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(セミナー情報)
Zoom無料セミナー(100名限定):渡邉雅之弁護士が2020年8月27日(木)午後6時より『2020年改正個人情報保護法を一挙解説!』と題するZoomセミナー(ウェビナー)を行います。
令和2年( 2020 年) 3月 10 日に閣議決定され国会に提出された「_個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案_」 が同年6月5日に国会で成立いたしました(同年6月12日に公布されました(令和2年法律第44号))。
「改正個人情報保護法Q&A(2020年8月21日全面改訂版)」を作成いたしましたのでご覧ください。
Q&A『デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方』
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本ニュースレターでは、令和元年(2019年)12月17日、公正取引委員会は、「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」[1](以下「本考え方」といいます。)について、Q&A形式で解説いたします。
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下記のPDFファイルもご参照ください。
Q&A『デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方』
公正取引委員会の関連ページは下記のとおりです。
(令和元年12月17日)「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」の公表について
【関連ニュースレター】
(全体取りまとめ版)
Q&A個人情報保護法改正の方向性(制度改正大綱を読み解く)
(ニュースレター形式)
個人情報保護法の改正の方向性(3年ごと見直しの制度改正大綱) 〜第1回「端末識別子等の取扱い」〜
_個人情報保護法改正の方向性(第2回:仮名化情報)
個人情報保護法改正の方向性(第3回:開示請求・利用停止請求等)
_個人情報保護法の改正の方向性(3年ごと見直しの制度改正大綱) 〜第4回「漏えい等報告及び本人通知の義務化」〜
_個人情報保護法改正の方向性(第5回:適正な利用義務の明確化)
個人情報保護法改正の方向性(第6回:オプトアウト制度の強化)
個人情報保護法改正の方向性(第7回:ペナルティの強化・課徴金制度の導入見送り)
個人情報保護法改正の方向性(第8回:公益目的による個人情報の取扱いに係る例外規定の運用の明確化)
個人情報保護法改正の方向性(第9回:域外適用と越境データ移転に関する改正の方向性)
(その他)
個人情報保護法ニュースNo.1:リクナビ事件と個人情報保護法の改正
個人情報保護法ニュースNo.2:個人情報保護法改正の方向性(第1回:端末識別子等の取扱い)
執筆者:渡邉雅之
* 本ニュースレターに関するご相談などがありましたら、下記にご連絡ください。
弁護士法人三宅法律事務所
弁護士渡邉雅之
TEL 03-5288-1021
FAX 03-5288-1025
Email m-watanabe@miyake.gr.jp
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Q1.本考え方の策定の経緯について教えてください。
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平成30年(2018年)6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」[2]において、プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備のために、本年中(2018年中)に基本原則を定め、これに沿った具体的措置を早急に進めるべきものと定められました。
これを踏まえ、経済産業省、公正取引委員会及び総務省は、競争政策、情報政策、消費者政策等、多様な知見を有する学識経験者等からなる「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」を設置し、調査・検討を進め、同年12月に「プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備の基本原則」[3]を策定しました。
同基本原則においては、「(4)デジタル・プラットフォーマーに関する公正かつ自由な競争の実現」として、「デジタル・プラットフォーマーが拡大し、独占化・寡占化を果たす傾向にあることに鑑みると、事後規制としての競争法の執行は重要性を持つため、デジタル市場の特性を踏まえた取組を進める必要がある」とされ、また、「サービスの対価として自らに関連するデータを提供する消費者との関係での優越的地位の濫用規制の適用等、デジタル市場における公正かつ自由な競争を確保するための独占禁止法の運用や関連する制度の在り方を検討する」こととされました。
「成長戦略フォローアップ」[4](令和元年6月閣議決定)においても、「現行の独占禁止法の優越的地位の濫用規制をデジタル・プラットフォーム企業による対消費者取引に適用する際の考え方の整理を2019年夏までに行い、執行可能な体制を整備する。」とされました。
これを受けて、公正取引委員会は、令和元年(2019年)8月29日に、「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)」に対する意見募集[5]をしました(同年9月30日意見募集締切)。
そして、令和元年(2019年)12月17日、公正取引委員会は、「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」を公表いたしました。
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〇検討の経緯
出所:公正取引委員会『「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント』
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Q2 本考え方の対象となる行為について教えてください。
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1.本考え方の対象となる行為
本考え方においては、「デジタル・プラットフォーム事業者�@が提供するデジタル・プラットフォームにおける消費者の個人情報等�Aの取得又は当該取得した個人情報等の利用�Bにおける行為」について、優越的地位の濫用に該当しないか検討されています。
