本ニュースレターは、令和3年(2021年)通常国会において成立し、同年5月19日に公布された「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和3年法律第37号、以下「デジタル社会形成整備法」又は「改正法」といいます。)における「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以下「マイナンバー法」又は「法」といいます。)その他の法律及び同時に成立した関連法により、個人番号(以下「個人番号」又は「マイナンバー」といいます。)関連の改正について解説するものです。
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【ニュースレター】デジタル社会形成整備法に基づくマイナンバー法等の改正について
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執筆者:渡邉雅之
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弁護士渡邉雅之
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1.従業者本人の同意があった場合における転職時等の使用者間での特定個人情報の提供
(1)改正概要
改正法によるマイナンバー法の改正により、特定個人情報(マイナンバーを含む個人情報)が第三者に提供できる場合として、「使用者A」における「従業者等」(従業者、法人の業務を執行する役員等)であった者が「使用者B」の従業者等になった場合、当該「従業者等」の同意を得て、「使用者A」が「使用者B」に対して、その個人番号関係事務を処理するために必要な限度で当該従業者等の個人番号を含む特定個人情報を提供する場合が追加されます(法19条4号)。
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〇法19条4号 特定個人情報が提供できる場合
「一の使用者等(使用者、法人又は国若しくは地方公共団体をいう。以下この号において同じ。)における従業者等(従業者、法人の業務を執行する役員又は国若しくは地方公共団体の公務員等をいう。以下この号において同じ。)であった者が他の使用者などにおける従業者等になった場合において、当該従業者等の同意を得て、当該一の使用者等が当該他の使用者等に対し、その個人番号関係事務を処理するために必要な限度で当該従業者等の個人番号を含む特定個人情報を提供するとき。」
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これは、従業員等の転籍・退職等があった場合において、本人の同意があるときは、転籍・退職前の勤務先から、転籍・再就職した勤務先に、当該従業員等の特定個人情報の提供を可能にするものです。
(2)施行期日
この改正は、令和3年9月1日に施行されます(改正法附則1条本文)ので、事業者としては今から対応について十分検討しておく必要があります。
(3)改正の背景・効果
個人情報保護法が本人同意を根拠とする個人情報の第三者提供を認められています(同法23条1項)。
特定個人情報以外の従業員の個人情報については、「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針(解説)」の「(参考4)採用、出向・転籍、退職時点における個人情報の適正な取扱いを確保するための留意点」において、「退職者の転職先又は転職予定先に対し当該退職者の個人情報を提供することは第三者提供に該当するため、あらかじめ本人の同意を得なければならない。」として従業員の同意を得た上で直接、転籍・再就職先に提供することが認められています。
他方、特定個人情報の場合は、本人であってもマイナンバー法19条各号が特に認める場合を除き、第三者に提供することが禁止されています。
従業員等は、転籍・退職等により雇用先を変更した場合に、転籍・再就職後の勤務先に対し、改めてマイナンバーを提供しなければならず、国民・事業者の負担が極めて大きいため、見直しを求める要望があったためになされた改正です。
これにより、従業員等の転籍・退職等があった場合、従業員等が改めて特定個人情報を提供する必要がなくなるため、国民・事業者の負担が軽減されることが期待されます。
(4)実務上の対応
※以下は、参議院内閣委員会(令和3年5月11日)の杉尾秀哉議員(立憲民主)の質問に対する冨安泰一郎政府参考人(内閣官房内閣審議官)の回答を参考にして記載しています。
ア 従業員の同意の取得時期
「従業員の同意」は、従業員等の特定個人情報を保有する転職、退職前の事業者が転職、再就職先の事業者に直接従業員等の特定個人情報を提供したいと考える場合に、具体的な提供先を明らかにした上で求めるものであるので、本人の同意の取得の時期は転職先が決定された後になります。
したがって、特定個人情報を転籍先・再就職先に提供することについて雇用契約等において採用時点において同意を取得したり、就業規則に同意をしていることとは認められないものと考えられます。
