(執筆者:弁護士 竹村知己)
【Q.】
平成28年の改正消費者契約法が今年施行されたと聞きましたが、同改正により新設された過量契約の取消しについて、制度の概要を教えてください。
【A.】
◆はじめに
消費者契約法は、消費者と事業者の間に情報や交渉力の格差があることに鑑み、消費者の利益の保護を目的として、消費者と事業者の間で締結される契約(消費者契約)について民法の特則となるルールを定める法律です。
今般、平成28年に公布された改正法が平成29年6月3日から施行されましたが、とりわけ重要な改正点として、過量な内容の消費者契約の取消しを認める規定(改正法4条4項)の新設が挙げられます。
◆過量契約規制の概要
近年、高齢者の判断能力の低下等につけ込んで、不必要に大量の契約(過量契約)を締結させるという消費者被害が発生しています。その救済は、従来、公序良俗違反(民法90条)や不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)等の民法上の規定に委ねられていましたが、要件が抽象的である等、消費者にとって必ずしも明確でなかったため、改正法で新たに過量契約の取消権の規定が置かれることになりました。