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『不祥事が起きたらどうなる?〜第三者委員会ガイドラインとは』

2011/02/28

(執筆者:弁護士 雑賀裕子)

【Q.】
企業の不祥事が発覚すると、「第三者委員会」が調査を行うというニュースをよく聞きます。この第三者委員会のガイドラインがあるそうですが、どのようなものでしょうか。

【A.】
_1.ガイドライン策定の背景

不祥事が発覚した企業等が、社会的信頼の回復のため、調査委員会を設置し事実関係等の調査を依頼するケースが増加しています。このような調査委員会には、�@企業等から独立した外部者のみで構成されるタイプ(「第三者委員会」)や、�A企業等の内部者と外部者が混在するタイプがあります。調査委員会の活動については、調査方法がまちまちである、調査結果が開示されない例があるといった批判や、�Aのタイプの委員会は企業からの独立性に欠けるといった批判が聞かれます。
そこで日本弁護士連合会(日弁連)では、「第三者委員会は、すべてのステークホルダーのために調査を実施し、その結果をステークホルダーに公表することで、最終的には企業等の信頼と持続可能性を回復することを目的とする」との基本原則を定めた「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」を策定しました(平成22年7月15日公表)。今回は、この主な内容をご紹介します。

2.ガイドラインの主な基本原則と指針

(1) 事実の調査、認定、評価について
<基本原則>
�@調査対象は、不祥事に関する事実関係のみならず、不祥事の経緯、動機、不祥事を生じさせた内部統制等上の問題点等にも及ぶ
�A事実評価・原因分析は、法的責任の観点に限定されず、自主規制機関の規則、企業の社会的責任(CSR)、企業倫理等の観点から行われる
<指針>
�@調査対象とする事実の範囲は、委員会の目的達成のために必要十分なものとする
�A不祥事の実態を明らかにするため、法律上の証明による厳格な事実認定のみならず、疑いの程度を明示した灰色認定等を行うことができる
�B法的評価のみにとらわれることなく、ステークホルダーの視点に立って行う

(2) 説明責任についての指針
委員会は受任に際し、企業等との間で以下の事項につき定めるものとする。
�@企業等は、原則として遅滞なく不祥事に関係するステークホルダーに対し調査結果を開示する
�A企業等は、委員会設置に際して、調査結果等を開示するステークホルダーの範囲やその開示時期を開示する
�B企業等が調査結果を開示しない場合は、その理由を開示する

(3) 委員会の独立性・中立性について
<基本原則>
調査依頼の形式にかかわらず、企業等から独立した立場で、企業等のステークホルダーのために、中立・公正で客観的な調査を行う。
<指針>
�@経営陣に不利となる場合であっても、判明した事実等を調査報告書に記載する
�A調査報告書提出前に、企業等にその内容を開示しない
�B顧問弁護士など企業等と利害関係を有する者は委員に就任することができない

(4) 企業等の協力について
<基本原則>
企業等は調査に全面的に協力することとする(委員会の調査は法的強制力を持たず、企業等の協力が不可欠であるため)。
<指針>
�@企業等に対し、企業等が有する全情報等へのアクセスを保障することや、従業員に調査への優先的な協力を業務として命令すること等を求めるものとする
�A企業等から協力が得られない場合や調査妨害があった場合には、その状況を調査報告書に記載することができる

3.最後に

本ガイドラインは自主的なものであり法的拘束力はありませんが、今後、弁護士が第三者委員会の委員に選任された際、一つの拠り所とされ、その運営等に大きく影響するものと思われます。

※詳しくは、日弁連のHPをご覧ください。http://www.nichibenren.or.jp/

(以上)

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