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改正に伴う民法の適用関係について

2020/07/02

(執筆者:弁護士 村田大樹)
【Q.】
 本年4月1日から、民法が大幅に改正されたと聞きました。当社の取引基本契約書には、次のような自動更新条項が定められています。

 第〇条(有効期間)
  本契約の有効期間は、〇年〇月〇日から〇年〇月〇日までとする。ただし、期間満了の3カ月前までに当事者のいずれからも終了の意思表示がないときは、本契約と同一条件でさらに1年間継続するものとし、以後も同様とする。
 今後、自動更新条項により契約が更新された場合、改正前の民法と改正後の民法のどちらが適用されるのでしょうか。また、民法改正に伴い、契約を自動更新させるのではなく、改めて契約を締結し直す必要があるのかについても教えてください。

【A.】
1.はじめに
 「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)」(以下「新法」)が、2017年5月26日に成立し、同年6月2日に公布されました。明治29年の民法制定以来、約120年ぶりに大改正された新法は、本年4月1日に施行されました。
 新法では、改正前の旧法時代に蓄積されてきた判例に基づく解釈内容が明文化されたほか、変動制法定利率の導入(404条)、消滅時効期間の統一化(166条)等、社会経済の変化に対応した改正がなされています。企業間で取り交わされる契約書においてたびたび登場する条項、例えば、瑕疵担保責任や解除に関する条項についても変更が加えられるなど、今後の契約書作成及び契約の更新に少なからず影響があるものと思われます。
 今回は、旧法時代に交わされた取引基本契約が今後、自動更新された場合の民法の適用関係についてご説明します。

2.自動更新された取引基本契約に適用される法律
 まず、旧法時代に締結された契約には、新法施行後も原則として旧法が適用されます。これは、契約当事者は旧法が適用されると考えて契約を締結したにもかかわらず新法が適用されると、契約当事者の期待に反することになるからです。反対に、新法施行後に契約が締結される場合や、当事者の合意により契約が更新される場合は、「新法適用に対する期待がある」といえるので、基本的には新法が適用されることになります。そして、契約が自動更新条項によって更新される場合も、自動更新に異議を述べなかったことはすなわち更新に合意したと評価されるため、合意によって更新された場合と同様に、新法が適用されると考えられています。したがって、ご質問にあるような自動更新条項により契約が更新された場合には、新法が適用されます。
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3.個別契約との関係
 新法施行日前に締結された取引基本契約が更新される前であっても、施行日以後に個別契約が締結された場合には、注意が必要です。この場合に、取引基本契約に新旧どちらの民法が適用されるのかについては、契約内容にもよるうえ、定まった見解があるわけでもありません。売買目的物や売買代金額が個別契約によって初めて具体化され特定されるような場合には、個別契約の締結時点を基準として考え、個別契約の内容を補充する限りにおいては取引基本契約にも新法が適用されるとする考えもあります。
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4.契約見直しの必要性
 新法が適用された場合、契約書の条項と新法との整合性が問題になる可能性があります。例えば、新法では契約不適合(瑕疵担保)責任においても代金減額請求が認められるようになりましたが、契約書に代金減額請求についての定めがない場合、新法の適用を排除するためにあえて代金減額請求の定めのない条項にしたのか、それとも、そういう趣旨ではないのかが明確ではありません。このように、これまでになかった内容の法の定めが設けられた場合に、その内容について定めがない契約書がどのような意味を持つのかについて争いが生じる可能性があります。
 もっとも、前述のとおり、今回の改正は、これまでの判例や通説が明文化されたにすぎない部分も多いうえ、契約の種類・内容にもよるので、必ずしも必要というわけではありませんが、紛争時、契約書の文言解釈に疑義が生じないよう、更新のタイミングで一度、見直してみることをお勧めします。
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5.最後に
 今回は、自動更新条項が入った取引基本契約における民法の適用関係を見てきましたが、これ以外にも、民法改正に伴い、契約書の内容に影響が生じる場面があります。今後の自動更新時期を見据えて、今一度、契約書内容をご確認いただくとともに、見直す点がないかなど、必要に応じて専門家へ相談することをご検討ください。

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