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【FinTech】仮想通貨交換業者に関する疑わしい取引の届出およびマネー・ローンダリングの手口(犯罪収益移転危険度調査書)

2017/12/05

【執筆者:渡邉雅之】

(連載)
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【FinTech】仮想通貨交換業者に関する疑わしい取引の届出およびマネー・ローンダリングの手口(犯罪収益移転危険度調査書)
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2017年(平成29年)11月30日に、国家公安委員会が、「平成29年 犯罪収益移転危険度調査書」を公表いたしました。

犯罪収益移転危険度調査書は、2016年10月に施行された「犯罪による収益の移転の防止に関する法律」(以下「犯収法」といいます。)の改正に基づき、国家公安委員会が、毎年、犯罪による収益の移転に係る手口その他の犯罪による収益の移転の状況に関する調査及び分析を行った上で、特定事業者その他の事業者が行う取引の種別ごとに、当該取引による犯罪による収益の移転の危険性の程度その他の当該調査及び分析の結果を記載した犯罪収益移転危険度調査書を作成し、これを公表するものとされているものです(犯収法3条3項)。

これは、FATFの第4次勧告に基づき求められる、国ベースの事業者のマネー・ローンダリングリスクの評価書に該当するものです。

2017年の犯罪収益移転危険度調査書で特に注目されていたのは、同年4月施行の資金決済に関する法律の改正により、仮想通貨交換業者が犯収法上の特定事業者として位置付けられ、取引時確認義務、確認記録・取引記録等の作成・保存義務、疑わしい取引の届出義務が課されたことにより、仮想通貨に関する取引のリスクがどう評価されるかでした。

同調査書では、仮想通貨の危険度について、「利用者の匿名性が高く、その移転が国際的な広がりを持ち、迅 速に行われるという性質を有することや、仮想通貨に対する規制が各国におい て異なることなどから、犯罪に悪用された場合には、当該犯罪による収益の追 跡が困難となる。また、実際、その匿名性を悪用し、不正に取得した仮想通貨 を仮想通貨交換業者を介して換金し、架空名義の口座に振り込ませていた事例 等があることも踏まえれば、仮想通貨は、犯罪による収益の移転に悪用される 危険性があると認められる。」としている。

もっとも、「危険度の低下に資する措置」としては、犯収法は、�@仮想通貨交換業者に対して、仮想通貨の交換を継続的に又は反復して行うこと等を内容とする 契約の締結(ウォレット開設契約の締結)、200万円を超える仮想通貨の交換、1 0万円を超える顧客等の仮想通貨を当該顧客等の依頼に基づいて移転させる行為 等に際しての取引時確認の義務及び確認記録・取引記録等の作成・保存義務を 課していること、�A取引時確認の結果、当該取引の態様その他の事情に加え、 本調査書の内容を勘案し、かつ、通常行う特定業務に係る取引の態様との比較 等を行って、当該取引において収受した財産が犯罪による収益である疑い又は 顧客等が犯罪収益等隠匿罪等に当たる行為を行っている疑いがあると認められ る場合における疑わしい取引の届出義務を課していること、�B他人になりす まして仮想通貨交換業者との間における仮想通貨交換契約に係る役務の提供を 受けること等を目的として、当該役務の提供を受けるために必要な ID、パスワ ード等の提供を受けること等を禁止していることを掲げている。
また、資金決済法においては、�@仮想通貨交換業者による報告書の提出義務や、必要に応じて行政機関が仮想通貨交換業者に 対して立入検査、業務改善命令等を行うことができることが規定されていること、�A仮想通貨交換業者の登録拒否事由、取消し事由として、「仮想通貨交換業を 適切かつ確実に遂行する体制の整備が行われていない法人」が掲げられていることを掲げていること、�B金融庁の事務ガイドラインにおいては、犯罪収益移転防止法に基づく取 引時確認等の措置に関する内部管理体制の構築に当たっての留意点も示され、 これらは登録申請時の「仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行するための体制 の整備」の要件に係る審査項目ともされているところであり、マネー・ローン ダリング等防止のための行政機関による指導等が行われる体制がとられていることを掲げtえいる。

仮想通貨交換業者による、2017年4月1日から10月1日までの間の仮想通貨交換業者による疑わしい 取引の届出件数は、170件であるとされている。これは新たに創設されたサービスであることに鑑みても件数としては多いと言える。
仮想通貨がマネー・ローンダリングに悪用された事例としては、「偽造の身分証明書を使い、仮想通貨交換所で架空名義のウォレットを開設 した上で、不正に入手した他人名義のクレジットカードを使って仮想通貨を 購入し、その後、同交換所で日本円に換金し、架空名義の口座に振り込ませ た事例」が紹介されている。_

