TOPICS

トピックス・法律情報

『従業員に裁判員選任通知が来た場合の対応』

2012/12/17

(執筆者:弁護士 内芝良輔)

【Q.】
弊社は従業員20名を雇用して製造業を営んでおりますが、今般、営業担当の従業員から、裁判員裁判の呼出状が届いたとの相談を受けました。弊社としては、従業員が裁判員に選ばれた際にはこれをサポートする方針ですが、今回は審理期間が50日と長く、当該従業員は仕事に支障が出るとして辞退を希望しています。このような場合に、辞退は可能なのでしょうか。
また、参加する場合に弊社が注意すべき事項はあるでしょうか。_

【A.】
1.はじめに
裁判員裁判は平成21年5月にスタートし、丸3年が経過しました。その中で、審理が長期にわたった場合の裁判員への負担が大きいことが、今後の検討課題として挙げられています。企業に勤める方の多くは、長期の審理による業務への支障を心配し、辞退を希望することも多いようです。
今回は、このような場合の辞退の可否や従業員が裁判員裁判に参加する場合の会社としての対応について、ポイントを説明したいと思います。

2.辞退の可否について
法律上、仕事を理由とする辞退については、「その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがある」場合に認められています。そして、これに該当するかどうかは、�@裁判員として職務に従事する期間、�A事業所の規模、�B担当職務の代替性、�C予定される仕事の日時を変更できる可能性などの観点から判断されますが、最終的には個々の裁判所の判断となります。
今回のご相談についても最終的には当該裁判所の判断に委ねられますが、御社の規模が大きくないこと(�A)に加えて、審理期間が50日と長く、当該従業員が約2ヶ月不在となること(�@)から、従事する事業への影響が大きいと判断され、当該従業員が辞退を希望する場合には、辞退が認められる可能性が相当程度あると思われます(裁判所も、審理期間が長期にわたる案件については、数百名へ呼出状を送付しており、辞退についてある程度柔軟に考えていると推測されます)。

3.従業員が裁判員裁判に参加する場合の対応
まず、業務への影響の大きさ等に関わらず、従業員が裁判員になることを希望する場合には、会社はこれを尊重しなければならず(労働基準法7条)、辞退を勧めたり、裁判員となった従業員を人事考査等で不利に扱ったりすることは許されません(裁判員法100条)。
また、従業員が裁判員として刑事裁判に関与する場合、その審理期間中、当該従業員は会社を休むことになります。この休暇については、公職に就く際の休暇に関する就業規則上の規定を裁判員にも適用して対応する方法や、裁判員休暇制度を新設する方法が多く利用されています。
そして、裁判員を務めるための休暇を有給とするか無給とするかについては、法律上の定めはなく、就業規則で定めることにより無給とすることも問題はありませんが、実際には有給としている会社が多いようです。
なお、裁判員となった従業員に対して裁判所から支払われる日当について、これを会社に納付するように義務付けることは、当該休暇について会社から支払われる給与が裁判所から支払われる日当の額以上であるような一定の場合を除いて、不利益的取扱いを禁止した裁判員法第100条に違反することとなりますので、注意が必要です。_

ACCESS 所在地
弁護士法人 三宅法律事務所  MIYAKE & PARTNERS

大阪事務所 OSAKA OFFICE

〒541-0042
大阪市中央区今橋3丁目3番13号
ニッセイ淀屋橋イースト16階
FAX
06-6202-5089

東京事務所 TOKYO OFFICE

〒100-0006
東京都千代田区有楽町1丁目7番1号
有楽町電気ビルヂング北館9階
FAX
03-5288-1025