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『パワーハラスメント予防のための取り組み』

2013/01/21

(執筆者:弁護士 神部美香)

【Q.】
使用者として、職場におけるパワーハラスメントの予防のために、どのような取り組みを検討すればよいでしょうか。_

【A.】
1.職場のパワーハラスメントに関する実態調査
平成24年12月、厚生労働省が国として初となるパワーハラスメント(以下「パワハラ」)に関する実態調査(企業調査・従業員調査)を実施し、報告書*が取りまとめられました。
*報告書http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002qx6t-att/2r9852000002qx99.pdf
報告書によれば、従業員調査において、4人に1人が過去3年以内にパワハラを受けたことがあると回答し、メディアでも大きく取り上げられました。また、企業調査においても、回答企業全体の80.8%が、パワハラの予防・解決を経営上の課題として重要と位置づけるなど、パワハラの予防・解決のための取り組みの重要性は高くなっています。

2.パワハラに該当しうる行為
パワハラには、法令や判例上統一された定義はありませんが、厚生労働省が行っている「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」(平成24.1.30厚生労働省)では、「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性(上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれる)を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」と定義されています。
パワハラは、業種や企業文化、当該言動が行われた状況により、指導や注意、適正な業務命令などとの線引きが難しいのですが、例えば、仕事に専念していない部下にやる気を起こさせるためであっても、「意欲がない、やる気がないなら会社を辞めるべき」などと、他の従業員全員の前で名指しで叱責するような場合には、パワハラの問題が生じる危険性があります。

3.使用者に生ずる責任
職場でパワハラが行われた場合、加害者である社員が不法行為責任(民法709条)を負う可能性があり、職務の遂行に際して行われた場合には、会社が使用者責任(民法715条)を負うこともあります。
また、これとは別に、使用者は労働者に対し、職場環境配慮義務を負うとされており、直接、不法行為責任(民法709条)ないし債務不履行責任(民法415条)を追及されることもあります。つまり、パワハラを行った社員そのものの責任とは別個に、会社が責任を問われる場合もあり、会社として適切な対応をとることが求められています。

4.パワハラの防止策
報告書によれば、調査対象企業では、パワハラの予防・解決のために、相談窓口の設置、就業規則など社内規定への盛り込み、会社方針(CSR宣言など)への規定、ポスターやリーフレット等の啓発資料の配布または掲示など、各種の取り組みが実践されています。その中でも特に、講演や研修会の実施やアンケート等による実態把握など、直接従業員に働きかける取り組みについて、その効果が高く評価されています。
もっとも、実際にパワハラを受けた者が相談窓口に相談する比率は極めて低いため、単に設置するだけでなく、相談窓口が活用され、解決につなげるアクションを促すような仕組みづくりを進めることも必要です。また、上位者がパワハラについて理解した上で、部下等とのコミュニケーションを行うことにより、パワハラが生じにくい環境を作り出すとともに、パワハラに関する相談がしやすい職場環境を作り出すことが重要です。
これらの取り組みが効果を発揮するまでには、相応の時間を要しますが、報告書によれば、パワハラの予防・解決のための取り組み実施期間が長ければ長いほど、効果を実感する比率が高くなる傾向が示されており、地道な取り組みが求められています。_

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