TOPICS

トピックス・法律情報

『取締役の退任と保証契約について』

2009/10/01

(執筆者:弁護士 佐藤竜一)
【Q.】退任後も保証債務は続きますか?
私はある会社の取締役をしていますが、会社が金融機関から借り入れる債務や、会社が取引先に対して有する一切の債務につき、保証期間、限度額を特に定めない根保証契約を10年以上前に締結しました。
今般、都合により取締役を退任することになりましたが、私の保証債務は取締役退任に伴ってなくなるのでしょうか。保証債務が残ったままだとすると、今後、債務が増えていくのではないか心配です。
【A.】
1.はじめに
保証契約は、債権者と保証人との契約なので、たとえ取締役を退任しても、特約等がないかぎり、保証債務を免れないのが原則です。もっとも、相談にあるような保証期間、限度額の定めのない根保証契約については、保証人の責任が過酷になることが考えられるため、以下のように法律上の手当てがなされます。また、保証人の責任が限定されるよう検討されているところです。
2.金融機関からの借入金の保証について
平成16年に民法が改正され(施行日平成17年4月1日)、一定の範囲に属する不特定の債務を主債務とする保証契約のうち、主債務の範囲に金銭の貸渡し、または手形割引を受けることによって負担する債務が含まれている場合(以下「貸金等根保証契約」)については、保証人保護の規定が設けられました。例えば、極度額を書面等で定めなければ、保証契約自体が無効になるとされています(民法465条の2第2項、3項)。
本件のように、金融機関との間で交わした根保証契約は、「貸金等根保証契約」に該当するものと考えられますが、法改正以前に締結された契約については、改正法規定の適用を受けませんので、極度額の定めがなくても有効です。
ただし、改正法の経過規定により、施行日から3年後(平成20年3月31日)が元本確定期日と定められています。したがって本件の場合は、既に元本確定期日が到来しており、これ以降に発生した主債務については保証人として責任を負うことはありません。責任を負うのは、平成20年3月31日以前であり、この時点の主債務の元本及び遅延損害金等を確認しておけばよいことになります。
3.取引先に対する会社債務の保証について
取引先との根保証契約における主債務の範囲に貸金等債務が含まれていなければ、改正法及び経過規定の適用は受けません。そこで、取締役を退任することを理由として、新取締役に保証人を交代してもらうよう取引先と交渉することになります。もっとも、取引先が保証人の交代に応じないことも考えられるでしょう。
そこで、将来に向かって保証契約を解約できないかが問題となります。本件のように期間の定めのない保証契約については、保証契約締結後、相当期間が経過することにより、保証人が将来に向かって一方的に解約権を行使できると学説上一般的に考えられ、裁判例(大判大14.10.28民集4巻656頁)でも、このような解約権行使が認められているケースが存在します。
本件においては、取締役という地位を有するために根保証契約を締結したと考えられますので、取締役退任という付加的事情も勘案すると、その他具体的事情如何によっては、解約権行使が認められる場合もあると考えられます。
取引先が任意の保証人交代に応じてくれない場合には、内容証明等により、取引先に対して保証契約の解約通知をすることを、検討してみてはいかがでしょう。
(以上)

ACCESS 所在地
弁護士法人 三宅法律事務所  MIYAKE & PARTNERS

大阪事務所 OSAKA OFFICE

〒541-0042
大阪市中央区今橋3丁目3番13号
ニッセイ淀屋橋イースト16階
FAX
06-6202-5089

東京事務所 TOKYO OFFICE

〒100-0006
東京都千代田区有楽町1丁目7番1号
有楽町電気ビルヂング北館9階
FAX
03-5288-1025