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『個人債務者の私的整理に関するガイドライン』

2011/11/28

(執筆者:弁護士・公認会計士 豊田孝二)

【Q】
 私は個人事業主ですが,東日本大震災の影響を受け,事業に係る債務を返済するのが極めて厳しい状況になっております。
 現在,「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」の利用を考えておりますが,その内容について教えてください。
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【A】
 1.ガイドライン策定の経緯
東日本大震災の影響を受け,住宅ローンを借りている個人や事業性資金を借りている個人事業主等が,今後,これらの既往債務の負担を抱えたままでは再スタートが困難と考えられることから,金融機関関係団体の自主的自律的な準則として,平成23年7月15日に「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」(以下「本ガイドライン」)が策定・公表されました。なお,本ガイドラインは,同年8月22日から運用が開始されています。
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2.対象となりうる債務者
本ガイドラインによる債務整理を申し出ることができる個人債務者は,一定の要件を充たす必要があり,その主な要件として以下のようなものが挙げられています。

�@住居・勤務先等の生活基盤や事業所・取引先等の事業基盤などが東日本大震災の影響を受けたために,住宅ローン・事業性ローンその他の既往債務を弁済できないこと,または近い将来において弁済できないことが確実と見込まれること
�A弁済について誠実で,その財産状況を対象債権者に対して適正に開示していること
�B東日本大震災発生前に,対象債権者に対して負っている債務につき,期限の利益喪失事由に該当する行為がなかったこと(ただし,当該対象債権者の同意がある場合はこの限りでない)
�C本ガイドラインによる債務整理を行った場合に,破産手続きや民事再生手続きと同等額以上の回収を得られる見込みがあるなど,対象債権者にとっても経済的な合理性が期待できること
�D債務者が事業の再建・継続を図ろうとする場合は,その事業に事業価値があり,対象債権者の支援により再建の可能性があること
3.手続き
本ガイドラインに基づく私的整理の手続きの流れの概要は以下の通りです。
�@債務者は,すべての対象債権者(対象債権者の範囲は,原則として金融機関等の金融債権者とされる)に対して,同じ日に,本ガイドラインによる債務整理の申し出を行い(この申し出時から,債務者による一定の資産の処分等及び対象債権者による債権回収等が禁止される),その後直ちに,財産目録等の必要書類を提出する
�A債務者が本ガイドラインに則って弁済計画案を作成する
�B第三者機関である「個人版私的整理ガイドライン運営委員会」の登録専門家が,弁済計画案が本ガイドラインに適合していること等について報告書を作成する
�C債務者が弁済計画案及び報告書につき対象債権者に提出・説明等を実施する
�D対象債権者が弁済計画案に対する同意・不同意を表明するその後,対象債権者全員の同意があれば,弁済計画が成立します(協議しても全員の同意が得られない場合は,弁済計画は不成立となり,同手続きは終了する)。
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4.留意点
「東日本大震災の影響を受けた」とは,平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う原子力発電所の事故による災害その他これに関連する災害(長野県北部地震等の続発地震による影響も含まれる)によって,地震・津波により家屋・事業所が倒壊損壊または流出したといった直接的な影響のほか,取引先や顧客が被災したことにより売上が減少したといった間接的な影響も含むとされています。
ちなみに,対象は個人の債務者に限定されます。法人は私的な債務整理に関して,私的整理に関するガイドラインや事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)等の各種準則が存在することから,対象外となります。

※詳細やQ&Aは,一般社団法人全国銀行協会HP(http://www.zenginkyo.or.jp/news/2011/07/15150001.html)でご確認ください。
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