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同一労働同一賃金にどう備えるべきか?

2017/05/31

(執筆者:弁護士 西堀祐也)

【Q.】
昨年末に、政府が同一労働同一賃金のガイドライン案を出したとの報道を見ました。当社はパートタイム労働者等を多数雇用していますが、どのように備えればよいでしょうか。

【A.】
1.はじめに
厚生労働省は、正規か非正規かという雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保し、同一労働同一賃金(不合理な待遇差の解消)の実現に向け、「同一労働同一賃金ガイドライン案」を策定し、平成28年12月20日に公表しました(※1)。
現行の労働契約法(20条)やパートタイム労働法(8条、9条)でも不合理な待遇差は禁止されていますが、本ガイドライン案は、具体例を挙げて、いかなる待遇差が不合理で、いかなる待遇差が不合理でないかを示しています。
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2.本ガイドライン案の概要
ア.基本給について
�@労働者の職業経験・能力に応じて基本給を支給する場合、非正規雇用労働者(※2)が蓄積している職業経験・能力に応じ、正規雇用労働者(※3)と同一またはその相違に応じた支給をしなければなりません。例えば、多くの職業経験を有することを理由として、正規雇用労働者に有期雇用労働者よりも多額の支給をしているが、これまでの職業経験が現在の業務に関連を持たない場合には問題となります。
また、�A労働者の業績・成果に応じて基本給を支給する場合、非正規雇用労働者が出している業績・成果に応じ、正規雇用労働者と同一またはその相違に応じた支給をしなければなりません。例えば、正規雇用労働者がパートタイム労働者と同様の仕事に従事しているものの、正規雇用労働者は生産効率や品質の目標値に対する責任を負っており、目標が未達の場合に処遇上のペナルティを課されている場合、それとのバランスに応じ、正規雇用労働者に高額の基本給を支給することは問題となりません。
その他、�B勤続年数に応じて基本給を支給する場合や、�C勤続による職業能力の向上に応じて昇給を行う場合には、それぞれ、勤続年数や職業能力の向上に応じ、正規雇用労働者と同一またはその相違に応じた支給や昇給をしなければなりません(※4)。
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イ.手当、福利厚生等について
�@賞与について、会社の業績等への貢献に応じて支給する場合、前述のアの�Aと基本的に同じように考えられます。
また、�A役職手当について、役職の内容、責任の範囲・程度に対して支給する場合、非正規雇用労働者が就いている役職・責任に応じ、正規雇用労働者と同一またはその相違に応じた支給をしなければなりません。例えば、正規雇用労働者と同一の役職名で役職の内容・責任も同一である役職に就くパートタイム労働者に時間比例の役職手当を支給することは許されますが、同じ立場にある有期雇用労働者に正規雇用労働者に比べて低額の役職手当を支給することは問題となります。
その他の手当(時間外労働手当、深夜・休日労働手当、通勤手当、地域手当等)、福利厚生(福利厚生施設、転勤者用社宅、慶弔休暇、病気休職等)、教育訓練、安全管理措置についても、非正規雇用労働者には、基本的に、支給要件に応じ正規雇用労働者と同一の支給や付与等をしなければなりません。
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3.おわりに
厚労省によれば、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差の問題について、法改正に向けた検討を行っていく予定です。そのため、法改正の動向を見つつ、雇用形態による待遇差が合理的かを検証し、不合理な部分は是正することが適切な対応となるでしょう。その際、本ガイドライン案は、未確定ながら、厚労省の現在の考え方を示すものとして、参考になると思います。
※1 厚労省HP:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html
※2本稿では、非正規雇用労働者のうち、派遣労働者を除く、有期雇用労働者及びパートタイム労働者を対象にします。
※3無期雇用フルタイム労働者をいいます。
※4正規雇用労働者と定年後の継続雇用の有期契約労働者の間の賃金差については、実際に両者の間に職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の違いがある場合は、その違いに応じた賃金差は許容されます。

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