上記の行為を対象とする理由は以下のとおりです(「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する中間論点整理」(平成30年12月))。
デジタル・プラットフォームは、ネットワーク効果、低廉な限界費用、規模の経済等の特性を通じて拡大し、独占化・寡占化が進みやすいとされていること。
デジタル・プラットフォーム事業者によるデータの集積・利活用が進展することにより、競争優位を維持・強化する循環が生じるとされていること。
デジタル・プラットフォーム事業者による消費者の個人情報等の取得・利用に対して懸念する声があること。
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2.デジタル・プラットフォーム
「デジタル・プラットフォーム」とは、情報通信技術やデータを活用して第三者にオンラインのサービスの「場」を提供し、そこに異なる複数の利用者層が存在する多面市場を形成し、いわゆる間接ネットワーク効果が働くという特徴を有するものをいいます。
第三者に場を提供することなく、自ら直接消費者にサービスを提供する場合は、本考え方の「デジタル・プラットフォーム」には含まれません。
「間接ネットワーク効果」とは、多面市場において、一方の市場におけるサービスにおいて利用者が増えれば増えるほど、他方の市場におけるサービスの効用が高まる効果をいいます。
これは、「デジタル・プラットフォーム」の定義として、欧州委員会のパブリック・コンサルテーションにおいて、「両面(又は多面)市場において活動する事業であって、インターネットを利用することにより、二又はそれ以上の別個かつ独立した利用者のグループ間における相互作用を可能とし、少なくともそのうちの一つのグループにとっての価値を生み出すことを目的とするもの」としているのを参考にしたものです。
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3.デジタル・プラットフォーム事業者
「デジタル・プラットフォーム事業者」とは、以下のサービスを提供する事業者であって、上記2の特徴を有するデジタル・プラットフォームを提供する事業者をいいます。
・オンライン・ショッピング・モール
・インターネット・オークション
・オンライン・フリーマーケット
・アプリケーション・マーケット
・検索サービス
・コンテンツ(映像、動画、音楽、電子書籍等)配信サービス
・予約サービス
・シェアリングエコノミー・プラットフォーム
・ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)
・動画共有サービス
・電子決済サービス 等
これは、EUのP2B規制において、「プラットフォーム事業」を、オンライン仲介サービスのうち、�@オンライン・プラット・フォームであり、�Aビジネス・ユーザーが消費者に商品又はサービスを提供し、ビジネス・ユーザーと消費者との間の取引を容易とするものであること、という2点を満たすものを対象としていることを参考にしたものです。
「デジタル・プラットフォーム事業者」に該当するか否かは当該特徴を踏まえ判断していくため、上記の例示のサービスに限られず、ケースバイケースで判断されます。
クラウドコンピューティング・サービスプロバイダー等企業向けソリューションのようなB2B取引は本考え方の対象ではありません。
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4.本考え方における「個人情報」「個人情報等」「個人データ」「消費者」
�@「個人情報」とは、個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)2条1項に規定する「個人情報」をいいます。
�A「個人情報等」とは、「個人情報」及び「個人情報以外の個人に関する情報」をいいます。例えば、ウェブサイトの閲覧情報、携帯端末の位置情報等は、一般には、それ単体では個人識別性を有しないため、個人情報保護法上の個人情報とは解されないとされています。ただし、このような情報であっても、他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができる場合は、個人情報となるとされています。
〇ウェブサイトの閲覧情報、携帯端末の位置情報等は、一般には、それ単体では個人識別性を有しないため、個人情報保護法上の個人情報とは解されないとされている。ただし、このような情報であっても、他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができる場合は、個人情報となるとされています。したがって、ウェブサイトの閲覧情報、携帯端末の位置情報など、一般に、それ単体では個人識別性を有しない情報のみの取扱いについても、本考え方の対象となります。
〇スマートフォン端末の機種情報(特定の個人が識別できない場合)が「個人情報以外の個人に関する情報」に該当する場合には、本考え方における「個人情報等」に該当します。
〇個人情報でない同一世帯の家族と紐付いた情報が「個人情報以外の個人に関する情報」に該当する場合には、本考え方における「個人情報等」に該当します。
�B「個人データ」とは、個人情報保護法2条6項に規定する「個人データ」をいいます。
�C「消費者」とは、個人をいい、事業として又は事業のためにデジタル・プラットフォーム事業者が提供するサービスを利用する個人を含みません。
デジタル・プラットフォームにおいて、個人情報等が不可避的に生み出される場合であっても、当該個人情報等を取得していることとなります。_
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Q3 本考え方の対象となる「優越的地位の濫用」規制について教えてください。
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1.独占禁止法上の「優越的地位の濫用」
独占禁止法2条9項5号(イ〜ハ)においては、優越的地位の濫用について以下のとおり規定されています。
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取引上の地位が相手方に優越している者が、取引の相手方に対して、正常な商慣習に照らして不当に、以下の行為をすること。
イ 継続して取引をする相手方に対して、取引の対象である商品又は役務以外の商品等を購入させること
ロ 継続的に取引をする相手方に対して、金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
ハ 取引の相手方からの受領拒否、返品、支払遅延、減額、取引の対価の一方的決定、やり直しの要請、その他取引の相手方に不利益となるように、取引条件の設定若しくは変更又は取引の実施
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優越的地位の濫用は、「�@優越的地位」+「�A正常な商慣習に照らして不当に」+「�B濫用行為」の3つの要素から判断されます。
