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『従業員が交通事故を起こした際の会社の責任』

2012/06/11

(執筆者:弁護士 内芝良輔)

【Q.】
弊社の営業担当従業員が、勤務時間外に弊社の営業用車両を私用で運転し、人身事故を起こしてしまいました。この事故について、弊社が賠償責任を負うようなことがあるのでしょうか。_

【A.】
1.はじめに
民法第715条では、使用者は、被用者がその事業の執行について第三者に与えた損害を賠償する責任を負うとされており、これがいわゆる「使用者責任」です(ただし、使用者が被用者の選任・監督に相当の注意をしていた場合には責任を負いません)。
また、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」)第3条でも、自己のために自動車を運行の用に供する者は、運行により生じた損害の賠償責任を負うとされており、これがいわゆる「運行供用者責任」です(ただし、一定の場合には免責されます)。
「運行供用者」とは、具体的には、自身が所有する車を運転する者のほか、車を貸した友人が事故を起こした場合の所有者、運転手が事故を起こした場合のバス・タクシー会社等を指します。
このような規定からすれば、従業員が会社の営業活動中に、過失により事故を起こしてしまったような場合には、使用者が責任を負うことはやむをえません。しかし、今回のご相談のように、従業員が勤務時間外に私用で会社の営業用車両を運転していた場合でも、会社が責任を負うことになるのでしょうか。

2.裁判所における判断の状況
裁判所において、使用者責任を負う場合は非常に広く理解されており、「必ずしも被用者がその担当する業務を適正に執行する場合だけを指すのではなく、広く被用者の行為の外形を捉えて客観的に観察したとき、使用者の事業の態様、規模等からしてそれが被用者の職務行為の範囲内に属するものと認められる場合で足りる」とされています(最高裁昭和39年2月4日判決)。簡単に言えば、実際に業務をしていた場合だけではなく、外形的に業務をしているように見える場合でも責任を負うことになるのです。
今回のご相談についても、外形的に見れば、「御社の従業員が御社の車両を運転して事故を起こした」ということになるため、「事業の執行について」に該当し、使用者責任が認められる可能性が高いと思われます。
また、社用車ではなくマイカーで通勤中の従業員が起こした事故について会社の使用者責任を認めた事例(福岡地裁飯塚支部平成10年8月5日判決)も存在しています。
そして、運行供用者責任についても、使用者責任と同じ基調の下に判断されているとの分析もあり、使用者責任と同等あるいはそれ以上に広く認められています。

3.使用者側が注意すべき事項
このように、裁判所は、使用者責任及び運行供用者責任について、広い範囲でこれを認める一方で、使用者や運行供用者側からの免責の主張を採用することについては、消極的です。
使用者側としては、このような現状を踏まえて、社用車が業務以外で使用されないように適切に管理(鍵を従業員に預けず通常は管理職が保管する、社用車の使用に管理職の許可を必要とする等)するとともに、通勤や業務へのマイカーの使用を禁止するなど、従業員の業務外の行為について使用者責任及び運行供用者責任を問われることをできる限り防ぐ対策を講じることが重要です。また、自動車を使用する従業員への研修や健康管理に努めるとともに、業務中の事故に備えて、社用車に対して十分な保険をかけておくこと(対人対物無制限など)も重要でしょう。_

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