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マイナンバー情報:社会保障分野(雇用保険等)におけるマイナンバー制度

2015/11/04

(執筆:渡邉雅之)
1 社会保障分野におけるマイナンバーの利用開始時期
 社会保障分野のうち雇用保険の届出書等に関しては、平成28年(2016年)1月から個人番号が記載されることになる予定です。これに対して、社会保障分野のうち、健康保険・厚生年金保険関連の届出書等に関しては、平成29年(2017年)1月から個人番号が記載されることになる予定です。
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○社会保障関連手続の施行時期

分野

主な届出書等の内容

施行日

雇用保険

以下の様式に「個人番号」を追加予定
・雇用保険被保険者資格取得届
・雇用保険被保険者資格喪失届等
以下の様式に「法人番号」を追加予定
・雇用保険適用事業所設置届等

平成28年1月1日分〜

健康保険・厚生年金保険

以下の様式に「個人番号」を追加予定
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
・健康保険被扶養者(異動)届等
以下の様式に「法人番号」を追加予定
・新規適用届等

平成29年1月1日分〜

(出典)厚生労働省作成資料
 なお、個人番号と基礎年金番号の連結は平成28年(2016年)1月になされる予定でしたが、平成27年(2015年)6月に日本年金機構による基礎年金番号流出問題が発生したことにより、番号法が改正され、セキュリティ対策が整うまでは、延期することになりました。

2 雇用保険における留意点[1]
 雇用保険については、平成28年(2016年)1月から個人番号の利用が開始しますが、以下の点に留意をする必要があります。
(1)事業主が個人番号を記載して提出する雇用保険手続
事業主が個人番号を記載して提出する雇用保険手続としては、次の手続きがあります。

・雇用保険被保険者資格取得届
・雇用保険被保険者資格喪失届・氏名変更届
・高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付申請書(※)
・育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書(※)
・介護休業給付金支給申請書(※)

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「高年齢雇用継続給付申請書」及び「育児休業給付金支給申請書」は、ハローワークにおいて、基本4情報のうち住所情報を有していないことから、被保険者番号と個人番号を紐付けるために個人番号を申請させることとさせています。
「(※)」の付いた手続きについては、事業主が提出することについて労使間で協定を締結した上で、できるだけ事業主に提出することとされています。これらの手続きについては、労使協定が締結されていない場合でも、ハローワークが労使協定の確認をしないため、事実上、事業主が申請をしている場合が多いですが、本来であれば認められないため労使協定を締結するのが望ましいです。
 在職している者(在職者)の個人番号の提出については、厚生労働省において現在検討中であり、平成28年(2016年)1月の時点では求めないこととされています。したがって、収集が必要となるのは、新たに入社する従業員や退職する従業員となります。
 
