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『中小企業金融円滑化法について』

2010/03/01

(執筆者:弁護士 坂本 智)
【Q.】金融円滑化法が成立したそうですが?
昨年末、中小企業金融円滑化法が成立したと聞きました。マスコミ報道では、同法は、「モラトリアム法案」などと呼ばれておりましたが、同法の内容を教えて下さい。
【A.】
1.はじめに
平成21年12月4日、「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(以下「本法」といいます)」が施行されました。
本法は、「モラトリアム法案」である旨の報道もなされておりましたが、最終的には、中小企業者又は住宅資金借入者から申込があった場合に、金融機関に、できる限り、貸付条件の変更等を行なうよう努める努力義務を課すという内容に落ち着きました(なお、本法は、平成23年3月31日に失効する時限立法です)。
2.本法の概要
(1) 目的
本法は、金融機関の業務の適切な運営の確保に配慮しつつ、中小企業者及び住宅資金借入者に対する金融の円滑化を図るための必要な措置を定めることにより、中小企業者の事業活動の円滑な遂行及びこれを通じた雇用の安定並びに住宅資金借入者の生活の安定を期し、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的としています。
(2) 中小企業者、住宅資金借入者の意義
本法が規定する「中小企業者」とは、原則として、資本金又は出資の総額が3億円以下の会社並びに従業員の数が300人以下の会社及び個人であって、一般事業(金融業など一定の政令で定める業種以外の業種)を行なうものをいいます(正確な定義は、金融庁のHP※でご確認下さい)。
また、「住宅資金借入者」とは、原則として、自ら居住するための持家の建設もしくは購入のための資金又は持家である住宅の改良のための資金の貸付を受けている者をいいます(自らの居住用でない投資目的のマンション等に関して貸付を受けている者は含まれません)。
(3) 金融機関の対応等
中小企業者で債務の弁済に支障を生じており又は生ずるおそれのあるものから、申込があった場合には、当該金融機関は、事業についての改善又は再生の可能性等を勘案しつつ、できる限り、�@当該貸付の条件の変更、�A旧債の借換え、�B当該中小企業者の株式の取得であって当該債務を消滅させるためにするもの、�Cその他債務の軽減に資する措置をとるよう努めるようにするものとされています。
また、住宅資金借入者で債務の弁済に支障を生じており又は生ずるおそれのある者から、申込があった場合には、当該金融機関は、財産及び収入の状況を勘案しつつ、できる限り、上記�@、�A、�Cの措置をとるよう努めるようにするものとされています。
そして、金融機関は、対象となる中小企業者や住宅資金借入者から債務の弁済に係る負担軽減の申込があった場合には、当該中小企業者等に対して貸付に係る債権を有する他の金融機関や政府関係金融機関等との緊密な連携をはかるように努めるものとされています。
その他、本法は金融機関が上記の措置を円滑にとることができるようにするために金融機関に体制の整備義務や申込に対する対応措置を行政庁に報告する義務を課しています。
3.おわりに
これまでも様々な中小企業等に対する金融円滑化のための施策が行なわれてきましたが、本法により、その実効性がより高まることが期待されています。もっとも、例えば、貸付条件の変更として返済期間の延長や一定期間の返済猶予がなされたときなどでは、最終的な総支払額が増加するケースもある旨の指摘もなされています。このような可能性を考慮することも肝要でしょう。
※金融庁のHP(http://www.fsa.go.jp/)に詳細が解説されていますので、ご参照下さい。
(以上)

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