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2020.01.01
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Q&A「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ報告」 ~金融サービス仲介法制編~

金融審議会「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」(座長 神作裕之 東京大学大学院法学政治学研究科教授、以下「ワーキング・グループ」といいます。」)においては、令和元年(2019年)10月より、計7回にわたり、決済法制及び金融サービス仲介法制の在り方について、検討及び審議を行い、同年12月20日に「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」報告(以下「本報告書」といいます。)を公表いたしました[1][2]。同報告書は、「決済制度の見直し」と「新金融サービス仲介法制の創設」について示しています。本報告書を基に、2020年通常国会に資金決済に関する法律(以下「資金決済法」といいます。)の改正法案と新金融サービス仲介法制の法案が提出される見込みです。
本ニュースレターでは、本報告書で示された改正の内容のうち、「新たな金融サービス仲介法制の創設」に関して、Q&A形式で分かりやすく解説いたします。
 
Q&A決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ 報告書 (金融サービス仲介法制編)
(下記もご覧ください)
Q&A決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ 報告書(決済制度見直し編)
(全体取りまとめ版)
「Q&A「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ報告」

(金融審議会情報)
金融審議会「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」報告の公表について
金融審議会「決済制度及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」(資料・議事録)

執筆者:渡邉雅之
* 本ニュースレターに関するご相談などがありましたら、下記にご連絡ください。
弁護士法人三宅法律事務所
弁護士渡邉雅之
TEL 03-5288-1021
FAX 03-5288-1025
Email m-watanabe@miyake.gr.jp
 
 
Q1 新たに金融サービス仲介法制を創設が検討された理由について教えてください。
 
1 新たな金融サービス仲介法制を創設する理由
 情報通信技術の発展により、オンラインで円滑に金融サービスを提供することが可能となっています。
 例えば、スマートフォンのアプリケーションを通じ、自身の預金口座等の残高や収支を利用者が簡単に確認できるサービスを提供するとともに、そのサービスを通じて把握した利用者の資金ニーズや資産状況を基に、利用可能な融資の紹介や、個人のライフプランに適した金融サービスの比較・推奨等を行うなど、日常生活上の金融取引ニーズに応える新たなビジネスが展開されることが想定されます。
 他方で、このように複数業種(銀行・証券・保険)にまたがって多数の金融機関が提供する金融サービスを仲介しようとした場合、現行制度では、
① 銀行法における銀行代理業者、金融商品取引法における金融商品仲介業者、保険業法における保険募集人や保険仲立人といった業種ごとの規制が存在し、仲介しようとする分野に応じて複数の登録等が求められるほか、(仲介分野に応じた複数の登録等
② 特定の金融機関に所属することが求められており、多数の金融機関が提供する商品・サービスを仲介しようとする場合、所属金融機関それぞれから行われる指導に対応する必要があることから、(所属金融機関ごとの指導
 複数業種にまたがった仲介や多数の金融機関を相手方とする仲介を必ずしも念頭に置いていない面があり、事業者にとって負担が大きいとの指摘があります。
これを踏まえ、本ワーキング・グループでは、イノベーションを促進し、利便性のより高い金融仲介サービスを実現していく観点から、複数業種かつ多数の金融機関が提供する多種多様な商品・サービスをワンストップで提供する仲介業者に適した業種の創設について、制度の具体的な検討を行われました。

2 基本的な考え方
 複数業種かつ多数の金融機関が提供する多種多様な商品・サービスをワンストップで提供する仲介業者に適した制度を検討するにあたり、金融審議会 金融制度スタディ・グループ 「「決済」法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告≪基本的な考え方≫」(令和元年7月26日、以下「基本的な考え方」という。)においては、
  • 業種ごとの複数の登録等を受けずとも、新たな仲介業への参入により、複数業種をまたいだ商品・サービスの仲介を行うことを可能とすることワンストップの登録制
  • 新たな仲介業者には所属制を採用せず[3]、取扱可能な商品・サービスの限定、利用者資金の受入れの制限、財務面の規制の適用等により利用者保護を図ること無所属制
等に留意しつつ、制度の具体的な検討を進めていくことが適当であるとされています。
 本ワーキング・グループも、このような考え方を踏まえて、制度の具体的な検討を行われました。
 
〇既存の仲介業の参入規制の概要

(出所)金融審議会「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」(第3回)「参考資料」(2019年10月30日)
 
