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『事業者にメリットも? 集団的消費者被害救済制度の導入』

2012/04/16

(執筆者:弁護士 荻野伸一)

【Q.】
現在、消費者被害の集団的な救済に関して、新たな訴訟制度の導入が検討されているそうですが、どのような制度なのでしょうか。詳細を教えてください。_

【A.】
これまで、消費者被害にあっても、訴訟を起こすには負担が大きく、泣き寝入りをする人がほとんどでした。そこで現在、集団的消費者被害回復のための新たな訴訟制度の導入が検討されています。
導入が検討されている新たな訴訟制度は、以下の3つの請求の有無が問題となる事案を対象とするものです。
�@消費者契約が存在する場合の、消費者の事業者に対する不当利得返還請求
・・・いわゆる詐欺的商法など契約そのものが公序良俗違反により無効となる場合など
�A履行請求
・・・消費者が売主となる物品の売却契約において、不当な契約条項に基づき、事業者が売却代金の支払いを拒む場合など
�B損害賠償請求
・・・勧誘が違法である場合や、商品の品質が不良である場合など

ただし、金銭の支払を目的とするものに限られており、損害賠償請求については、契約の目的について生じた損害に限定され、かつ、人の生命・身体に生じた損害については除外されています。
その手続の内容は、「二段階型」と呼ばれるものです。
一段階目の手続では、特定適格消費者団体(消費者契約法に基づき内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体のうち、新たな認定要件を充たすもの)が訴えを提起し、被告事業者に責任があるか否か等、多数の消費者と事業者との間に共通する争点に関する審理がなされます。この一段階目の手続で、特定適格消費者団体が勝訴した場合(被告事業者に責任があるとされた場合)には、二段階目の手続へと移行することになります。
二段階目の手続では、個々の消費者が手続に加入し、各人が被った損害がいくらか等の個別の争点に関する審理がなされることになります。この二段階目の手続は、個々の消費者の被告事業者に対する請求の可否及び金額について、簡易・迅速に判断することを目的としているので、基本的には、書面による審理が予定されています。
新たな訴訟制度の大きな特徴の1つは、一段階目の手続の判決の効力が二段階目の手続に加入した消費者にも及ぶ点です。消費者としては、被告事業者に責任があることを見極めたうえで二段階目の手続に加入することができます。また、二段階目の手続でも、特定適格消費者団体が書面の取りまとめ等の対応をしてくれるため、消費者の負担は軽減されることになります。

このように、この制度は消費者にとってのメリットが大きいものですが、事業者にとってもメリットがないわけではありません。新たな制度が導入されれば、事業者としては、多数の消費者との間の紛争を効率的に解決することができるようになるからです。もっとも、一段階目の手続の判決の効力は二段階目の手続に加入した消費者にしか及ばないので、同種事案の全てを一回的に解決できるわけではありません。
ところで、集団的消費者被害回復制度に対しては、企業が過剰な負担を被ることになるのではないかという懸念も投げかけられています。しかしながら、新たな制度の対象が前述のとおり限定されていること、日本には懲罰的賠償制度がないこと、新たな訴訟制度がいわゆるオプト・アウト型のクラスアクション(個々の消費者の授権を要しない制度)ではないことからすると、この制度のもとで事業者が支払うべき損害賠償の金額が事業者の想定を大きく超えることは考えにくいように思われます。
※「集団的消費者被害回復に係る訴訟制度の骨子(概要)」の詳細は、消費者庁のHP(http://www.caa.go.jp/planning/pdf/111209_1.pdf)でご確認ください。_

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