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テレワークの導入が努力義務化!改正育児・介護休業法と企業の対応

2024/11/01

(執筆者:弁護士 森村 奨)

【Q.】
先日、育児・介護休業法が改正されたと聞きました。来年の4月から順次施行されるようですが、改正の概要と企業が求められる対応について教えてください。

【A.】
1.はじめに
令和6年5月24日、育児・介護休業法等の改正法(以下「本改正法」)が成立しました。本改正法は令和7年4月1日から順次施行されますので、本稿では、本改正法の概要と求められる企業の対応についてご説明します。

2.改正の概要
本改正法の概要は、以下のとおりです。施行日は、令和7年4月1日(ただし、(1)のア及びカは同年10月1日)とされています。
(1)子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
ア 柔軟な働き方を実現するための措置及び当該措置の周知・意向確認義務を新設する
事業主は、3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、次の制度のうち2つ以上の措置を講じ、労働者が選択して利用できるようにすることが義務付けられます。
①始業時刻等の変更(フレックスタイム制や始業・終業時刻の繰上げまたは繰下げ制度)
②テレワーク等(10日/月)
③所定労働時間の短縮
④新たな休暇の付与(10日/年)
⑤保育施設の設置運営等
ただし、労使協定により、勤続1年未満の労働者などについては、当該措置の適用対象外とすることが可能です。また、これらの措置を講じようとするときは、過半数組合等からの意見聴取の機会を設ける必要があります。
さらに、事業主は、子が3歳になるまでの適切な時期に、面談等により、当該措置について労働者への個別の周知・意向確認を行い、労働者の意向への配慮が義務付けられます。
イ 所定外労働の制限の対象労働者の範囲を小学校就学前の子(現行は3歳になるまでの子)を養育する労働者に拡大する
ウ 子の看護休暇を子の入園(入学)式及び卒園式の場合や感染症に伴う学級閉鎖等の場合も取得可能とし、対象となる子の範囲を小学校3年生(現行は小学校就学前)まで拡大するとともに、勤続6月未満の労働者を労使協定に基づき適用除外とする仕組みを廃止する
エ 3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることを事業主の努力義務とする
オ 3歳未満の子を養育する労働者のうち短時間勤務の適用除外となる労働者の代替措置にテレワークを追加する
カ 妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前の労働者の仕事と育児の両立に係る個別の意向聴取・配慮を義務化する
(2)育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化
ア 年1回の育休取得状況の公表をすべき事業主を従業員数300人超(現行は1000人超)の事業主に拡大する
イ 従業員数100人超の事業主に、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定時の育児休業の取得状況等に係る状況把握・数値目標の設定を義務付ける
(3)介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等
ア 労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た際の両立支援制度等についての個別の周知・意向確認を事業主に義務付ける
イ 労働者等への両立支援制度等に関する早期の情報提供や雇用環境の整備(労働者へ研修等)を事業主に義務付ける
ウ 介護休暇について勤続6月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止する
エ 家族を介護する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加する


3.改正を踏まえた対応
(1)就業規則等の改訂及び労使協定の見直し
企業の対応としては、まず、就業規則等の改訂を行う必要があります。就業規則等に規定化する内容としては、2(1)のアないしオと、(3)のウ及びエに記載の内容が挙げられます。なお、このうち2(1)のアについては、措置内容の検討及び規定化だけでなく、あらかじめ過半数組合等からの意見聴取の機会を設ける必要があることには留意が必要です。
また、子の看護休暇及び介護休暇について、勤続6月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みが廃止されるため、当該仕組みを規定している企業は改正内容を踏まえた労使協定の締結が必要です。さらに、労使協定により、勤続1年未満の労働者などを2(1)のアに記載の措置の適用除外とすることを希望する企業も、当該内容に沿った労使協定の締結が求められます。
(2)個別周知・意向確認等の措置
育児休業等に関する個別周知・意向確認等(2(1)のア及びカ)と、介護休業等に関する個別周知・意向確認等(2(3)のア及びイ)について、具体的な内容や方法等の検討をする必要があります。
(3)公表義務等への対応
従業員数300人超の事業主は、年1回の育休取得状況の公表に向けて、公表事項や公表方法等について確認を行う必要があります。また、従業員数100人超の事業主は、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定時の育児休業の取得状況等に係る状況把握・数値目標の設定に向けて、社内の育休取得状況等の確認を行う必要があります。

4.最後に
前述のとおり、企業では、今回の改正に応じて様々な対応が求められます。今後、厚生労働省から公表されることが予想される就業規則例や書式、ガイドライン等も踏まえつつ、必要に応じて専門家にもご相談いただきながら対応を進めていくことをお勧めします。

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