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『中国進出の第一歩 〜 常駐代表機構の開設と注意点 〜』

2008/11/01

(執筆者:弁護士 西堀祐也)
【Q.】常駐代表機構を開設するには?
当社は工場用機械設備のメーカーです。顧客に在中国の日系企業があり、機械のメンテナンス等のサービスのため、新たに中国に拠点を設置しようと考えております。具体的には、駐在員事務所(常駐代表機構)の開設を考えておりますが、どのような点を注意すべきでしょうか。
【A.】
1.開設上の注意点
外国企業が中国に常駐代表機構の開設(中国法上の表現に倣って「設立」と呼ぶ場合もある)を申請する場合、原則として、関係当局から開設の認可証書を得た上で、首席代表が工商行政管理局で登記手続きをすることが必要です(常駐代表機構の審査認可及び管理に関する実施細則9条、14条)。
もっとも、製造業などの多くの業種については、認可証書の取得が省略され、登記申請のみでよいとされています。
申請に必要な書類としては、開設の目的・業務範囲等を記載した申請書のほか、御社の資本信用証明書、御社の登記簿謄本、代表への授権委任状、代表の履歴書・パスポートなどがあります(同細則12条)。開設までに要する期間は通常1か月程度ですが、余裕を持ってスケジュールを組んでおいたほうがよいでしょう。
2.事業活動上の注意点
(1)営業活動の禁止
常駐代表機構は、法的には日本法人の内部組織であり、企業を代表して業務連絡、製品の紹介、市場調査などの業務活動を行うことができる一方、直接営業に係わる活動は禁止されています(同細則4条)。禁止される営業活動とは、常駐代表機構が自らの名義で契約を締結したり、生産や販売などの活動を行うことです。
したがって、常駐代表機構が人員を顧客に派遣して機械設備のメンテナンス等のサービスを提供し、対価を受領する場合は営業活動とみなされ、当局から過料、財産の没収、業務停止などの処分が課せられる可能性があります(常駐代表機構登記管理規則15条)。
対策としては、御社が現地のメンテナンス業者等に業務を委託し、常駐代表機構は顧客と現地業者との間の連絡役に徹するというスキームなどが考えられます。
(2)直接雇用の禁止
また、常駐代表機構が、みずから労働者を雇用することは禁止されています(常駐代表機構の管理に関する暫定規定11条)。
したがって、御社が開設した常駐代表機構が必要な労働力を得るには、政府が指定する人材派遣業者等から労働者の派遣を受けるか、または御社で雇用した従業員を常駐代表機構に出張させたり、派遣するなどの方法で対応する必要があります。
3.最近の動向など
常駐代表機構の営業活動に対しては、これまで必ずしも当局による規制が徹底していなかったきらいがありましたが、現在、国務院法制弁公室において「常駐代表機構登記管理条例」の法案が審議中であり、常駐代表機構の営業活動に対する規制が強化されるとの情報もあります。御社が中国に常駐代表機構を開設する場合、営業活動とみなされる行為は一切行わないよう徹底することが必要です。
いずれにせよ、常駐代表機構での事業活動には活動範囲や労働力の面で限界がありますので、中国において本格的な事業展開をされる場合には、現地法人の設立を検討されたほうがよいと思われます。
(以上)

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