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『債権回収のための支払督促手続の活用』

2013/03/18

(執筆者:弁護士 西堀祐也)

【Q.】
当社は製造業を営んでいますが、支払期限が過ぎても売掛金を支払ってくれない取引先があります。未払額が数百万円になっており、社長に再三催促し、内容証明も送りましたが、一向に支払ってくれません。
裁判所から督促状を送ってもらう手続があるそうですが、利用を検討したいと思っています。ポイントを教えてもらえないでしょうか。_

【A.】
1.督促手続とは
貸金、立替金、売買代金などの金銭債務を相手方(債務者)が支払わない場合に、申立人(債権者)の申立てだけに基づいて簡易裁判所(書記官)が支払を命じる文書(支払督促)の発付を行う簡易な裁判手続を「督促手続」といいます(民事訴訟法382条以下)。
督促手続には、主に以下のような利点と限界がありますので、それらを踏まえたうえで、利用を検討する必要があります。

2.利点
督促手続では、通常の訴訟と比較して、簡易・迅速・低額に債務名義(債務者の財産に対する強制執行の根拠となる文書)を取得できるという利点があります。
例えば、支払督促の申立てには、申立書を簡易裁判所(書記官)に提出する必要があるものの(持参、郵送のほか、オンライン申請も可能)、請求の趣旨及び原因の記載は簡潔でよく、申立書に証拠書類を添付する必要はありません。
また、通常の訴訟とは異なり、審理のための期日は開かれず、申立書に不備がなければ、速やかに支払督促が発令されます。支払督促の送達から2週間以内に、債務者から「督促異議」(後述)が出なかった場合、債権者は、30日以内に仮執行宣言申立てを行う必要があります。
そして、債務者への仮執行宣言付きの支払督促の送達後、債務者から督促異議の申立てがないままさらに2週間が経過すれば、支払督促は確定判決と同一の効力を有することになります。
そのうえ、支払督促の申立手数料は、請求の目的の価格に応じて算出された訴訟提起の手数料の2分の1とされており、訴訟よりも低額となっています。

3.限界
もっとも、督促手続には債務者の利益保護の観点から、以下のような限界があります。
例えば、支払督促の送達は、公示送達によることができないため、債務者が行方不明の場合には、督促手続の利用ができません。
また、支払督促が債務者に送達後、その確定前に債務者から「督促異議」が出れば、請求金額に応じて簡易裁判所(140万円以下)または地方裁判所(140万円超)での訴訟手続に移行します。したがって、債務者が債務の存在や金額を争っていて、督促異議が見込まれる場合には、この手続は適しません。債務者が分割払い等を希望して、督促異議を出すこともあります。
さらに、支払督促の申立ては、債務者の普通裁判籍の所在地(債務者の住所地等)を管轄する簡易裁判所(書記官)に対して行う必要があります(事前に管轄を合意していても同じ)。督促異議により訴訟手続に移行した際にも同じ管轄になりますので、債務者の住所地が遠方の場合には、督促手続を利用するかどうかを十分に検討する必要があります。

4.おわりに
支払督促を得ても債務者が従わない場合には、別途に強制執行手続を取って支払督促の内容を実現することになります。この点は、通常の訴訟で確定判決を得たときと変わりません。なお、督促手続で使用する書式と記載例は、裁判所のホームページ*に掲載されていますので、ご参照ください。
http://www.courts.go.jp/saiban/syosiki_siharai_tokusoku/siharai_tokusoku/index.html_

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