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『企業の責任が明確化!廃棄物処理法の改正』

2010/12/17

(執筆者:弁護士 岸野 正)

【Q.】
私が経営する建設会社は、工事現場に下請けで入ることが多いのですが、工事の規模によっては元請けになることもあります。
今年、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が改正され、元請業者の責任が明確化されたそうですが、その具体的な内容について教えてください。

【A.】
平成22年5月19日、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の一部を改正する法律が公布されました。政省令の改正とあわせて、平成23年4月1日に施行される予定です。今回の改正は、廃棄物の排出事業者による適正な処理を確保するための対策強化、排出抑制の徹底等を図ることを目的としています。

これまで建設業では、元請業者、下請・孫請業者等が存在し、事業形態が多層化・複雑化しており、個々の廃棄物について誰が処理責任を有するかが不明確なことが問題となっていました。そこで改正法では、建設工事(解体工事を含む)に伴い生じる廃棄物の処理について、元請業者を「排出事業者」と明記して、この責任を明確化しました(第21条の3第1項)。
したがって、元請業者は建設工事に伴い生じる廃棄物全体について処理責任を負い、自ら適正に処理し、または適正に処理を委託しなければなりません。また、元請業者が排出事業者となるため、下請負人は廃棄物処理業の許可がなければ当該廃棄物の運搬または処分を行うことはできません。

ただし、以下の例外規定があります。
�@下請負人が産業廃棄物を保管する場合、同条第2項に定める産業廃棄物保管基準の遵守等の規定の適用にあたっては、元請業者だけでなく下請負人も排出事業者として責任を負う
�A下請負人が廃棄物(環境省令で定める一定の少量のものに限る)を書面による請負契約に基づき自ら運搬する場合、廃棄物処理業の許可なく運搬を行えるが、同条第3項に定める処理基準の遵守等の規定の適用にあたっては、下請負人のみが排出事業者として責任を負う
�B下請負人が廃棄物の運搬または処分を他人に委託する場合、同条第4項に定める適正な運搬・処分委託先の確保等の規定の適用にあたっては、下請負人のみが排出事業者として責任を負う

なお、例外規定に該当する場合でも、同条各項に定める規定以外は、元請業者が排出事業者となるので注意が必要です。
同条第2項及び第4項は、排出事業者でも廃棄物処理業者でもない下請負人に対しては廃棄物処理法上の規制が課せられないこととなるため、不適正処理を助長しないよう改めて必要な規制を課すこととしたものです。
したがって、工事現場に元請けで入る場合だけでなく、下請けで入るとしても、自ら産業廃棄物を保管し、環境省令で定める廃棄物を運搬し、または廃棄物の運搬・処分を委託するような場合には、排出事業者としての責任を負います。

この他の主な改正内容として、次のようなものが挙げられます。
�@産業廃棄物を事業所外で保管する際の事前届出制度を創設したこと(第12条第3項、第12条の3第3項)
�A委託者に産業廃棄物処理状況に関する確認努力義務を定めたこと(第12条第7項、第12条の2第7項)
�B従業員等が不法投棄等を行った場合に、事業主に課される罰金を3億円以下(現行1億円以下)まで引き上げたこと(第32条第1項1号)
�C多量排出事業者に対する産業廃棄物の減量等計画の作成・提出義務違反に罰則規定(20万円以下の過料)を創設したこと(第33条) 等

環境省のホームページにて改正法の詳細(http://www.env.go.jp/recycle/waste_law/kaisei2010.html)を確認のうえ、来年の施行に向けて適正な廃棄物処理手続きがなされるよう、対応が必要です。

(以上)

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