イ 同意の任意性
本人の同意というものは自由意思によるものであり、従業員等の意思に反して特定個人情報を転籍先・再就職先に直接提供することについて同意をすることを強制することはできないと考えられます。また、従業員等は一度、特定個人情報を転籍先・再就職先に直接提供することについて同意してもこれを撤回することができるものと考えられます。
ウ 提供可能な情報の範囲
具体的に提供可能な範囲の情報は「その個人番号関係事務を処理するために必要な限度」とされています(マイナンバー法19条4号)。
そのため、具体的には、社会保険の資格届や給与支払報告書等の提出に必要な氏名、住所、生年月日等が想定されるほか、これらの届出書の提出に必要な範囲で、前職の給与なども含まれると考えられます。
ただし、この提供可能な情報については、現状においても、再就職された後で本人から転職、再就職した勤務先に対し提出している情報であって、新たに提供されることになるものではないと考えられます。
「前職の給与額」は、社会保険の資格届や給与支払報告書等の中で提出されることになります。これに対して、「退職理由」は含まれないと考えられます。
具体的には、個人情報保護委員会が今後定めるガイドラインにおいて、事業者が実施する個人番号関係事務の内容を踏まえ、提供可能な特定情報について定められることになります。
(5)退職証明書等との関係
退職した従業員に関する情報については、従業員本人に交付する退職証明書により対応するのが原則であり、これは本改正後も変更はありません。
従業員が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合には、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければなりません(労働基準法22条1項)。
退職証明書には、使用者は、あらかじめ第三者と謀り、従業員の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、退職時証明書に秘密の記号を記入してはなりません(同条4項)。従業員本人の同意がある場合に、マイナンバーが退職証明書に記入することはできるかどうかについては個人情報保護委員会や厚生労働省の判断を待つ必要があります。
従業員のマイナンバーや、勤務状況・勤務成績に関して、従業員の転職先から問い合わせがあった場合、あらかじめ従業員本人の同意なく個別の照会に応じることは、労働基準法22条には違反しませんが、上記(1)・(3)のとおりマイナンバー法19条や個人情報保護法23条に違反し、プライバシー侵害に該当する場合は従業員本人から損害賠償請求される可能性があるので、留意する必要があります。
なお、退職者が雇用保険の失業給付を受給するときにハローワーク(公共職業安定所)に提出する「離職票」にはマイナンバーを記載することとなっています。
2.国家資格関係事務におけるマイナンバー利用及び情報連携の拡大(デジタル社会形成整備法による改正)
(1)改正の背景・改正概要・施行期日
各省庁が所管する各種免許・国家資格等の管理は、必ずしもデジタル化が進んでおらず、資格者の各種届出等が徹底されていない場合もあります。また、対面や郵送での手続が必要となることや、紙ベースの処理が行われていること等、資格者の資格証明、行政機関等の資格確認の負担も少なくありません。
(2)改正概要
本改正により、税・社会保障・災害等に係る以下の32資格(社会保険労務士を含む)について、住民基本台帳法及びマイナンバー法等を改正し、個人番号利用事務に指定することにより、住基システム・戸籍システムとの連携を行います。なお、社会保障・税・災害分野に該当しない国家資格については、登録手続の簡素化等を図るべく、今後どのようにデジタル化を行うかを含め、2020年12月に閣議決定されたデジタル・ガバメント実行計画に基づいて、令和6年度の開始に向けて検討することとされています。
(3)施行期日
本改正は改正法の公布の日(令和3年5月19日)から起算して4年を超えない範囲内において政令で定める日(改正法附則1条10号)に施行されます。これらの資格は先行して国家資格等情報連携・活用システム(仮称)によるデジタル化の検討を行い、令和6年度のサービス開始を目指します。
(4)改正の効果
本改正により、社会保険労務士事務を含む国家資格関係事務に関して以下の効果が期待されています。
・各種届出時に求められていた、戸籍抄(謄)本や住民票の写しの添付の省略。
・マイナポータルを活用した、資格保有者から第三者への資格保有の証明及び就業支援情報の提供(データ管理の透明性の向上)
・遺族からの死亡届を不要とし、資格管理者が職権で登録の抹消を行うことにより、登録原簿の正確性を確保
(5)本改正に寄せられている懸念について
本改正に対しては、情報連携を通じた行政機関からの人材確保の呼びかけを望まない者もおり、職業選択の自由に関わる問題であり、有資格者に対する国家統制の強化、自由な業務活動の阻害になるのではないかとの懸念を呈する者もいます。
