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『ニュースでよく聞くMBOの利点と弊害について』

2011/03/25

(執筆者:弁護士 松原浩晃)

【Q.】
最近、よくMBOという言葉を耳にします。そもそもMBOとはどのようなものなのでしょうか。
そのメリットやデメリット、法的な問題点などがあれば教えてください。

【A.】
_1.はじめに

MBOとは、「Management Buyout」の略称で、経営陣が参加する企業買収のことを言います。多くの場合、経営陣は、対象会社の資産を担保に金融機関や投資ファンドから資金を調達して株式を買い取りますので、その場合にはLBO(Leveraged Buyout)の側面も有します。また、MBOは多くの場合、TOB(Take Over Bid)、すなわち、株式の公開買付けにより行われます。

少し前ではワールド、最近では幻冬舎などのMBOが成立し、今年になってからもワークスアプリケーションズなど、MBOを実施する会社が後を絶ちません。
以前は、親子関係の解消など組織再編のためにMBOが用いられることが多かったのですが、最近では、上場会社の株式非公開化のために用いられることが増えています。なお、現在の実務では、公開買付け後に完全子会社化されるのが一般的です(全部取得条項付種類株式を用いたスキームが主流)。
本稿でも、現在の実務を念頭に、非公開化を伴うMBOを前提に解説したいと思います。

2.MBOの利点

一般的に、MBOの利点として次のようなものが挙げられています。
�@意思決定の迅速化
株主構造が少数化・単純化され、また、上場維持に伴う開示規制を受けないので、経営戦略等の意思決定を迅速に行える
�A中長期的視点による経営戦略の実現
非公開化することで、短期的な利益を追求する株主(市場)の目に晒されず、中長期的視点による経営戦略を選択し易くなる
�B上場コストの削減
内部統制制度の導入などにより近時増加している上場コスト(上場維持に伴う監査費用やIR費用等)を削減できる

3.MBOの弊害

これに対し、MBOの弊害として次のようなものが挙げられています。
�@利益相反の問題
本来、企業価値の向上を通じて株主の利益を代表すべき取締役が、株主から対象会社の株式を取得することとなり、必然的に利益相反が生じる
�A経営に対する監視機能の低下
非公開化により、市場や株主からの経営に対する監視機能が低下するおそれがある
�B資金調達の選択肢の減少
市場からの資金調達が不可能となる

4.弊害防止の対策

平成19年9月に経済産業省から公表された「企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」では、利益相反というMBO特有の弊害を防止するために、次の3つが提案されています。
�@株主の適切な判断機会の確保
MBOに関する十分な説明・情報開示や、反対株主が株式買取請求権を行使できるスキームを採用することなどが求められる
�A意思決定過程における恣意性の排除
社外役員・第三者委員会の判断の尊重や、MBO価格に関し独立した第三者評価機関からの算定書取得などが求められる
�B価格の適正性を担保する客観的状況の確保
MBOに際しての公開買付期間を比較的長期間に設定するなどして、対抗的な買付けの機会を確保することなどが求められる

5.おわりに

MBOによる会社の非公開化には上記のような弊害もありますが、短期的利益への圧力がかかる市場から一旦退場し、中長期的視点からの経営戦略を進めるという点では有用です。また、会社によっては、そもそもの上場意義を再確認するいい機会かもしれません。
近時裁判例も蓄積されつつあるところですので、MBOを実施する際には、経産省の指針も踏まえながら、MBO特有の利益相反の解消措置を採ることが重要となりそうです。

(以上)

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