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『死亡認定迅速化と相続放棄の期間延長』

2011/10/11

(執筆者:弁護士 神部美香)

【Q.】
このたびの震災に伴い、相続放棄等の期間が延長されたと聞きましたが、どのような内容なのでしょうか。

【A.】
東日本大震災を契機に、「東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をすべき期間に係る民法の特例に関する法律」(以下「特例法」)が成立し、平成23年6月21日に公布、施行されました。今回は、特例法と併せて同月に発表された、行方不明者の死亡認定に関する手続迅速化のための新たな運用方針について、概要をご紹介いたします。

1.死亡の認定に関する新たな運用方針について

民法の基本原則によれば、「人」は死亡によって権利主体としての地位を失い、相続開始や身分関係の終了をもたらします。一方、死亡が明らかでない場合には、単なる「不在者」(民法25条)として扱われるに過ぎず、相続が開始しないために、財産管理に問題を生じたり、相続の順序に影響したりする可能性があります。このような状況に対応するための制度が、「認定死亡」(戸籍法89条)や「失踪宣告」(民法30条)です。

手続上、死亡届には死亡診断書または死体検案書を添付するのが原則です。しかし、震災等の事変によって行方不明となり、遺体の確認ができない場合に、その事変の取り調べをした官公署がその者の死亡を認定し、死亡地の市町村長にその旨を報告するという制度が「認定死亡」です。もっとも、この制度は厳格な要件のもとに運用されており、かつ、官公署の調査や報告を待たなければならないため、必ずしも有用でない場合があります。また、「失踪宣告」は家庭裁判所への申立を要するとともに、1年間の期間の経過が必要です。

今回の新たな運用は、東日本大震災における行方不明者について、遺産相続や保険金の受け取りの円滑化を目的として、死亡届に申出人の申述書等が添付され、これら書面によって死亡が認定できる場合に、死亡届を受理することができることとしたものです。
※詳しくは、http://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00026.htmlをご参照ください。

2.特例法について

遺族に対する手当てについては、既に遺族年金や労災保険に基づく遺族補償給付につき、特例が設けられていますが、今般、特例法により、新たに相続放棄等の熟慮期間が延長されることとなりました。

相続放棄や限定承認は、原則として相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所に対して申述しなければならないとされており(民法915条、924条、938条)、3ヶ月の熟慮期間内に限定承認または相続放棄をしなかった場合には、単純承認したものとみなされます(民法921条2号)。

この点につき特例法は、東日本大震災の被災者を対象に、平成22年12月11日以降に自己のために相続の開始があったことを知った相続人について、相続の承認または放棄をすべき期間を平成23年11月30日まで延長することとしました。この取り扱いは、相続人が被災者である場合には、被災生活による生活混乱のため、3ヶ月の熟慮期間中に相続放棄等の申立をすることが困難であるとの配慮に基づくものです。そのため、適用対象は「東日本大震災の被災者」(平成23年3月11日において法の定める市区町村の区域に住所を有していた者)に該当する相続人に限定されており、以下のような場合には適用がありません。

相続人は被災者ではないが、
 ・被相続人が被災者である
 ・相続対象財産が被災地に存する など。
※詳細は、http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00092.htmlにてご確認ください。

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