TOPICS

トピックス・法律情報

集団訴訟のリスクも! 消費者裁判手続特例法の制定

2015/01/22

(執筆者:弁護士 荻野伸一)

【Q.】
集団的消費者被害回復のための特別な訴訟制度が導入されたと聞きましたが、どのような訴訟制度なのでしょうか。
また、この訴訟制度の導入によって、事業者の責任がこれまでよりも重くなることはありますか。事前に対策をとっておく必要はあるのでしょうか。

【A.】
1.消費者裁判手続特例法とは
「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」(以下「消費者裁判手続特例法」)が、平成25年12月11日に公布され、公布から3年以内に施行されることとなっています。
新しい訴訟制度のポイントを簡単に挙げておくと、まず、訴訟制度の対象は、消費者契約に関する、契約・不当利得・不法行為に基づく金銭的な請求であり(3条1項)、契約の目的以外のものに生じた損害や逸失利益、人身に生じた損害や精神的苦痛は対象外とされています(同条2項)。また、訴訟の被告となるのは、原則として消費者契約の相手方である事業者です(同条3項)。
したがって、この訴訟の被告となる可能性が高いのは、小売業者や不動産業者、サービス業者等、直接消費者と取引をしている事業者であり、商品の品質不良を理由とする商品代金の返還請求や、契約上の条項(例えば、事業者の責任を減免する条項)が不当であることを前提になされる請求が典型例になるものと予想されます。

2.手続の内容
消費者裁判手続特例法による手続の内容は、いわゆる「二段階型」であり、第一段階では、特定適格消費者団体が共通義務確認の訴えを提起し、対象となる債権や消費者の範囲および被告事業者の義務の存否に関する審理・判断が行われます。第二段階では、被告事業者に義務があることを前提に、倒産手続における債権確定手続に類似した構造の手続(簡易確定手続)が設けられています。
簡易確定手続が開始されると、第一段階の原告消費者団体が対象消費者に対する通知公告を行って手続への参加を募り(25条以下)、対象消費者の具体的事情を個別審理して、個々の請求権の存否及び損害額が確定されることとなります。
このような訴訟制度は、従来、費用倒れの危険等の理由から個々の消費者が訴えを提起することが難しかった消費者被害の回復を、集団的に行うための特別の手続きを定めるものにすぎません。つまり、事業者が消費者に対して負っている実体法上の義務を加重するものではありません。
もっとも、この訴訟の被告となること自体が事業者の評判に悪影響を与えることとなりますので、そのような事態を避けるべく、可能な範囲で対応を行うことが重要です。

3.事業者が行うべき対応
前述の通り、この訴訟の被告となる可能性が高いのは、小売業者や不動産業者等です。それぞれの対応例を以下にまとめました。
○小売業
例えば、インターネット等による通信販売では、消費者が商品を実際に手に取って購入するわけではありませんので、商品を受け取った後に、サイト上等に掲載されていた商品と違う等の苦情が生じる場合があります。この場合、複数の消費者から事業者の債務不履行であるとの主張がなされ、この訴訟の被告となる可能性があります。このような事態を避けるためには、販売商品の内容・仕様等をできる限りサイト上等に明記し、消費者からの苦情を踏まえ、適宜その内容を充実させていくことが必要です。
○不動産業
例えば、不動産賃貸業者の使用している契約書中に、建物賃借人(消費者)が契約期間に反して短期で解約を行った場合に高額な違約金を課す条項等の違約金条項がある場合、違約金を支払った複数の消費者から当該条項は無効なので違約金の取得は不当利得であるとの主張がなされ、この訴訟の被告となる可能性があります。このような事態を避けるためには、自社の使用している契約書の見直しを行っておくことが望ましいと考えられます。

ACCESS 所在地
弁護士法人 三宅法律事務所  MIYAKE & PARTNERS

大阪事務所 OSAKA OFFICE

〒541-0042
大阪市中央区今橋3丁目3番13号
ニッセイ淀屋橋イースト16階
FAX
06-6202-5089

東京事務所 TOKYO OFFICE

〒100-0006
東京都千代田区有楽町1丁目7番1号
有楽町電気ビルヂング北館9階
FAX
03-5288-1025