しかしながら、現在でも各省庁において、所管する各種免許、国家資格等について資格者の登録情報を保有しているので国家資格統制につながるものではありません。
3.郵便局における電子証明書の発行・更新(デジタル社会形成整備法による改正)
(1)改正の背景
個人番号カード(以下「マイナンバーカード」といいます。)の電子証明書の発行・更新、暗証番号の初期化(ロック解除)・再設定が可能な場所の充実に対するニーズが高まっていることを受け、「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ報告」において、郵便局においてマイナンバーカードの電子証明書の発行・更新等を可能とすることとされました。
(2)改正の概要
改正法による郵便局事務取扱法により、郵便局取扱事務に「電子証明書の発行・更新等に係る事務」を追加され、市町村が指定した郵便局においても電子証明書の発行・更新等が可能となります。
本改正により、地方公共団体が指定した郵便局は、以下の5つの証明書等に係る事務が可能となります。
�@ 戸籍・除籍の謄本、抄本、記載事項証明書等、�A(地方税の)納税証明書、�B住民票の写し及び住民票記載事項証明書、�C戸籍の附票の写し、�D印鑑登録証明書
なお、法律規定事項ではありませんが、本改正にあわせ、電子証明書の暗証番号の初期化(ロック解除)・再設定も可能となる予定です。
(3)施行期日
本改正は、改正法の公布の日(令和3年5月19日)とされています(改正法附則1条1号)。
今回の改正は、マイナンバーを利用した国家資格のデジタル化は資格保有者の利便性の向上や資格管理者の業務効率化等を目指すものであり、今回の改正法により資格保有者に対する国家の統制が強化されたり、あるいは自由な営業が阻害されるものではありません。
4.公的個人認証サービスにおける本人同意に基づく最新の住所情報等の提供
(1)改正の背景
公的個人認証サービスにおいては、署名用電子証明書を利用する民間事業者等(署名検証者)は、署名用電子証明書の有効性のみを地方公共団体情報システム機構(J-LIS)に確認する仕組みですが、住所変更等により署名用電子証明書が更新された住民について、当該住民の最新の住所情報等を取得することへのニーズが高まっています。
これを受け、「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ報告」において、本人同意に基づき基本4情報を署名検証者に提供する仕組みを構築し、令和4年度にサービスを開始することを目指すこととされました。
(2)改正の概要
本改正により、「電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律」(以下「公的個人認証法」といいます。)が改正されます。
署名検証者(民間事業者等)の求めがあった場合で、本人の同意があるときは、J-LISは、最新の基本4情報(氏名、生年月日、性別及び住所)の提供を行うことになります(公的個人認証法18条3項、19条4項)。
署名検証者は、受領した基本4情報について、安全確保措置を講じるとともに、目的外利用・提供の制限が課されます(同法19条5項)。
(3)改正の効果
署名検証者においては、直接本人に照会することなく、住民の最新の住所情報等を取得することが可能になります。住民においては、個々の署名検証者に対する住所等の変更手続が不要になります。
(4)施行期日
本改正は、改正法の公布の日(令和3年5月19日)から2年以内の政令で定める日に施行されます(改正法附則1条7号)。
5.電子証明書のスマートフォンへの搭載
(1)改正の背景
現状、マイナンバーカードを用いて行政手続等を行うためには、マイナンバーカードをスマートフォンにかざして行うことが必要ですが、マイナンバーカードをかざすことなくスマートフォンのみで手続を行うことへのニーズが高まっています。
これを受け、「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ報告」において、令和4年度中に、マイナンバーカードの機能(電子証明書)のスマートフォンへの搭載の実現を目指すこととされました。
(2)改正の概要
改正法により、公的個人認証法が改正され、電子証明書のスマートフォンへの搭載を可能とし、スマートフォンのみで手続を行うことが可能になります。
ア.電子証明書の発行要件及び搭載方法
スマートフォンに搭載する電子証明書として「移動端末設備用電子証明書」が創設されます。「移動端末設備用電子証明書」は、1人につき、署名用・利用者証明用1つずつ発行可能です。申請者は、マイナンバーカードの署名用電子証明書を用いて、オンラインで発行申請が可能となります。
電子証明書、秘密鍵・公開鍵(鍵ペア)等を保存する電磁的記録媒体のセキュリティに係る基準は告示で規定されます。
イ.個人番号カード用電子証明書との関係
本改正により、マイナンバーカード用の署名用電子証明書は、「個人番号カード用署名用電子証明書」というようになります。
「移動端末設備用電子証明書」は「個人番号カード用電子証明書」と紐付けて管理します。
有効期間は、紐付けられる「個人番号カード用電子証明書」と同一、失効した場合には連動して失効します。
