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『いわゆる消費税転嫁法について』

2013/07/19

(執筆者:弁護士 雑賀裕子)

【Q.】
消費増税に向けて、先ごろ、大手仕入業者が中小の納入業者に消費税の負担を迫ることを禁じたり、「消費税還元セール」と銘打った広告などを禁じる法律が成立したそうですが、法律の具体的な内容を教えてください。_

【A.】
消費税の納税義務者は事業者ですが、転嫁を通じて最終的には消費者が負担することが予定されています。平成26年4月からの消費税率の引き上げに際し、事業者が、消費税を円滑かつ適正に転嫁できるようにするため、平成25年6月5日に「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」が成立しました(同月12日公布、一部を除き同年10月1日施行。ただし、同法の規制の対象は、平成26年4月1日以降に供給する商品または役務について行われる転嫁拒否等の行為や転嫁を阻害する表示となります)。
本稿では、同法が定める特別措置のうち、主な2点をご紹介します。

1.消費税転嫁拒否等の行為の是正に関する特別措置
特定事業主(大規模小売事業主、特定供給事業主から継続して商品又は役務の供給を受ける法人事業主)が、特定供給事業者(大規模小売事業主に継続して商品又は役務を供給する事業主、個人事業主・資本金等の額が3億円以下である事業主等であって、特定事業主に継続して商品又は役務を供給する事業主)から受ける商品又は役務の供給に関して、以下の行為を行うことが禁じられます。
ア.減額・買いたたき
…商品もしくは役務の対価の額を減じ、又は通常支払われる対価に比して低く定めることにより、消費税の転嫁を拒むこと
イ.購入強制、役務の利用強制、不当な利益提供の強制
…消費税の転嫁に応じることと引き換えに、商品を購入させもしくは役務を利用させ、又は金銭・役務その他の経済上の利益を提供させること
ウ.税抜き価格での交渉の拒否
…商品又は役務の対価に係る交渉にて消費税抜き価格を用いる旨の申出を拒むこと
エ.報復行為
…特定供給業者が公正取引委員会等に対しこれらの行為に該当する事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取り扱いをすること
公正取引委員会・主務大臣・中小企業庁長官は、これらの行為の防止・是正のための指導・助言を行い、違反行為があると認められるときには、公正取引委員会において、必要な措置をとるよう勧告し、その旨公表します。

2.消費税の転嫁を阻害する表示の是正に関する特別措置
事業主において、消費税の転嫁を阻害する以下の表示をすることが禁じられます。
ア.取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示
…「消費税は当店が負担しています」など
イ.取引の相手方が負担すべき消費税に相当する額の全部または一部を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税との関連を明示しているもの
…「消費増税分値引きします」など
ウ.消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であってイ.に掲げる表示に準ずるものとして内閣府令で定めるもの
…「消費税相当分、次回購入時に利用できるポイントを付与します」など

これらの表示に対する指導・勧告等は内閣総理大臣等により行われます。
同法では、このほか、価格の表示に関する特別措置、消費税の転嫁及び表示の決定に係る共同行為に関する特別措置なども定められていますので、ご関心をお持ちの方は公正取引委員会HPなどでご確認ください。
また、今後、ガイドライン等が策定される予定もありますので、これらの動向にもご注意ください。_

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