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『インターネット上での誹謗中傷等への対処』

2008/05/01

(執筆者:弁護士 荻野伸一)
1.はじめに
インターネットの普及に伴い、近年、インターネット掲示板等への書き込みによる誹謗中傷例が増えています。このような書き込みは、閲覧者に真実であるかのように受けとられ、企業の信用失墜等を招くことにもなりかねません。
このような事態に対する法的な対処方法としては、民事上は当該書き込みを行った者に対する損害賠償請求や当該書き込みの削除請求・差止請求等が考えられます。これらの請求には、書き込みを行った者の特定が必要ですが、インターネットにおける匿名性が障害となって、多くの場合、被害を受けた企業が書き込みを行った者を特定することは困難です。
2.プロバイダ責任制限法
上記のような状況を考慮し、書き込み等の被害者が法的救済を求める手段を確保しようとするものとして、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(以下「プロバイダ責任制限法」)があります。
同法3条は、インターネット掲示板等への書き込み等により特定人の権利が侵害された場合に、掲示板管理者やインターネットサービスプロバイダ等(以下あわせて「プロバイダ等」)が損害賠償責任を負う場合について明確化することで、プロバイダ等が、被害者から当該書き込み等を削除するよう要請された際に、任意に適切な対応を行うことを促しています。
また、同法4条1項は、被害者がプロバイダ等に対して、�@権利侵害が明確であること(1号)、�A開示を受ける正当な理由があること(2号)の要件を満たす場合には、書き込みを行った者(以下「発信者」)の情報開示を求めることができる旨を定めています。
3.発信者情報開示手続き
発信者情報開示請求手続きは、プロバイダ等に対して、その管理する特定電気通信設備(掲示板の名称やURL等)、掲載された情報、侵害された権利、権利が明らかに侵害されたとする理由、発信者情報の開示を受けるべき正当理由、開示を請求する発信者情報および証拠を記載した発信者情報開示請求書等を提出して行います。手続きの詳細については、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会「プロバイダ責任制限法 発信者情報開示関係ガイドライン」に定められています。
具体的には、まず、�@当該掲示板の管理者に対して、発信者情報の開示請求を行います(�@請求)。しかし、掲示板管理者は通常、発信者の経由プロバイダ等に関する情報しか保有していないため、�@請求では発信者の住所や氏名等、発信者を特定するために必要な情報を得られないことがよくあります。そのようなときには、その後、�A発信者の経由プロバイダに対しても、発信者情報の開示請求を請求することになります(�A請求)。
4.望ましい対処方法
発信者情報開示手続きの概要は以上のとおりですが、掲示板管理者が任意に開示請求に応じない等により、上記�@請求が長引いた場合、その間に経由プロバイダが発信者のアクセス情報を削除してしまい、�A請求を行っても発信者を特定できないことがあります。
また、インターネット掲示板等における書き込みは、掲載期間が長くなると被害が無限に拡大していく傾向があります。したがって、インターネット掲示板等への書き込みに対しては迅速に対応することが重要です。また、早期に開示を受けるために、発信者情報開示の仮処分命令申立等の法的措置が必要となる場合もあります。
(以上)

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