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個人情報の第三者提供に係る規制

2021/02/25

(執筆者:弁護士 八木康友)
【Q.】
 弊社では、個々の顧客に対して適切なサービスを提供するべく、顧客の氏名、連絡先、特徴等をまとめた情報を、コンピュータ上で一元的に管理しています。今後、関連会社との共同開発や業務委託等に際して、それらの情報を提供する必要が生じた場合に、具体的にどのような手続きを踏めばいいかわかりません。そこで、その具体的な方法及びその注意点について教えてください。
【A.】

1 はじめに
 企業の個人情報の取扱いに関しては、主に個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」といいます。)による規制が設けられており、同法は、同法2条1項で定義する個人情報を保護対象、同法2条5項で定義する個人情報取扱事業者を規制対象としております。しかし、顧客、株主、従業員などの個人情報を取得・管理している企業は、基本的に個人情報取扱事業者に該当するものと考えられますので、それらの個人情報の取扱いに関し、同法による規制を受けることになります。同法は、そのような規制の一態様として、個人情報の第三者提供に関し、第三者提供を行うための手続、第三者提供を行う際の手続を定めておりますので、新製品の共同開発や業務委託等に際して顧客に関する情報を外部提供する場合の手続について、以下、ご説明いたします。
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2 個人データの第三者提供を行うための手続について
 個人情報保護法23条1項は、個人データを第三者に提供するためには、法令に基づく場合、人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるときなど同項各号に定める場合を除いて、あらかじめ本人の同意を得なければならないとしています。
 ここでいう個人データとは、氏名、住所等の連絡先、性別、生年月日などの情報の組み合わせ等によって特定の個人を識別することが可能な情報(個人情報)であって、目次、索引などを付すことによってそのような情報を容易に検索できるように体系的に構成された情報を指し、コンピュータ上で管理している場合だけでなく、紙面で管理している場合も含まれます。ご質問にあった、コンピュータ上で一元的に管理している顧客の氏名、連絡先、特徴等をまとめた情報は、基本的に個人データに該当するものと考えられるため、あらかじめ本人の同意を得なければ第三者提供をすることはできません。
 しかし、あらかじめ本人の同意を得なければならないとする第三者提供からは、そもそも第三者への提供ではない同一事業者内での個人データの提供の場合のほか、利用目的の達成に必要な範囲内で業務の委託先に個人データを提供する場合やグループによる個人データの共同利用の場合などが除かれています(同法23条5項各号)。そのため、ご質問のように関連会社との共同開発や業務委託等に際して個人データを提供する場合、同号の要件に該当すれば、本人の同意を得ずとも個人データの第三者提供を行うことが可能となります。但し、グループによる共同利用の場合には、特定の者と共同して利用することなどの同法23条5項3号に規定されている事項について、あらかじめ本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置かなければならない点については、注意が必要となります。
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3 個人データの第三者提供を行う際の手続について
 個人情報保護法25条は、個人データを第三者に提供する際には、その提供元は、提供年月日、提供先などに関する記録を作成し、保存しなければならないとしています。他方で、同法26条は、提供先に対し、提供元の当該個人データ取得の経緯等に関する確認を行うとともに、提供年月日、その確認に関する事項などに関する記録を作成し、保存することを義務付けています。
 なお、これらの手続に関しても、上記2と同様に、利用目的の達成に必要な範囲内で業務の委託先に個人データを提供する場合やグループによる個人データの共同利用の場合には、行わなくてもいいものとされています。
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4 最後に
 個人データの第三者提供に関し、外国の事業者等との間で行う場合には、外国において定められている個人情報の保護に関する規制などの別の規制が適用される可能性が高いため、以上でご説明した手続きがあくまで国内における個人データの第三者提供に関するものである点については注意が必要です。
 また、同法については、個人情報の保護に関する国際的動向、情報通信技術の進展、それに伴う個人情報を活用した新たな産業の創出及び発展の状況等を勘案し、施行後3年を目途に見直しがなされることになっておりますので(同法附則12条参照)、その改正の動向については引き続き注視しておく必要があります。
 なお、個人情報の第三者提供を行う場合には、同法の法適用に関する具体的な法的判断が必要となる場面も出てくるものと思いますので、必要に応じて弁護士等の専門家にご相談いただくことをご検討ください。

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