(7) 仮想通貨交換業者が取り扱う仮想通貨
ア_ 現状
_ _ビットコイン等の仮想通貨は、物品を購入する場合等に、その代価の弁済の ために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方と して購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器等に電子的方法により記録されているものに限り、通貨及び通貨建資産を除く。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるものとされている。
_ _ 仮想通貨交換業を行うためには、資金決済法に基づく内閣総理大臣の登録を 受ける必要があるところ、平成29年10月1日現在、当該登録を受けている者の 数は11である。 仮想通貨は、インターネットを通じて電子的に取引が行われるなどの特徴を 有しており、実際、違法薬物の取引や児童ポルノのダウンロードに必要な専用 ポイントの支払いに仮想通貨が用いられていた事例がある。FATF は、平成27 年(2015年)6月に、仮想通貨に関するガイダンスを策定し、仮想通貨の利用 者の匿名性が高いこと、仮想通貨の移転が国際的な広がりを持ち、迅速に行わ れること等を指摘するとともに、各国に対して、仮想通貨と法定通貨の交換業 者に対してマネー・ローンダリング等対策に係る規制を課すことを求めている。
_ _ 危険度の低下に資する措置として、犯罪収益移転防止法は、仮想通貨交換業者に対して、仮想通貨の交換を継続的に又は反復して行うこと等を内容とする 契約の締結(ウォレット開設契約の締結)、200万円を超える仮想通貨の交換、1 0万円を超える顧客等の仮想通貨を当該顧客等の依頼に基づいて移転させる行為 等に際しての取引時確認の義務及び確認記録・取引記録等の作成・保存義務を課している。また、取引時確認の結果、当該取引の態様その他の事情に加え、 本調査書の内容を勘案し、かつ、通常行う特定業務に係る取引の態様との比較 等を行って、当該取引において収受した財産が犯罪による収益である疑い又は 顧客等が犯罪収益等隠匿罪等に当たる行為を行っている疑いがあると認められ る場合における疑わしい取引の届出義務を課している。さらに、他人になりすまして仮想通貨交換業者との間における仮想通貨交換契約に係る役務の提供を 受けること等を目的として、当該役務の提供を受けるために必要な ID、パスワ ード等の提供を受けること等を禁止している。
_ _ 同法に基づく監督上の措置に加えて、資金決済法においては、仮想通貨交換業者による報告書の提出義務や、必要に応じて行政機関が仮想通貨交換業者に 対して立入検査、業務改善命令等を行うことができることが規定されているほか、仮想通貨交換業者の登録拒否事由、取消し事由として、「仮想通貨交換業を 適切かつ確実に遂行する体制の整備が行われていない法人」が掲げられている。 また、金融庁の事務ガイドラインにおいては、犯罪収益移転防止法に基づく取 引時確認等の措置に関する内部管理体制の構築に当たっての留意点も示され、 これらは登録申請時の「仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行するための体制の整備」の要件に係る審査項目ともされているところであり、マネー・ローン ダリング等防止のための行政機関による指導等が行われる体制がとられている。

イ_ 疑わしい取引の届出
_ _ 平成29年4月1日から10月1日までの間の仮想通貨交換業者による疑わしい 取引の届出件数は、170件である。

ウ 事例
_ _仮想通貨がマネー・ローンダリングに悪用された事例として、
○ 偽造の身分証明書を使い、仮想通貨交換所で架空名義のウォレットを開設 した上で、不正に入手した他人名義のクレジットカードを使って仮想通貨を購入し、その後、同交換所で日本円に換金し、架空名義の口座に振り込ませた事例
がある。

エ 危険度
仮想通貨は、利用者の匿名性が高く、その移転が国際的な広がりを持ち、迅 速に行われるという性質を有することや、仮想通貨に対する規制が各国におい て異なることなどから、犯罪に悪用された場合には、当該犯罪による収益の追 跡が困難となる。また、実際、その匿名性を悪用し、不正に取得した仮想通貨 を仮想通貨交換業者を介して換金し、架空名義の口座に振り込ませていた事例等があることも踏まえれば、仮想通貨は、犯罪による収益の移転に悪用される 危険性があると認められる。

マスメディアにおいても以下のとおり、注目を浴びている。

仮想通貨悪用、半年で170件 資金洗浄疑いなど(日経新聞 2017年11月30日)

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