出所:公正取引委員会『「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント』
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2.優越的地位の濫用規制についての基本的考え方
事業者がどのような取引条件で取引するかについては、基本的に、取引当事者間の自主的な判断に委ねられるものですが、事業者と消費者との取引においては、「消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差」(消費者契約1条)が存在しており、消費者は事業者との取引において取引条件が一方的に不利になりやすいものです。
自己の取引上の地位が取引の相手方である消費者に優越しているデジタル・プラットフォーム事業者が、取引の相手方である消費者に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、当該取引の相手方である消費者の自由かつ自主的な判断による取引を阻害する一方で、デジタル・プラットフォーム事業者はその競争者との関係において競争上有利となるおそれがあるものです。[6]
すなわち、消費者に対して、自己の取引上の地位が優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることにより削減した費用又は得た利益を、当該取引に係る事業又は他の事業に投入することにより、競争者との関係において、競争上有利になるおそれがあります。
このような行為は、公正な競争を阻害するおそれがあることから、不公正な取引方法の一つである優越的地位の濫用として、独占禁止法により規制されます。
どのような場合に公正な競争を阻害するおそれがあると認められるのかについては、問題となる不利益の程度、行為の広がり等を考慮して個別の事案ごとに判断することになります。
出所:公正取引委員会『「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント』
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公正取引委員会は、デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用として問題となり得るもののうち、Q4の2�@から�Bまでの場合であって、国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる事案について、優先的に審査を行います。
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3.「取引の相手方(取引する相手方)」の考え方
独占禁止法2条9項5号は、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」、「継続して取引する相手方」(同号イ及びロ)や「取引の相手方」(同号ハ)に対して、不利益を与える行為を優越的地位の濫用としており、「取引の相手方(取引する相手方)」には消費者も含まれます。
また、「個人情報等」(Q2参照)は、消費者の属性、行動等、当該消費者個人と関係する全ての情報を含み、デジタル・プラットフォーム事業者の事業活動に利用されており、経済的価値を有します。
消費者が、デジタル・プラットフォーム事業者が提供するサービスを利用する際に、その対価として自己の個人情報等を提供していると認められる場合は当然、消費者はデジタル・プラットフォーム事業者の「取引の相手方(取引する相手方)」に該当します。
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出所:公正取引委員会『「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント』
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Q4 デジタル・プラットフォーム事業者は消費者に対して「優越的地位」にある場合はどのような場合ですか。
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1.デジタル・プラットフォーム事業者は消費者に対して「優越的地位」にある場合(「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して」)
デジタル・プラットフォーム事業者が個人情報等を提供する消費者に対して優越した地位にあるとは、消費者がデジタル・プラットフォーム事業者から不利益な取扱いを受けても、消費者が当該デジタル・プラットフォーム事業者の提供するサービスを利用するためにはこれを受け入れざるを得ないような場合です。
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なお、「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(平成22年11月30日公正取引委員会、以下「優越ガイドライン」という。)において、「市場支配的な地位又はそれに準ずる絶対的に優越した地位である必要はなく、取引の相手方との関係で相対的に優越した地位」があれば足りるとしていますが、「市場支配的な地位又はそれに準ずる絶対的に優越した地位」があれば、通常、取引の相手方に対して優越的地位にあるものと考えられます。
また、「市場支配的な地位又はそれに準ずる絶対的に優越した地位」になければ、優越的地位にあるとは認められないとするものでもありません。
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2.具体的な判断基準
消費者がデジタル・プラットフォーム事業者から不利益な取扱いを受けても、消費者が当該デジタル・プラットフォーム事業者の提供するサービス(以下「当該サービス」という。)を利用するためにはこれを受け入れざるを得ないような場合であるかの判断に当たっては、消費者にとっての当該デジタル・プラットフォーム事業者と「取引することの必要性」を考慮することとされています。[7]
消費者にとって、以下の�@から�Bまでのいずれかに該当する場合には、通常、当該サービスを提供するデジタル・プラットフォーム事業者は、消費者に対して取引上の地位が優越していると認められます。
当該サービスと代替可能なサービスを提供するデジタル・プラットフォーム事業者が存在しない場合。
※当該サービスと代替可能であるかどうかについては、サービスの機能・内容、品質等を考慮して判断します。その判断に当たっては、個々の消費者ごとに判断するのではなく、一般的な消費者にとって代替可能であるかどうかで判断します。
