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『パワーハラスメントとは何か?』

2012/03/19

(執筆者:弁護士 猿木秀和)

【Q.】
近年、当社でもパワーハラスメント(パワハラ)に関する相談が増えていますが、実際にパワハラにあたるのか判断が難しいケースもあります。パワハラの概念・類型などについて教えてください。_

【A.】
1.はじめに
職場におけるいじめ・嫌がらせは、近年、社会問題として大きく取り上げられるようになり、これを意味する「パワハラ」という言葉も広く社会に浸透しました。現に、全国の労働局に寄せられた相談件数は2010年度において約3万9400件であり、10年間で約6倍に増えています。
ところが、具体的にどのような行為がパワハラにあたるかは、これまで必ずしも明確ではなく、その概念は曖昧としていました。特にパワハラとの申し出を受けるものの中には、業務の適正範囲内での指導との線引きが難しいものも多く、企業でも対処に迷うケースが少なくありません。
このような中で、今般、厚生労働省のワーキンググループがパワハラについての報告書(以下「報告書」)をまとめ、その内容について定義し、類型化を行いました。

2.パワーハラスメントとは
_報告書は、職場でのパワハラを「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義しました。
ここでは「職場内の優位性を背景に」と定義されており、上司と部下といった職務上の地位によるものだけでなく、先輩・後輩間、同僚間、部下から上司に対してなど人間関係や専門知識などの様々な優位性を背景としたものがあると指摘しています。
また、「業務の適正な範囲を超えて」とも定義しており、個人の受け取り方によっては、業務上必要な指示や注意・指導に不満を感じたりする場合でも、これらが業務上適正な範囲で行われている場合には、パワハラにあたらないと指摘しています。

3.パワーハラスメントの類型
報告書はパワハラの具体的類型として、以下のものを挙げています。
�@身体的な攻撃:暴行・傷害
�A精神的な攻撃:脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
�B人間関係からの切り離し:隔離・仲間外し・無視
�C過大な要求:業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
�D過小な要求:業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
�E個の侵害:私的なことに過度に立ち入ること

そして、�@は、業務の遂行に関係するものであっても、「業務の適正な範囲」に含まれるとすることはできないとし、�A�Bは、業務の遂行に必要な行為であるとは通常想定できないことから、原則として「業務の適正な範囲」を超えるものとしています。
�C�D�Eは、「業務上適正な範囲」を超えるかが判断の分かれ目になります。これについては、業種や企業文化の影響を受け、また、具体的な判断には、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによっても左右されると考えられるため、各企業・職場で認識をそろえ、その範囲を明確にする取り組みを行うことが望ましいと指摘しています。

4.まとめ
報告書は、このように定義・類型化した上で、対応策として、企業がパワハラをなくす方針を明確に打ち出すことを求めています。厚労省ではこれを受けて、専門家会議にて3月を目処にパワハラの予防・解決に向けた提言をまとめる予定です。また、報告書は上記類型がパワハラの全てを網羅したものではなく、これ以外の行為に問題がないわけではないとしていますが、パワハラの類型を具体的に指摘した点にこの報告書の意義はあります。
企業は、パワハラとの申し出を受けた場合、上記の定義・類型によって事案を整理し、その対応にあたることが有用です。_

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