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新たな手続きが必要となった裁量労働制

2024/03/30

(執筆者:弁護士 渡辺海成)

【Q.】
当社では、専門業務に従事する労働者について、裁量労働制の導入を検討しています。令和6 年4 月1 日から裁量労働制の導入にあたっての手続きが変更されると聞きました。具体的にはどのような手続きが必要になるのでしょうか。

【A.】
1.はじめに
近年は、業務遂行の方法を労働者の裁量に委ねざるをえない業務が増加しています。
それらの業務を担う労働者(以下「対象労働者」)の労働時間について、一般労働者と同様に規制することは、使用者・労働者の双方の立場から見て不適切であることから、労働基準法は、そのような対象労働者の労働時間について柔軟化を図るべく、実際の実労働時間ではなく、協定で定めた労働時間(以下「みなし労働時間」)を労働したものとみなす裁量労働制の制度を規定しています。今般の改正により令和6 年4 月1 日から、裁量労働制の導入のために新たな手続きが必要となりました。
そこで今回は、裁量労働制の導入に必要な手続きについてご説明します。なお、裁量労働制には、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2 種類がありますが、本稿では専門業務型裁量労働制についてご説明します。

2.専門業務型裁量労働制の導入に必要な手続き
専門業務型裁量労働制を導入するには、労使協定を書面により締結した上で、所轄の労働基準監督署(以下「労基署」)に届け出ることが必要でしたが、今般の改正により、労使協定において新たな協定事項(下線部分)が追加され、労使協定の締結後には対象労働者から個別に同意を得ることが必要となりました。
(1)労使協定事項
①制度の対象となる業務
②みなし労働時間
③対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が対象業務に従事する労働者に対し具体的指示をしないこと
④対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置
⑤対象労働者からの苦情の処理のために実施する措置
制度の適用にあたって労働者本人の同意を得ること
制度の適用にあたって労働者が同意しなかった場合に、不利益な取り扱いをしないこと
制度の適用に関する同意の撤回の手続き
⑨労使協定の有効期間
⑩健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況同意及び同意の撤回の労働者ごとの記録を協定の有効期間及びその期間満了後5 年間(当面の間は3年間)保存すること
※参照:厚生労働省ホームページ「裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です」
なお、すでに導入されている事業場では、令和6 年3 月31 日までに改正後の内容に適合する労使協定を締結し、労基署に届出をする必要がありますので、ご注意ください。
(2)同意
専門業務型裁量労働制を適用するにあたって、使用者は、労使協定に従い、労働者からの同意を取得することが必要になりました。同意は、労働者の自由な意思に基づくものである必要があり、同意が労働者の自由な意思に基づくものとは認められない場合には、労働時間のみなしの効果が認められないとされています。そのため、同意を取得するにあたっては、①対象業務の内容や労使協定の有効期間をはじめとする労使協定の内容等専門業務型裁量労働制の制度の概要(みなし労働時間を含む)、②同意した場合に適用される賃金・評価制度の内容、③同意しなかった場合の配置及び処遇について、明示した上で説明し、書面等の交付を受けることにより取得することが適切とされています。

3.おわりに
専門業務型裁量労働制を適正かつ効果的に導入するには、適切な協定事項の定め方や同意の取得、協定事項の実施が不可欠です。厚生労働省のホームページに、「専門業務型裁量労働制の解説」や「令和5 年改正労働基準法施行規則等に係る裁量労働制に関するQ&A」が掲載されておりますので、適宜ご参照ください。また、実際の事案においては、上記の資料を参照するだけでは判断が困難なこともありますので、場合に応じて専門家に相談することをご検討ください。

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