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『外国贈収賄規制について』

2012/02/20

(執筆者:弁護士 松原浩晃)

【Q.】
当社では、今後、積極的なアジア進出を計画しております。しかし、国際的に贈収賄規制が厳格化の傾向にあるという話を耳にしました。もちろん、進出先現地の贈収賄規制をよく調査するよう気を付けるつもりですが、そのほかに気を付けることはありますか。_

【A.】
1.はじめに
進出先現地の贈収賄規制に抵触しないよう気を付けるだけでは、実は不十分です。と言うのも、例えば、御社がアジアの某国で事業を展開するために雇ったコンサルタントが、某国の政府関係者や某国の民間企業に経済的便宜を与えたという場合、その行為について他国の贈収賄規制が適用されるということがありうるからです。平成23年7月1日に施行された英国の『贈収賄禁止法』はこういった行為を問題にしますし、同法に限らず、世界的に外国公務員に対する贈収賄規制が厳格化の傾向にあり、これから海外展開を目指す会社にとっては細心の注意を払う必要がある問題と言えます。どういうことか、詳しく見ていきましょう。

2.各国の外国公務員に対する贈収賄規制
もともとは、平成9年に経済協力開発機構(OECD)において、『国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約』が策定されたのが始まりです。同機構の公表データによれば、平成22年3月現在の条約締結国は38カ国とされています。日本でもこれを受け、平成10年に『不正競争防止法』が改正され、外国公務員に対する贈賄が処罰対象とされました。
最も有名なのが米国の『海外腐敗行為防止法』(FCPA)です。同法は、米国企業、米国で上場している外国企業のみならず、米国内で禁止行為を一部でも行った者も処罰対象としており、これらの者(役員や従業員だけでなく代理人等も含む)による外国公務員への贈賄を禁止しています。捜査協力や再発防止への取り組みにより罰金や制裁金が軽減されますが、近年では、数百億円規模の罰金や制裁金が科されることもあります。

また英国では、平成23年7月1日に『贈収賄禁止法』が施行されました。同法は、英国公務員、外国公務員、国内外民間人(商業賄賂)への贈賄のほか、収賄を処罰する包括的な法律で、英国企業だけでなく英国で事業の一部を行う企業も対象となるなど、処罰対象が広範に及ぶことが特徴です。また、米国のFCPAとは異なり、公務員による日常的行為を円滑に行ってもらうために支払う少額のチップ(facilitation payment)も処罰対象とされています。個人については10年以下の拘禁刑、個人、法人ともに上限なしの罰金が定められています。
中国は、もともと日本や英米と比較して贈収賄につき重い法定刑を用意している国で、例えば、非公務員に対する贈賄(商業賄賂)は3年以下の懲役または拘留(金額が巨額である場合には3年以上10年以下の懲役及び罰金)、公務員に対する贈賄は軽い場合で5年以下の懲役、最も重い場合は無期懲役(収賄の場合の最高刑は死刑)とされています。
そして、中国においても、平成23年5月に刑法が改正され、外国公務員に対する贈賄を処罰する規定が追加されました。不正な商業利益を得るための外国公務員に対する贈賄を処罰する内容で、中国国内で贈収賄に関与した者、国外での贈収賄に関与した中国国民・中国企業に適用され、3年以下の懲役または拘留(金額が高額の場合には3年以上10年以下の懲役及び罰金)とされています。

3.終わりに
摘発された場合の信用毀損や罰金額を考えると、これに対応した内部統制システムを構築していないと、会社法上、役員の善管注意義務違反となる可能性も否定できません。そのため、今後海外進出を目指す会社にとっては、接待等に対する支出を合理的なレベルに管理する社内手続き・基準(コンプライアンス・プログラム)を構築しておく必要があると考えられます。_

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