代替可能なサービスを提供するデジタル・プラットフォーム事業者が存在していたとしても当該サービスの利用をやめることが事実上困難な場合。
※当該サービスの利用をやめることが事実上困難かどうかについては、サービスの機能・内容、当該サービスを利用する他の消費者と形成したネットワークや、当該サービスを利用することにより蓄積したデータを、他の同種のサービスで利用することが可能かどうかなどの特徴等を考慮して判断します。その判断に当たっては、個々の消費者ごとに判断するのではなく、一般的な消費者にとって利用をやめることが事実上困難かどうかで判断します。
※消費者が利用しているデジタル・プラットフォーム事業者が提供するサービスに代替可能なサービスが存在しており、迅速かつ簡単に切り替えることができる場合には、通常、当該デジタル・プラットフォーム事業者は優越的地位にないと考えられます。
当該サービスにおいて、当該サービスを提供するデジタル・プラットフォーム事業者が、その意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の取引条件を左右することができる地位にある場合
※「当該サービスにおいて、当該サービスを提供するデジタル・プラットフォーム事業者が、その意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の取引条件を左右することができる地位にある場合」とは、デジタル・プラットフォーム事業者が、提供するサービス分野において競争を実質的に制限できる地位にあり、各種の競争圧力を考慮することなく消費者に不利になるように各般の取引条件を変更できる場合です。
※�^サービス仕様を変更することや、�_「デジタル・プラットフォーム」の利用規約やプライバシーポリシーを変更することは、「価格、品質、数量、その他各般の取引条件を左右すること」に含まれます。
※約款契約等の標準化された契約条件を使用する契約自体が�Bの場合に当たるものではありません。
※「各般の取引条件」には、サービスの品質に係るものも含まれます。
出所:公正取引委員会『「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント』
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消費者が不利益な取扱いを受け入れざるを得ないか否かの判断に当たって、消費者が、デジタル・プラットフォーム事業者の提供するサービスから得られる便益を得るために、当該サービスを利用する必要性があるかどうかを考慮しますが、当該便益を諦める(取引しない)という選択肢があるということは考慮しません。
BtoC取引とBtoB取引とでは異なる特性があることから、本考え方では、消費者にとってデジタル・プラットフォーム事業者と取引することの必要性を考慮して、優越的地位を認定することとしており、上記�@〜�Bのいずれかの場合に該当すれば、通常、優越的地位が認められます。また、消費者は様々な消費活動を行っているため、あるサービスへの取引依存度の算定は困難です。なお、デジタル・プラットフォーム事業者の市場における地位については、「優越ガイドライン」で整理している「取引することで取引数量や取引額の増加が期待でき」るといった事情とは必ずしも同じではないものの、優越的地位の認定の判断に当たって考慮要素になり得ます。
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3.「利用して」行われた行為
優越的地位にあるデジタル・プラットフォーム事業者が、消費者に対して不当に不利益を課して取引を行えば、通常、「利用して」行われた行為であると認められます。
これらの判断に当たっては、デジタル・プラットフォーム事業者と消費者との間に、情報の質及び量並びに交渉力の格差が存在することを考慮する必要があります。
優越的地位にあるデジタル・プラットフォーム事業者が、消費者に対して不当に不利益を課して取引を行う場合、消費者が当該行為を認識していない場合でも、消費者が当該行為を認識したとしても、自社との取引をやめられないために受け入れて当該サービスを利用せざるを得ないものとして当該行為を行ったときには、通常、優越的地位を利用して行ったものと考えられます。
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Q5 「正常な商慣習に照らして不当に」とはどのような場合ですか。
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「正常な商慣習に照らして不当に」という要件は、優越的地位の濫用の有無が、公正な競争秩序の維持・促進の観点から個別の事案ごとに判断されることを示すものです。
ここで、「正常な商慣習」とは、公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるものをいいます。したがって、現に存在する商慣習に合致しているからといって、直ちにその行為が正当化されることにはなりません。
「正常な商慣習」とは、公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるものであり、個別の事案ごとに判断されます。
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出所:公正取引委員会『「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント』
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Q6 本考え方では、デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引において、デジタル・プラットフォーム事業者による個人情報等の取得又は利用におけるどのような行為が、独占禁止法2条9項5号の規定に照らして、優越的地位の濫用につながり得る行為とされていますか。
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本考え方では、デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引において、デジタル・プラットフォーム事業者による個人情報等の取得又は利用におけるどのような行為が、独占禁止法2条9項5号の規定に照らして、優越的地位の濫用につながり得る行為であるかについて、考え方を明らかにしています(本考え方5)。
なお、優越的地位の濫用として問題となるのは、本考え方に記載されている行為に限られるものではなく、また、他の法令に違反しない場合であっても優越的地位の濫用として問題となり得ます。
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1.優越的地位の濫用となる行為類型
個人情報等の不当な取得(⇒詳細はQ7参照)
