(執筆者:弁護士 荻野伸一)
【Q.】
「省エネ法」が改正され、最近、一定の事業者には新たな対応が必要になったと聞きました。この改正によって、どのような影響があるのでしょうか。
【A.】
「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)が、平成20年5月に改正されました。このうち、工場・事業場単位のエネルギー管理から事業者(企業)単位のエネルギー管理への変更に関する改正部分が、本年4月1日に施行されています。
省エネ法では従来から、工場・輸送・建築物・機械器具の4分野において、省エネのための対策を定めています。このうち工場の分野では、原油換算で年間1,500kl以上のエネルギーを使用する工場が、エネルギー使用量に応じて「第一種エネルギー管理指定工場」または「第二種エネルギー管理指定工場」に指定され、工場設置者は工場ごとにエネルギー管理員等の選任や中長期計画書及び定期報告書の提出を義務づけられていました(改正前の第7条及び第17条)。
本改正ではこれに加え、ある工場等設置者が設置する全ての工場等におけるエネルギーの使用量が年間1,500kl以上である場合に、その者を「特定事業者」に指定し(第7条)、�@�Aを義務づけることとされました(工場等単位の規制から企業単位の規制へ)。
�@エネルギー管理体制の構築:
エネルギー管理統括者(企業の事業経営に発言権をもつ役員クラスの者など)及びエネルギー管理企画推進者(エネルギー管理講習修了者またはエネルギー管理士である者)の選任(第7条の2及び第7条の3)
�A中長期計画の作成:
中長期計画書の提出(第14条)、及び、定期報告書の提出(第15条)
これにより、例えば、次のような変更が発生します。
◆事例1:次の工場等を有する事業者(甲)
・A工場 —年間エネルギー使用量が3,500kl
・B事業場—年間エネルギー使用量が1,700kl
・C営業所—年間エネルギー使用量が100kl
○改正前:
A工場 —第一種エネルギー管理指定工場
B事業場—第二種エネルギー管理指定工場
指定されたそれぞれの工場についてエネルギー管理員等を選任し、報告書を提出
○改正後:
甲は特定事業者に指定され、上記とは別にエネルギー管理統括者等を選任し、C営業所を含む甲全体についての報告書を提出
◆事例2:次の工場等を有する事業者(乙)
・D工場—年間エネルギー使用量が1,200kl
・E工場—年間エネルギー使用量が800kl
○改正前:
規制の対象外
○改正後:
乙は特定事業者に指定され、エネルギー管理統括者等を選任し、報告書を提出
また、コンビニエンスストア等のフランチャイズチェーン事業を行っている事業者も、一定の要件を充たす場合には、その本部が特定連鎖化事業者に指定され、加盟店を含む事業全体のエネルギー使用量が年間1,500kl以上の場合には、同様の規制を受けることとなります(第19条以下)。
したがって、平成21年度における当該企業全体のエネルギー使用量が1,500kl以上であった事業者は、本年7月末日までに(平成23年度以降は5月末までに)、本社の所在地を管轄する経済産業局へ「エネルギー使用状況届出書」を提出しなければなりません。
また、中長期計画書及び定期報告書の提出期限は本年11月末日(平成23年度以降は7月末日)、エネルギー管理統括者等の選解任届は選解任があった日後最初の7月末日となっていますので、それぞれの期限までに当該の書面を提出する必要があります。
これに関して、以下の場合には罰則(100万円以下の罰金等)がありますので(95条、96条)、遺漏のないようご対応ください。
�@届出書・計画書・報告書等を提出しない
�A虚偽の届出
�Bエネルギー管理統括者等を選任しない
�Cエネルギーの使用の合理化への取り組みが著しく不十分であるとして国から指示・公表・命令が行われ、その命令に違反した
(以上)