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『更新料特約と消費者契約法』

2009/09/15

(執筆者:弁護士 西堀祐也)
【Q.】更新料特約は無効になるのですか?
弊社は、不動産賃貸業を営んでおります。先日、建物の賃貸借契約における更新料特約を無効とする判決が出されたそうですが、どのような内容なのでしょうか。また、判決を受けて、弊社はどのような対応を取るべきでしょうか。
【A.】
1.更新料について
更新料とは、賃貸借契約の期間が満了し契約が更新される際に、賃借人から賃貸人に支払われる金員をいい、更新料の支払いを定めた特約を「更新料特約」と呼びます。更新料は、主に首都圏や京都などにおける慣行として定着しているとみられ、契約更新後の物件の使用期間にかかわらず、退去時に賃借人に返金されないのが一般的です。
2.更新料特約と消費者契約法
しかし今回、「消費者契約法」の観点から、更新料特約の効力が争われました。
「消費者契約法」において、「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約(2条3項)をいいます。個人は、事業として又は事業のために契約の当事者となる場合を除き「消費者」にあたり(同1項)、法人その他の団体(及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合の個人)は「事業者」にあたることから(同2項)、平成13年4月1日の消費者契約法施行後に、法人その他の団体が個人との間で締結した賃貸借契約や、施行後に更新された賃貸借契約には、同法が適用される可能性があります。
消費者契約法の適用があることが前提ですが、更新料特約に関しては、同法10条の規定する「消費者の利益を一方的に害する条項」に照らして、特約が無効とならないかが問題となっています。
3.両判決の概要
この点につき、京都地裁は、平成21年7月23日判決において、更新料には、�@更新拒絶権放棄の対価、�A賃借権強化の対価、�B賃料の補充、�C中途解約権の対価、という要素があり、合理性があるという家主側の主張を退けました。そして、賃借人に対して具体的かつ明確に更新料負担の説明がされ、賃借人がその内容を認識した上で合意がされていない以上、信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものだとして、更新料特約は消費者契約法10条に該当し、無効であるとの判断をしたのです。(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090729130229.pdf_ (※1)、控訴中)
また、大阪高裁も、平成21年8月27日判決において、消費者契約法が施行された後に更新された契約について、消費者契約法10条により更新料特約が無効であるとの判断をし、新聞各紙で報道されるなど注目を集めています(朝日新聞H21.8.28記事)。
4.判決への対応
大阪高裁判決は、今後、事業者が、更新料相当額を収入として消費者から得ようとするのなら、その分を上乗せした賃料を設定するなどして、消費者に負担額を明確・透明に示すことが求められると指摘しています。報道によれば、同判決に対して家主側は上告しており、最高裁の判断が待たれるところですが、本年9月1日に消費者庁が発足するなど、消費者保護は社会的な趨勢となっています。
そうした中、貴社におかれては、最高裁の判断を注視しつつも、賃借人に対する費用負担の説明をより具体的かつ明確にするとともに、更新料相当額を賃料に上乗せする方法を取るなどして、更新料徴収の見直しを検討する必要があるでしょう。
※1 裁判所ウェブサイトのURL
(以上)

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