「移動端末設備用電子証明書」には、「個人番号カード用電子証明書」との識別が可能となる措置を講じます。
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ウ.失効管理及び不正利用に対する対策
公的個人認証法においては、機種変更、譲渡、売買等を想定し、使用者に失効申請(オンライン)を求める規定が整備されます。
スマートフォン等を紛失した場合にはコールセンターへの連絡により一時保留可能とする運用とされる予定です。失効申請が適切になされない場合も想定し、重層的な措置を講じる予定です。
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(3)施行期日
本改正は、改正法の公布の日(令和3年5月19日)から2年以内の政令で定める日に施行されます(改正法附則1条7号)。
6.転出・転入手続のワンストップ化
(1)改正の背景
住民基本台帳制度における転出・転入手続に当たっては、転出地市区町村で転出証明書を受け取り、転入地市区町村で転入届とともに提出する必要がありますが(ただし、現行法上、マイナンバーカード所持者が手続を行う場合には、転出証明書は不要)、住民の来庁負担の軽減や転入時における住民登録及び住民登録に関連する一連の事務(国民健康保険、児童手当など)の処理に多くの時間を要しています。
(2)改正の概要
改正法により、住民基本台帳法が改正され、マイナンバーカード所持者が、マイナポータルからオンラインで転出届・転入予約を行い、転入地市区町村が、あらかじめ通知された転出証明書情報(氏名、生年月日、続柄、個人番号、転出先、転出の予定年月日など)により事前準備を行うことになります。
(3)改正の効果
本改正により、窓口で届出書類を作成する手間の軽減、手続に要する時間が短縮されます(住民サービスの向上)。
また、窓口混雑が緩和されるとともに、あらかじめ通知される転出証明書情報を活用した事前準備により、転入手続当日の事務負担が軽減されます(市町村の事務の効率化)。
(4)施行期日
本改正は、改正法の公布の日(令和3年(2022年)5月19日)から2年以内の政令で定める日に施行されます(改正法附則1条7号)。
7.マイナンバーカードの発行・運営体制の抜本的強化
(1)改正の背景
マイナンバーカード・電子証明書は、デジタル政府・社会を支える基盤となるものであり、国の責任において、システムの安定性をさらに高めていく必要があります。
「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(令和2年12月25日閣議決定)等において、 現在、市区町村からの委託を受けてマイナンバーカードを発行している地方公共団体情報システム機構(以下「J-LIS」といいます。)を、地方共同法人から国と地方公共団体が共同で管理する法人へ転換し、国のガバナンスを抜本的に強化することとされました。
(2)改正の概要
改正法によるマイナンバー法、地方公共団体情報システム機構法(以下「J-LIS法」といいます。)及び公的個人認証法の改正により、J-LISを国と地方公共団体が共同で管理する法人へ転換されます。また、マイナンバーカード・電子証明書に関する事務について、国の関与と責任が明確化されます。
ア.マイナンバー法の改正
�@J-LISがマイナンバーカードを発行する主体として明確に位置付けられます。
�Aマイナンバーカードや電子証明書に関する事務(個人番号カード関係事務)について、主務大臣が目標設定、計画認可、実績評価等を行います。
�B主務大臣は、実績評価の結果に基づき必要があると認めるときは、マイナンバーカード関係事務について、改善措置命令を行い、命令違反の場合は、理事長の解任を求め、解任されない場合には主務大臣が直接解任します。
�C国は、J-LISに対し、個人番号カード関係事務に係る財源措置を行います。
イ.J-LIS法の改正
�@J-LISの理事長の任命や予算の議決等を行う代表者会議の委員に主務大臣又はその指名する職員を加えます。
�AJ-LISの理事長・監事の任免は主務大臣が認可します。
�Bデジタル基盤改革支援基金の設置・区分経理等の規定を整備されます。
ウ.公的個人認証法の改正
電子証明書の発行に係る市町村の事務を法定受託事務化されます。
(3)施行期日
本改正は、改正法の公布の日である令和3年(2021年)9月1日に施行されます(同法附則1条本文)。
8.公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録
デジタル社会形成整備法と同日(令和3年(2021年)5月19日)に公布された「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律」(令和3年法律第38号、以下8において「本法」といいます。)においては、公的給付の迅速かつ確実な支給のため、預貯金口座の情報をマイナンバーとともにマイナポータルにあらかじめ登録し、行政機関等が当該口座情報の提供を求めることができることとするとともに、特定公的給付の支給のためマイナンバーを利用して管理できることとされています。
