TOPICS

トピックス・法律情報

商標制度、守れていますか?

2014/02/25

(執筆者:弁護士 竹村知己)

【Q.】
最近、音や色などを商標として登録できるような法改正が行われると聞いたのですが、そもそも現行の商標制度についての理解が曖昧です。商標制度の意義について、簡単に教えてください。

【A.】
1.はじめに
特許庁は先日、音や色、動きといったものを新たに商標として登録できるよう法改正を行うとの方針を発表しました。この法改正により商標の範囲が広がれば、言葉の壁を越えてさらに企業ブランドを商品やサービスに盛り込めるほか、コピー商品を排除する抑止力としての機能が期待できます。一方、自社で使用する標章を他者に先に登録されてしまい、商標権を巡る紛争に発展するというリスクもあり、注意が必要です。

2.商標とは
現行法における「商標」とは、�@文字、図形、記号、立体的形状のいずれか、�Aこれらを組み合わせたもの、�B�@ないし�Aに色彩が結合したもの(以下「標章」)であって、自己の業務に係る商品・役務について使用するものを言います(商標法2条1項。以下、記載のない場合は同法を指す)。
一定の要件を満たし商標登録が認められると、指定商品・指定役務につき登録商標を使用する権利を専有できます(25条)。また、商標権侵害に対して、後述のような救済策があります。

3.商標権侵害の基準
商標権侵害となるのは、登録された指定商品・指定役務と同一又は類似の商品・役務について、登録商標と同一又は類似する標章を使用する場合です。つまり、商品・役務が非類似であれば、他人の登録商標と同一又は類似の標章を使用しても商標権侵害になりません(ただし、防護標章登録されている場合は侵害となり得ます<64条、67条1号>)。
商標の類否は、外観、称呼、観念を全体的に考察し、取引の実情を考慮して、商品・役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるかを基準に判断されます(最判昭和43年2月27日)。また、商品・役務の類否は、当該商品・役務に同一又は類似の商標が付けられた場合に出所の誤認混同が生じるかにより判断されます(最判昭和36年6月27日)。
実務上、商標権侵害との関係では様々な点が争われますが、しばしば商標の「使用」に当たるかが争われます。一般に、形式的に2条3項各号が定める行為に該当しても、当該商標が出所を表示する機能を果たす態様で用いられていない場合には、商標の「使用」に当たらないと解されています(例えば、商標が単なるデザインとして用いられている場合、「使用」に当たらないことがあります)。
結局のところ、これらは事案ごとの個別的判断にならざるを得ません。

4.商標権侵害に対する救済策
仮に自社の登録商標を他人に無断で使用された場合、どのような対応が可能でしょうか。
第1に、商標権者として、�@当該商標を使用することの差止請求(36条1項)及び廃棄請求(36条2項)、�A謝罪広告等による信用回復措置請求(39条)のほか、�B損害賠償請求(民法709条、商標法38条)といった民事上の請求をすることができます。
第2に、商標権侵害をした者には刑罰が科せられることもあります。従業員等が業務として商標権を侵害した場合には、その個人のほか、法人についても刑罰が科される可能性がありますので(78条、78条の2、82条)、告訴を検討することも考えられるでしょう。

5.おわりに
標章は、自己の商品や役務であることを消費者にアピールできますが、商標登録することで初めて、排他的に利用できる“商標権”となります。他者の商標権を侵害しないよう注意するとともに、自社で使用する標章は、商標登録し、適正に管理することが重要です。

ACCESS 所在地
弁護士法人 三宅法律事務所  MIYAKE & PARTNERS

大阪事務所 OSAKA OFFICE

〒541-0042
大阪市中央区今橋3丁目3番13号
ニッセイ淀屋橋イースト16階
FAX
06-6202-5089

東京事務所 TOKYO OFFICE

〒100-0006
東京都千代田区有楽町1丁目7番1号
有楽町電気ビルヂング北館9階
FAX
03-5288-1025