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『反社会的勢力との隔絶』

2010/09/01

(執筆者:弁護士 山畑博史)
【Q.】弊社は、建設資材の製造及び販売を営む会社です。最近、「反社会的勢力との隔絶」という話をよく耳にするのですが、弊社のような中小企業にとっても、関係があるのでしょうか。
【A.】
1.反社会的勢力との隔絶を巡る動き
平成19年6月、政府は、反社会的勢力(以下「反社」)による企業への被害を防止するための基本的な理念や具体的な対応を取りまとめ、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(以下「政府指針」)として公表しました(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hanzai/dai9/9siryou8_2.pdf)。
この政府指針を契機に、金融庁が、監督指針等を通じて銀行等の金融機関に反社との隔絶を求め、あるいは、証券取引所が、上場審査における反社関与の有無についての審査を厳格化するなど、各界で政府指針を押し進める動きが広がり、反社との隔絶に向けた取り組みが活発化してきました。
最近、日本相撲協会において、暴力団との関わりが問題となった一連の事件がありましたが、この件に対する社会的な非難は、反社との隔絶を巡る近年の動きとも無関係ではないと思われます。
2.企業における具体的対応
反社との隔絶に向けた取り組みは、企業防衛やコンプライアンスの観点からも、必要不可欠な要請として認識されています。金融機関や大企業を中心として、社内規定や対応マニュアルの整備、自社や業界団体を通じたデータベースの構築など、反社と隔絶するための体制整備が図られてきました。
特に金融機関では、反社との隔絶の要請が強いこともあって、業界を挙げた取り組みが進められています。現在では多くの金融機関において、各種約定書に「暴力団排除条項」(反社の関与が判明した場合等に契約を解除するなど、反社を取引から排除する趣旨の条項)が導入され、また、反社に係る情報収集やデータベースの構築も積極的に推進されているようです。
3.中小企業への影響
政府指針は、あらゆる企業を対象としており、中小企業もその例外ではありません。実際、中小企業が反社の標的となり、被害を受けるリスクは決して少なくないのです。警察庁が平成19年に全国の建設業者を対象に行ったアンケートによると、約3割の業者が、過去1年内に不当要求を受けたことがあるという結果も出ています。最近、大企業などでは体制整備が整いつつあるので、むしろ、体制整備が遅れがちな中小企業が反社の標的となるリスクが高いと考えられます。
また、自社が反社ではなくとも、何らかの形で反社が経営等に関与し、あるいは、反社に資金提供がなされているような場合などは、反社との関わりによって、金融機関等から借入等の取引を縮小・停止され、事業遂行に多大な支障が生じるリスクもあります。
従って、中小企業においても、反社との隔絶は非常に重要な問題であり、そもそも反社と関係を持たないよう注意することが必要です。また、万が一、反社との関係が生じてしまった場合でも毅然とした措置が取れるよう、平素から、情報収集を怠らず、社内体制の整備を進め、警察署・暴力追放運動推進センター・弁護士といった外部専門家と連携できる体制を整えておくことが重要になるでしょう。
(以上)

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