるでしょう。
(以上)

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