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コロナ禍における賃料の減額・支払猶予について

2020/12/01

(執筆者:深津雅央)
【Q.】
 コロナ禍の影響により、ビル等の賃料の支払いが困難となった場合に、賃料の減額や、支払猶予がなされるケースが生じていると聞きます。こうしたときの進め方や、留意点等について教えてください。
【A.】

1.はじめに
 コロナ禍が各種事業者の事業活動に対し、いつごろまで、どれほどの影響を及ぼすのかについては、未だ見通しが困難な状況にあります。こうした中、特にビルテナントを中心に、賃料の支払いの減額や、支払猶予がなされるケースが増えていることは、報道等でご存じの方々も多いのではないかと思います。
 そこで、本稿では、関連する行政機関の対応について触れた上で、こうした場合の流れや留意点について、説明します。
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2.各行政機関からの要請・通知等
 政府による緊急事態宣言が発出される直前の令和2年3月31日、国土交通省は不動産関連団体を通じ、賃貸用ビルの所有者など飲食店をはじめとするテナントに不動産を賃貸する事業を営む事業者に向けて、新型コロナウイルス感染症の影響により賃料の支払いが困難な事情があるテナントに対しては、その置かれた状況に配慮し、賃料の支払いの猶予に応じるなど、柔軟な措置の実施を検討するよう要請しました。
 また、国税庁は、賃料の減額が、例えば、次の条件を満たすものであれば、実質的には取引先等との取引条件の変更と考えられるため、その減額した分の差額については寄附金として取り扱われることはない旨のFAQをホームページ上で公表しています(令和2年4月30日更新)。

<条件>
�@取引先等において、新型コロナウイルス感染症に関連して収入が減少し、事業継続が困難となったこと、または困難となるおそれが明らかであること
�A賃料の減額が、取引先等の復旧支援(営業継続や雇用確保など)を目的としたものであり、そのことが書面などにより確認できること
�B賃料の減額が、取引先等において被害が生じた後、相当の期間(通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間)内に行われたものであること
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3.賃料の減額・支払猶予までの流れ
 前述のような各種行政機関の対応を受けて、大手のビルオーナーを中心に、入居するテナントに対し、賃料の減額や支払猶予に応じるので必要な場合には申し出てほしい旨の通知が積極的に発出されているようです。もっとも、オーナー側から積極的な通知等がなされていない物件であっても、テナント側から要請があった場合には、協議の上、柔軟な対応がなされているケースが多いようです。
 そのため、ビル等に入居されている事業者で、コロナ禍の影響により賃料の支払いに困難が生じている場合は、特にビルオーナーからの通知等がなくても、その旨を申し出て、賃料の減額や支払猶予について協議をしてみることをおすすめします。
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4.賃料の減額や支払猶予にあたっての留意点
●オーナー・入居者双方の留意点
 賃料の支払いに関する入居者への支援としては、主に、賃料の「減額」と「支払猶予」の2種類の方法が採られているようです。
 賃料の「減額」とは、文字通り、支払うべき賃料額そのものを一部免除することを意味します。例えば、月額賃料50万円を40万円に「減額する」という場合、減額分の10万円については、入居者側からみれば、以後、支払う必要はなくなりますし、オーナー側からみれば、以後、入居者に対し請求することはできなくなってしまいます。
 一方、賃料の「支払猶予」とは、支払うべき賃料額の全部または一部の支払期限を、将来のある時期に延ばすことを意味します。例えば、月額賃料50万円のうち10万円を「支払猶予する」という場合、猶予分の10万円については、入居者からみれば、延ばされた支払期限が到来すれば支払義務が発生しますし、オーナー側からみれば、延ばされた支払期限が到来するまでは請求できないものの、その期限が到来すれば、請求することができます。
 なお、賃料の支払いについて保証人を付している場合は、賃料の減額や支払猶予により、保証債務についても同様の減額や支払猶予がなされることになります。
 以上のことから、賃料の減額や支払猶予にあたっては、�@その措置が「減額」と「支払猶予」のいずれに該当するのか、�Aその措置が適用される期間は、いつからいつまでなのか、�B支払猶予の場合は、猶予された金額を、いつからいつまでの間に、いくらずつ支払っていくのか、を特に明確にする必要があります。
 また、「減額」と「支払猶予」の2つの措置を織り交ぜる場合は、それぞれの措置ごとに分けて記載するなどしてください。

●その他オーナー側の留意点
 前述の国税庁FAQの<条件>�Aに記載の通り、賃料の減額や支払猶予を書面により確認できることが求められますので、合意に関する書面の作成は必須です。また、コロナ禍により賃料の支払いに困難が生じていることを明らかにしておくため、入居者から一定の根拠資料を取得しておくことが望ましいと考えられます。入居者が行政等から金銭的支援を受けている場合には、その支援の内容を確認しておくことも必要でしょう。
 以上のような観点から、合意に関する書面の内容に問題がないかについては、あらかじめ弁護士・税理士等の専門家に確認してもらうことをおすすめします。

●その他入居者側の留意点
 オーナー側は上記のような点に特に注意を払うと考えられることから、賃料の減額や支払猶予を申し入れるにあたっては、入居者の事業がコロナ禍により(特に金銭的に)どのような影響を、どのような期間にわたって受けているのか、具体的に説明する資料を付けることで、協議がスムーズになると考えられます。
 また、支払猶予を行う場合は、将来の一定期間の賃料負担を増加させることにもなります。コロナ禍の解消の見通しが立ちづらい状況において、短期間の支払猶予を約束することについては慎重に検討した上で、オーナー側と相談することをおすすめします。

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