(2)個人番号の記載がない書類
 「高年齢雇用継続給付申請書」及び「育児休業給付金支給申請書」については、上記(1)のとおり、初回申請の際に個人番号を記載させることとしているため、2回目以降の申請の際には個人番号の記載を要しません。また、雇用保険被保険者離職証明書にも個人番号の記載欄はありません。
離職票−1の個人番号欄は離職者が記載することとされており、事業主はハローワークから交付された離職票−1(個人番号欄は空欄)を離職者に交付することになります。
雇用保険に関わる返戻書類(例えば、雇用保険被保険者資格取得届を提出した場合にハローワークから交付される雇用保険被保険者資格取得確認等通知書など)には個人番号は記載されません。
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(3)本人確認の要否
 雇用保険においては、手続頻度の高い届出について、届出の契機ごとに、個人番号を記入して提出することとしています(上記(1)・(2)のとおり必要となる手続きは限られています。)。
この場合、事業主が行う雇用保険手続の届出にあたり、個人番号カードの写しなど個人番号が確認できる書類を添付する必要はありません。
 番号法上の本人確認(同法16条)については、個人番号を取得する際に、番号確認と身元確認が必要となりますが、2回目以降は、番号確認に関しては、こうした手続きが困難であれば、初回に本人確認を行って取得した個人番号の記録と照合する方法でも差し支えないとされています。身元確認については、一度本人確認をすれば、「雇用関係にある者から個人番号の提供を受ける場合で、その者を対面で確認することによって本人であることが確認できる場合」として省略できると考えられます。
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(4)従業員が個人番号の提供を拒否した場合
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従業員から個人番号の提供を拒否された場合は、雇用保険手続の届出にあたって個人番号を記載することは、事業主においては法令で定められた(努力)義務であることについて理解を求めた上で、従業員から個人番号の提供を求めることとなります。
仮に提供を拒否された場合には、個人番号欄を空白の状態で雇用保険手続の届出をすることになります。個人番号の記載がないことをもって、ハローワークが雇用保険手続の届出を受理しないということはありません。また、ハローワークからの督促も予定されていません。
 個人番号の提供が受けられなかった場合であっても、理由書の提出や提供が受けられなかった理由等の説明は不要です。
 なお、国税分野では、従業員から個人番号の提供を受けられない場合は、提供を求めた経過等を記録、保存するなどし、単なる義務違反でないことを明確にすることが求められているので、雇用保険分野では求められないとしても事業主としてこのような記録を残しておく必要があります。
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(5)届出書等の様式
 新様式の帳票等の確定時期は、個人番号のほかに、外国人の届出に関する項目(氏名、在留期間等)のローマ字で行う等の様式の改正終了後を予定しており、改正後速やかに帳票等が入手できるよう、ハローワークへの帳票の配布や厚生労働省ホームページにおいて掲載されることを予定しています。
 なお、新様式の施行日である平成28 年1月1日の時点で、すでに交付されている旧様式については経過措置として利用が可能ですが、旧様式には個人番号欄が設けられておりませんので、所定の様式により個人番号を届出をする必要があります。
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(6)届出書を提出する際の留意点
個人番号については、厳重な管理が必要とされていますので、できるだけ電子申請による届出をすることとされています。併せて、平成28 年1月より、事業主が指定する者個人の個人番号カードを電子証明書として利用することが可能となりますので、積極的な利用が期待されています。
なお、郵便での届出を行う場合は、漏えい、紛失等の事故を防止するとともに、届出に係る履歴が確認できるような方法(例:書留郵便等)による届出をすることが要請されています。
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(7)個人番号が記載されている雇用保険手続の届出書類の保存年限
個人番号を記載する雇用保険手続は、全て届出・申請書の原本をハローワークに提出するものであり、事業主において写しを取り保管する義務はありません。このため、事業主の判断で写しを取り保管する場合には、十分な安全管理措置を講じる必要があります。
なお、返戻書類には個人番号は記載されませんが、雇用保険関係の書類は、従来どおり、雇用保険に関する書類は2年(被保険者に関する書類は4年)となります。
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3 労災保険関連手続について
 個人番号を記載して提出する労災保険手続としては、次の手続きがあります。

・障害補償給付支給請求書
・遺族補償年金支給請求書
・遺族補償年金、遺族年金転給等請求書
・傷病の状態等に関する届
・障害給付支給請求書
・遺族年金支給請求書
・年金たる保険給付の受給権者の住所・氏名、年金の払渡金融機関等変更届

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労働者災害補償保険制度においては、請求時の手続きに個人番号の記載を求めることとし、特別加入時の手続きには個人番号の記載は求めないこととしている。
労災保険の各種給付申請書(療養の費用、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、傷病補償年金 など)については、給付請求権は被災者(労働者)本人であり、本来は事業主が必要事項を証明し、被災者本人に申請書を渡し、その後、被災者本人が労働基準監督署へ書類を送付することになっているものの、一般的に本人が病院から証明をもらい、会社に提出し、会社が申請しているのが通常です。
 この点、厚生労働省の「労災保険給付業務における社会保障・税番号制度への対応に係るQ&A」[2]では、「労災年金の請求書などは、法令上、請求人が所管の労働基準監督署に直接提出することとなっていますが、請求人が自ら手続きを行うことが困難である場合には、事業主は、その手続きを行うことができるように助力しなければならないこととされています。しかし、このような場合であっても、個人番号を利用する労災保険手続については、事業主は番号法上の個人番号関係事務実施者とはならず、他制度の事務とは異なり、従業員などから個人番号を取得することはできません。このため事業主は、�@個人番号の提供を求めてはならず、�A特定個人情報(個人番号を含む請求書の内容)を収集、保管することはできません。」との回答がなされています。
 これにより、労災保険関係では、事業主が労働主に代わって、労災保険関係の手続を代理申請できないことになることになり、実務上の影響も大きいと思われます。もっとも、「労災年金の手続きにおける利用目的の明示などのマイナンバーの取扱いについては現在検討中です。」とされているので、今後、取扱いの変更がある可能性があります。
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4 終わりに
 社会保障分野に関するマイナンバー制度に関しては、厚生労働省からの情報提供が遅れており(例えば本人確認手続)、まだ十分に分からないところが多いです。健康保険・厚生年金保険に関する情報をはじめ、今後、公表される情報に注視していく必要があります。

[1]以下は、厚生労働省の「雇用保険業務等における社会保障・税番号制度への対応に係るQ&A」(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000093276.pdf)の記載を参考にしております。

[2]http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000101750.pdf

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