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経営効率化を図るとき〜「事業譲渡」と「会社分割」

2016/01/20

(執筆者:弁護士 西堀祐也)

【Q.】
主要事業へ注力するために、当社の事業の一部を取引先の会社に売却することを検討しています。方法として、事業譲渡と会社分割があると聞きましたが、どのような違いがあるのでしょうか?

【A.】
1.はじめに
会社の事業を他の会社に売却する方法としては、取引によって事業を譲渡する方法(事業譲渡)と、会社を分割して他の会社に移転する方法(会社分割)があります。なお、会社分割には、新規に設立する会社に事業を承継させる新設分割と、既存の会社に事業を承継させる吸収分割がありますが、以下では、そのうち吸収分割を念頭に置いています。

2.権利・義務等の承継
事業譲渡の場合、関係する権利・義務や契約上の地位は、契約ごとに個別に譲受人が承継することになります。そのため、譲受人に承継させる契約ごとに、契約の相手方から個別に同意を得る必要があります。同意が得られなければ、その相手方との関係では、権利・義務等は譲受人に移転されないことになります。
したがって、事業譲渡を実施する場合、同意を得なければならない先がどの程度あるのか、重要な取引先の同意を得られる見込みがあるのか、という点が重要となります。
他方、会社分割の場合、事業に関する権利・義務は、承継会社が包括的に承継することになります。そのため、契約の相手方から個別に同意を得る必要はありません。

3.債権者保護手続き等
事業譲渡の場合、債権者保護のための特別の手続きは不要です。
他方、会社分割の場合、分割会社と承継会社の双方において、会社法に規定されている債権者保護の手続きを踏む必要があります。つまり、知れたる(わかっている)債権者への個別催告や、官報への公告等が必要となります。株主保護の手続き等も必要です。
また、会社分割の方法で実施する場合、債権者保護の手続きを会社法の定める期間内に適切に実施していなければ、会社分割の登記を完了することができません。そのため、会社分割とする場合、スケジュールを確実かつ緻密に組む必要があります。

4.労働者保護手続き等
事業譲渡の場合、事業と一緒に労働者を承継させる場合には、労働者から個別の同意を得る必要があります。個別の同意を得られなかった労働者との労働契約は、譲受人に承継されません。
他方、会社分割の場合、労働者から個別の同意を得る必要はありませんが、事前の通知等の一定の労働者保護手続きを取る必要があります。また、一定の労働者には異議申立ての権利が認められており、当該労働者が期間内に異議申立てをした場合には、労働契約は承継されません。

5.課税関係
事業譲渡は取引行為であるため、譲渡代金には消費税が課税され、不動産を譲渡する場合には不動産取得税が課税されます。その他、法人税も課税されます。
これに対して、会社分割の場合には、消費税は課税されず、一定の要件を満たせば不動産取得税も課税されません。ただし、本件では、グループ会社間における組織再編とは異なり、税制適格要件を充足せず、法人税は課税されます。

6.まとめ
事業譲渡と会社分割のいずれを選択するかは、一つの観点だけでは決定できません。方法を選択した後にも価格や条件等、相手方と様々な調整が必要となりますので、事業の売却にあたっては専門家の助言を受けるのが賢明でしょう。

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