ア 利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得すること。
【想定例�@】デジタル・プラットフォーム事業者A社が、個人情報を取得するに当たり、その利用目的を自社のウェブサイト等で知らせることなく、消費者の個人情報を取得した。
イ 利用目的の達成に必要な範囲を超えて、消費者の意に反して個人情報を取得すること。
【想定例�A】 デジタル・プラットフォーム事業者B社が、個人情報を取得するに当たり、その利用目的を「商品の販売」と特定して消費者に示していたところ、商品の販売に必要な範囲を超えて、消費者の性別・職業に関する情報を、消費者の同意を得ることなく取得した。
ウ 個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、個人情報を取得すること。
【想定例�B】デジタル・プラットフォーム事業者C社が、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、サービスを利用させ、消費者の個人情報を取得した。
エ 自己の提供するサービスを継続して利用する消費者に対して、消費者がサービスを利用するための対価として提供している個人情報等とは別に、個人情報等その他の経済上の利益を提供させること。
【想定例�C】 デジタル・プラットフォーム事業者D社が、提供するサービスを継続して利用する消費者から対価として取得する個人情報等とは別に、追加的に個人情報等を提供させた
個人情報等の不当な利用
ア 利用目的の達成に必要な範囲を超えて、消費者の意に反して個人情報を利用すること。
【想定例�D】 デジタル・プラットフォーム事業者E社が、利用目的を「商品の販売」と特定し、当該利用目的を消費者に示して取得した個人情報を、消費者の同意を得ることなく「ターゲティング広告」に利用した。
【想定例�E】 デジタル・プラットフォーム事業者F社が、サービスを利用する消費者から取得した個人情報を、消費者の同意を得ることなく第三者に提供した。
イ 個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、個人情報を利用すること。
【想定例�F】デジタル・プラットフォーム事業者G社が、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、サービスを利用させ、個人情報を利用した。
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出所:公正取引委員会『「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント』
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2.本考え方の対象範囲
本考え方の対象範囲は以下のとおりです。
〇デジタル・プラットフォーム事業者が消費者にサービスを提供し、その対価としてデジタル・プラットフォーム事業者が消費者の個人情報等を取得する場合、本考え方の対象となります。
〇デジタル・プラットフォーム事業者が取引関係にある消費者から取得した個人情報等を利用する場合(第三者への提供も含む)、本考え方の対象となります。
〇第三者がデジタル・プラットフォーム事業者から取得する消費者の個人情報等は、第三者が消費者との取引関係に基づいて取得するものではないため、第三者による当該個人情報等の取得又は利用は、本考え方の対象となりません。
ただし、デジタル・プラットフォーム事業者が第三者をして、消費者から取得する「個人情報以外の個人に関する情報」と他の情報を照合して個人情報とさせ、消費者に不利益を与えることを目的に当該個人情報を利用させるために、消費者から「個人情報以外の個人に関する情報」を取得する場合等は、優越的地位の濫用として問題となります。
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出所:公正取引委員会『「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント』
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Q7 優越的地位の濫用となる行為類型(「個人情報等の不当な取得」)はどのような行為を対象としていますか。
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1.消費者にとって不利益(「対価に相応でないサービス」)
デジタル・プラットフォーム事業者が、提供するサービスを利用する消費者に対して、下記2の各類型の行為を行うことは、対価に対し相応でない品質のサービスを提供すること等により、消費者に対して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなります。
すなわち、下記2の各類型の行為を行う場合、当該サービスは、個人情報の取得に関して有すべき必要最低限の品質を備えていないものと認められるので、対価を得てそのようなサービスを提供することは、消費者に対して不利益を与えるものと認められます。
したがって、サービスを利用する消費者に対して優越した地位にあるデジタル・プラットフォーム事業者が、下記2の各類型の行為を行うことは、優越的地位の濫用として問題となります。
なお、サービスを利用する消費者に対して優越した地位にあるデジタル・プラットフォーム事業者による消費者が提供する個人情報等の取得に関する行為が、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなる場合には、下記2の各類型の行為に限らず、優越的地位の濫用として問題となります。具体的には、デジタル・プラットフォーム事業者が第三者をして、消費者から取得する「個人情報以外の個人に関する情報」と他の情報を照合して個人情報とさせ、消費者に不利益を与えることを目的に当該個人情報を利用させるために、消費者から「個人情報以外の個人に関する情報」を取得する場合等は、優越的地位の濫用として問題となります。
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出所:公正取引委員会『「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント』
2.「個人情報等の不当な取得」の行為類型
ア 利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得すること。(本考え方5(1)ア)
【想定例�@】デジタル・プラットフォーム事業者A社が、個人情報を取得するに当たり、その利用目的を自社のウェブサイト等で知らせることなく、消費者の個人情報を取得した。
出所:公正取引委員会『「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント』