(1)公的給付支給等口座の登録
預貯金者は、公的給付の支給を受けることができる一の預貯金口座を、�@マイナポータルからオンライン申請、�A預貯金者の同意により、行政機関が取得又は保有する口座情報の提供、�B金融機関における登録申請のいずれかの方法により内閣総理大臣に申請し、マイナンバーとともに登録を受けます。
(2)行政機関等への口座情報の提供
行政機関の長等は、公的給付の支給等に必要があるとき、内閣総理大臣に対し、登録された口座情報の提供を求めることができます。行政機関等が取得した又は保有している預貯金口座についても、本人同意により、登録が可能です。
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(3)特定公的給付の支給の迅速かつ確実な実施のための仕組み
ア.特定公的給付
内閣総理大臣は、�@国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある災害若しくは感染症が発生した場合に支給されるもの又は�A経済事情の急激な変動による影響を緩和するために支給されるものを特定公的給付として指定します。
具体的には、緊急時の給付金や児童手当などの公的給付の支給等の68の事務を対象とする予定です。
イ.マイナンバーを利用した管理
行政機関等の長は、特定公的給付の支給に係る情報について、マイナンバーを利用し管理することができます。
(4)施行期日
本法は、公布日(令和3年5月19日)から2年以内(特定公的給付に係る規定は公布日、金融機関における申請は公布日から3年以内の政令で定める日)に施行されます。
9.預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律(令和3年法律第39号)
デジタル社会形成整備法と同日(令和3年5月19日)に公布された「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」(令和3年法律第39号、以下9において「本法」といいます。)においては、「マイナンバーによる預貯金口座の管理」及び「災害時又は相続時に預貯金口座に関する情報を提供すること」を目的とする法律です。
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(1)マイナンバーの利用による預貯金口座の管理
ア.趣旨
平成30年(2018年)1月からマイナンバー法の改正により、預金保険機構によるペイオフのための預貯金額の合算や金融機関に対する社会保障制度における資力調査や税務調査のために、預貯金口座にマイナンバーが付番されることになりました。
(参照)【解説】預貯金口座へのマイナンバーの付番(2018年1月から開始)
しかしながら、同制度は預金者の意思に基づく任意のものであり、本人に預貯金の付番に関してマイナンバーを告知する義務はありません。
そこで、預金者の意思に基づくことを前提とし、一度に複数の金融機関の預貯金口座への付番が行える仕組みや、マイナポータルからも登録できる仕組みを創設し、個人番号の利用による預貯金口座への付番を促進するため本法が制定されました。
イ.金融機関等に対する申出
預貯金者は、口座がマイナンバーにより管理されることを希望する旨の申出をすることができます(本法3条1項)。
金融機関は、口座開設その他重要な取引を行うとき、預貯金者に対し、上記希望の意思の有無を確認しなければなりません(本法3条2項)。
金融機関窓口からの番号登録だけでなく、マイナポータルからも可能とします(行政庁が指定する一定の金融機関においては対象外)(本法19条、17条)。
ウ.預金保険機構による通知等
金融機関は、預貯金者に対し、他の金融機関が管理する預貯金口座についても希望の有無を確認し、本人特定事項及びマイナンバー等を預金保険機構に対し通知します(本法3条3項)。
預金保険機構は、通知された本人特定事項及びマイナンバー等を他の金融機関に対し通知します(行政庁が指定する一定の金融機関においては対象外)(本法5条3項)。
通知を受けた金融機関は、預貯金者の本人特定事項等をマイナンバーにより検索することができる状態で管理しなければなりません(本法6条)。
(2)災害時又は相続時における預貯金口座に関する情報を提供する制度
相続人は、金融機関において、その被相続人を名義人とする口座に関する情報の提供を求めることができます(法8条)。ただし、預貯金口座にマイナンバーが付番されていることが前提となります。
災害救助法の適用区域に居住していた預貯金者は、金融機関において、口座を有する金融機関の名称を提示し、当該口座の情報の提供を求めることができます(行政庁が指定する一定の金融機関は対象外)(本法7条)。
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(3)施行期日
本法は、公布の日(令和3年5月19日)から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日に施行されます(本法附則1条)。