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〇自社のウェブサイトの分かりやすい場所に利用目的を掲載した場合や、消費者に対して、電子メール等により利用目的を通知した場合は、通常、問題となりません。
〇利用目的の説明が曖昧である、難解な専門用語によるものである、利用目的の説明文の掲載場所が容易に認識できない、分散している、他のサービスの利用に関する説明と明確に区別されていないこと等により、一般的な消費者が利用目的を理解することが困難な状況において、消費者の個人情報を取得する場合には、利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得したと判断される場合があります。
一般的な消費者が容易にアクセスできる場所に分かりやすい方式で、明確かつ平易な言葉を用いて、簡潔に、一般的な消費者が容易に理解できるように利用目的に関する説明を行っている場合は、通常、問題となりません。
〇ウェブサイトの閲覧情報、携帯端末の位置情報等、一般には、それ単体では個人識別性を有しない情報であっても、当該情報を、個人を識別して利用する場合は、そのことを消費者に知らせずに取得すると問題となります。
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イ 利用目的の達成に必要な範囲を超えて、消費者の意に反して個人情報を取得すること。(本考え方5(1)イ)
【想定例�A】 デジタル・プラットフォーム事業者B社が、個人情報を取得するに当たり、その利用目的を「商品の販売」と特定して消費者に示していたところ、商品の販売に必要な範囲を超えて、消費者の性別・職業に関する情報を、消費者の同意を得ることなく取得した。
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出所:公正取引委員会『「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント』
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〇「商品の販売」を利用目的とする場合に、消費者の氏名や、氏名と紐付いて取得されるメールアドレス、決済情報等といった利用目的の達成に必要な個人情報を取得することは、通常、問題となりません。また、氏名と紐付いて取得される消費者の性別や職業等といった利用目的の達成に必要な範囲を超える個人情報であっても、消費者本人の明示的な同意を得て取得する場合は、通常、問題となりません。
〇ただし、消費者が、サービスを利用せざるを得ないことから、利用目的の達成に必要な範囲を超える個人情報の取得にやむを得ず同意した場合には、当該同意は消費者の意に反するものと判断される場合があります。「やむを得ず同意した」ものであるかどうかの判断においては、同意したことにより消費者が受ける不利益の程度等を勘案することとし、その判断に当たっては、個々の消費者ごとに判断するのではなく、一般的な消費者にとって不利益を与えることとなるかどうかで判断されます。これは、個人情報保護法には違反しないが優越的地位の濫用に該当する具体例に該当します。
〇「商品の販売」に加えて追加的なサービスを提供しているときに、当該追加的なサービスの提供を受ける消費者本人の明示的な同意を得て、当該追加的なサービスの提供に必要な個人情報を取得する場合は、通常、問題となりません。
ウ 個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、個人情報を取得すること。(本考え方5(1)ウ)
【想定例�B】デジタル・プラットフォーム事業者C社が、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、サービスを利用させ、消費者の個人情報を取得した。
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出所:公正取引委員会『「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント』
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エ 自己の提供するサービスを継続して利用する消費者に対して、消費者がサービスを利用するための対価として提供している個人情報等とは別に、個人情報等その他の経済上の利益を提供させること。(本考え方5(1)エ)
【想定例�C】 デジタル・プラットフォーム事業者D社が、提供するサービスを継続して利用する消費者から対価として取得する個人情報等とは別に、追加的に個人情報等を提供させた。
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出所:公正取引委員会『「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント』
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〇当該追加的な個人情報等の取得が、上記ア、イ及びウにおいて問題とされているような行為を伴わずに行われた場合であっても、問題となります。
〇以下の各場合は通常問題となりません。
・任意のアンケート調査による場合等、消費者が対価として提供している個人情報等とは別に個人情報等を任意に提供する場合
・従来提供していたサービスとは別に、追加的なサービスを提供する場合であって、消費者が当該追加的なサービスの提供を受けるに当たり、その対価として追加的な個人情報等を提供させる場合
・サービスの品質の向上等、消費者が対価として提供している個人情報等とは別に個人情報等を提供することで消費者に生じる利益を勘案して、当該個人情報等を提供させることが合理的であると認められる範囲のものである場合
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Q8 優越的地位の濫用となる行為類型(「個人情報等の不当な利用」)はどのような行為を対象としていますか。
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1.消費者にとって不利益(「対価に相応でないサービス」)
デジタル・プラットフォーム事業者が、提供するサービスを利用する消費者から取得した個人情報について、下記2ア及びイのような行為を行うことは、対価に対し相応でない品質のサービスを提供すること等により、消費者に対して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなります。
すなわち、下記2ア及びイのような行為を伴う場合、当該サービスは、個人情報の利用に関して有すべき必要最低限の品質を備えていないものと認められるので、対価を得てそのようなサービスを提供することは、消費者に対して、不利益を与えるものと認められます。
したがって、サービスを利用する消費者に対して優越した地位にあるデジタル・プラットフォーム事業者が、下記2ア及びイのような行為を行うことは、優越的地位の濫用として問題となります。
なお、サービスを利用する消費者に対して優越した地位にあるデジタル・プラットフォーム事業者が消費者から取得する個人情報等の利用に関する行為が、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなる場合には、下記2ア及びイのような行為に限らず、優越的地位の濫用として問題となります。例えば、デジタル・プラットフォーム事業者が第三者をして、消費者から取得した「個人情報以外の個人に関する情報」と他の情報を照合して個人情報とさせ、消費者に不利益を与えることを目的に当該個人情報を利用させるために、「個人情報以外の個人に関する情報」を当該第三者に提供した場合等は、優越的地位の濫用として問題となります。
出所:公正取引委員会『「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント』
2.「個人情報等の不当な利用」の行為類型
ア 利用目的の達成に必要な範囲を超えて、消費者の意に反して個人情報を利用すること。
【想定例�D】 デジタル・プラットフォーム事業者E社が、利用目的を「商品の販売」と特定し、当該利用目的を消費者に示して取得した個人情報を、消費者の同意を得ることなく「ターゲティング広告」に利用した。
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〇利用目的が「商品の販売」であるところ、新たに、ターゲティング広告に個人情報を利用することについて、例えば、電子メールによって個々の消費者に連絡し、自社のウェブサイトにおいて、消費者から取得した個人情報を当該目的に利用することに同意する旨の確認欄へのチェックを得た上で利用する場合には、通常、問題となりません。
〇ただし、消費者が、サービスを利用せざるを得ないことから、利用目的の達成に必要な範囲を超える個人情報の利用にやむを得ず同意した場合には、当該同意は消費者の意に反するものと判断される場合があります。やむを得ず同意したものであるかどうかの判断においては、同意したことにより消費者が受ける不利益の程度等を勘案することとし、その判断に当たっては、個々の消費者ごとに判断するのではなく、一般的な消費者にとって不利益を与えることとなるかどうかで判断することになります。これは、個人情報保護法には違反しないが優越的地位の濫用に該当する具体例に該当します。
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【想定例�E】 デジタル・プラットフォーム事業者F社が、サービスを利用する消費者から取得した個人情報を、消費者の同意を得ることなく第三者に提供した。
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〇個人情報を第三者に提供することについて、例えば、電子メールによって個々の消費者に連絡し、自社のウェブサイトにおいて、消費者から取得した個人情報を第三者に提供することに同意する旨の確認欄へのチェックを得た上で提供する場合には、通常、問題となりません。
〇ただし、消費者が、サービスを利用せざるを得ないことから、個人情報の第三者への提供にやむを得ず同意した場合には、当該同意は消費者の意に反するものと判断される場合があります。やむを得ず同意したものであるかどうかの判断においては、同意したことにより消費者が受ける不利益の程度等を勘案することとし、その判断に当たっては、個々の消費者ごとに判断するのではなく、一般的な消費者にとって不利益を与えることとなるかどうかで判断することになります。
〇なお、同一社内であれば、提供された個人情報を、消費者の同意なく、ある部門から別の部門に提供しても、問題となりません。
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出所:公正取引委員会『「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント』
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イ 個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、個人情報を利用すること。
【想定例�F】デジタル・プラットフォーム事業者G社が、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、サービスを利用させ、個人情報を利用した。
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出所:公正取引委員会『「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント』
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Q9 本考え方では、「個人情報以外の個人に関する情報」の取得や第三者への提供についてどのような考え方が示されていますか。
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1.「個人情報以外の個人に関する情報」の取得(本考え方(注8))
デジタル・プラットフォーム事業者が第三者をして、消費者から取得する「個人情報以外の個人に関する情報」と他の情報を照合して個人情報とさせ、消費者に不利益を与えることを目的に当該個人情報を利用させるために、消費者から「個人情報以外の個人に関する情報」を取得する場合等は、優越的地位の濫用として問題となります。
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2.「個人情報以外の個人に関する情報」の第三者への提供(本考え方(注17))
デジタル・プラットフォーム事業者が第三者をして、消費者から取得した「個人情報以外の個人に関する情報」と他の情報を照合して個人情報とさせ、消費者に不利益を与えることを目的に当該個人情報を利用させるために、「個人情報以外の個人に関する情報」を当該第三者に提供した場合等は、優越的地位の濫用として問題となります。
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出所:公正取引委員会『「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」のポイント』
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3.個人情報保護法との関係(本人の同意なきデータの第三者提供)
令和元年(2019年)12月13日、個人情報保護委員会は、「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直し 制度改正大綱」(以下「制度改正大綱」という。)を公表し、パブリックコメントとして意見募集を開始しました(意見締切:2020年1月14日) [8]。
制度改正大綱では、「本人の同意なきデータの第三者提供」として、提供元の個人情報取扱事業者においては、個人情報(個人データ)に該当しない(したがって、個人情報保護法23条1項に基づく第三者提供の同意は取得していない)ものの、提供先の個人情報取扱事業者においては個人情報(個人データ)となる場合においても、個人データの第三者提供の制限の規律に服する(すなわち、第三者提供の同意を要する)旨の制度改正の方向性が示されています。
これは、上記1及び2の「個人情報以外の個人に関する情報」の取得・第三者への提供の考え方と平仄の取れたものです。
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個人情報保護委員会の問題意識
提供元と提供先でデータ共有が行われる等の結果、提供先では、個人情報となることを知りながら、提供元では個人が特定できないとして、本人同意なくデータが第三者提供される事例が存在しています。
出所:個人情報保護委員会「個人情報保護をめぐる国内外の動向」(令和元年11月25日)
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制度改正大綱にも掲げられているとおり、これは、DMP(Data Management Platform)を利用したターゲット広告などで問題となります。
DMPとは、インターネット上の様々なサーバーに蓄積されるデータや自社サイトのログデータなどを一元管理、分析し、最終的に広告配信などを実現するためのプラットフォームのことです。
DMPは「プライベートDMP」と「パブリックDMP」の2種類がある。企業が自社で蓄積したデータを活用するために用いる「プライベートDMP」と、DMPを運営する事業者が様々な事業者からユーザーデータを収集し、それにIDを付した上で統合・分析し、さらには、外部に提供する「パブリックDMP」があります。
「プライベートDMP」は、自社データであり、アクセス解析データ、購買データ、キャンペーン結果、アクセスログ、広告配信データ等が含まれます。自社データであるので、特定の個人を識別できる「個人データ(個人情報)」に該当します。
「パブリックDMP」は、外部データであり、属性データ(性別、年代等)、嗜好性データ、外部サイト行動データ等が含まれる。個人を特定できるデータは含まれておらず、Cookie(クッキー)などで集約されます。
「プライベートDMP」(自社データ)と「パブリックDMP」(外部データ)を紐づけて、セグメント分析や顧客プロファイリングを行い、広告配信や自社の施策のターゲティングに利用されます。_
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(2)リクナビ問題
今回の改正の方向性の背景には、就職情報サイト「リクナビ」を運営する株式会社リクルートキャリア(以下「リクルートキャリア社」という。)が、いわゆる内定辞退率を提供するサービスに関する問題があります。
「個人情報の保護に関する法律第42 条第1項の規定に基づく勧告等について」(個人情報保護委員会:令和元年12月4日)[9]によれば、以下のとおり、「提供元では個人データに該当しないものの、提供先において個人データになることが明らかな情報」の提供が本人の同意なしに行われていました。
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_ 2018年度卒業生向けの「リクナビ2019」におけるサービスでは、個人情報である氏名の代わりにCookieで突合し、特定の個人を識別しないとする方式で内定辞退率を算出し、第三者提供に係る同意を得ずにこれを利用企業に提供していた。 リクルートキャリア社は、内定辞退率の提供を受けた企業側において特定の個人を識別できることを知りながら、提供する側では特定の個人を識別できないとして、個人データの第三者提供の同意取得を回避しており、法の趣旨を潜脱した極めて不適切なサービスを行っていた。
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リクナビ問題についての詳細については、「個人情報保護法ニュースNo.1:リクナビ事件と個人情報保護法の改正」を参照ください。
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[1]https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=110300034&Mode=2
[2]https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/miraitousi2018_zentai.pdf
[3]https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181218003/20181218003.html
[4]https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/fu2019.pdf
[5]https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=110300034&Mode=0&fromPCMMSTDETAIL=true
[6]デジタル・プラットフォーム事業者間の公正競争阻害性は観念できるが、消費者間の公正競争阻害性は観念できないのではないのではないかとのパブリックコメント意見に対応して追加された記載(「(注4)」)。
[7]事業者間取引では、取引当事者間の自由な交渉の結果、いずれか一方にとって取引条件が不利になることは当然あります。また、交渉の余地がある場合もあるため、「優越ガイドライン」では「著しく不利益な…」としています。
一方、デジタル・プラットフォーム事業者と消費者との間には情報の質及び量並びに交渉力の格差が存在しており、交渉の余地がない場合が多く、不利益な取扱いを回避するためには、取引しないという選択をするほかないこと、また、取引の相手方が事業者の場合は、行為者から受けた不利益を行為者以外の者との取引によって解消する余地がある一方、取引の相手方が消費者の場合は、そういった余地がないことから、単に「不利益な…」としています。
[8]https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=240000058&Mode=0
[9]https://www.ppc.go.jp/files/pdf/190826_houdou.pdf