Q2 新たな金融サービス仲介業の業務範囲(①仲介先・仲介内容、②仲介行為、③取扱い可能な金融サービス)について教えてください。
 
【業務範囲】
1.仲介先・仲介内容
  • 預金等の受入れ、資金の貸付、為替取引を内容とする契約の仲介(銀行等と利用者の仲介)
※ 協同組織金融機関や貸金業者への媒介を含める
  • 有価証券の売買等の仲介(金融商品取引業者と利用者の仲介)
  • 保険契約の仲介(保険会社と利用者の仲介)
※ 十分なシステム体制等を備えている者は、電子決済等代行業を行うことができることとすることを検討
2.仲介行為
  • 「媒介」に限定し「代理」は認めない
3.取引可能な商品・サービス
  • 仲介にあたって高度な商品説明を要しないと考えられる商品・サービスに限定
(例:商品設計が複雑でないもの、日常生活に定着しているもの)
※特定預金等契約や特定保険契約とされている商品などを参考に、商品の特性に応じて検討
  • 商品の特性に応じ、取引金額や契約期間によっても限定
 
1.仲介先・仲介内容(①預金・資金の貸付け・為替取引、②有価証券の売買、③生命保険・損害保険の仲介)
 日常生活において生じる金融取引のニーズに応えるため、新たな仲介業者は、銀行・証券・保険の各分野における仲介を幅広く行えるようにすることが適当です。
 具体的には、銀行代理業・金融商品仲介業・保険募集人/保険仲立人の業務にならい、銀行分野の仲介としては、①預金等・資金の貸付け・為替取引に関する仲介、②証券分野の仲介としては、有価証券の売買等に関する仲介、③保険分野の仲介としては、生命保険・損害保険等に関する仲介を行えるようにすることが考えらます。
 なお、銀行分野の仲介については、複数の金融機関が提供するサービスの中から、利用者が自身に最も適したものを選択できるようにするため、銀行のみならず、協同組織金融機関や貸金業者への仲介も行えるようにすることが適当です。
 また、新たな仲介業に参入しようとする事業者には、仲介業務と電子決済等代行業に該当する業務とを併せ営むニーズがあると想定されます(具体的には家計簿サービスを提供する参照型の電子決済代行業を営む事業者)。このような事業を行おうとする事業者の手続上の便宜のため、新たな仲介業者のうち、電子決済等代行業者と同様に十分な情報処理システム等の業務遂行体制などを備えている者については、電子決済等代行業者としての登録を受けることなく、銀行法の行為規制に基づいて電子決済等代行業を行うことができることとすることが考えられます。
 
2.仲介行為(「媒介」のみ)
 一般に、「仲介」とは、他人のためにある事項について代理又は媒介することと解されています。このうち、「代理」は、仲介業者(代理人)の意思表示により契約当事者の間に直接法律効果が帰属する法律行為であるのに対し、「媒介」は、他人の間に立って、他人を当事者とする法律行為の成立に尽力する事実行為であるとされています。
 新たな仲介業者のビジネスモデルとしては、例えば、いわゆる家計簿アプリを通じて把握した資金ニーズや資産状況を基に、利用可能な融資の紹介及び送客や、個人のライフプランに応じ、顧客に適した金融商品・サービスの比較・推奨等を行うことが想定されます。
このようなビジネスを念頭に置けば、仲介業者を通じた多様な金融商品・サービスへのアクセスを確保する必要はあるが、必ずしも仲介業者が金融機関や顧客に代わって取引を成立させる必要はないと考えられます。
 これを踏まえ、新たな仲介業者の仲介行為として、「媒介」のみ認め、「代理」は認めないこととすることが適当です。
 
3.取扱可能な金融サービス(高度な送品説明を要しないと考えられる商品・サービス)
新たな仲介業者には所属制を採用しないため、商品・サービスを提供する金融機関(銀行、証券会社、保険会社等)による指導・監督や賠償責任の負担がなされるとは限りません。また、顧客の資産状況やライフプランに応じて顧客に適した金融商品・サービスの比較・推奨等を行うビジネスを念頭に置けば、商品設計が複雑な金融商品・サービスを仲介するニーズは大きくないと考えられます。
これらを踏まえ、新たな仲介業者には、商品設計が複雑でないものや、日常生活に定着しているものなど、仲介にあたって高度な商品説明を要しないと考えられる商品・サービスに限って取扱いを認めることが適当である。取扱可能な商品・サービスの限定にあたっては、銀行法・保険業法において特定預金等契約・特定保険契約とされている商品や、二種外務員の職務の範囲[4]などを参考に、商品の特性に応じた限定を設けることが考えられます。
また、保険契約には、支払事由の発生に対して無制限の補償や長期の保障・補償を約するものがあるが、このような高額・長期の保険契約の締結の仲介にあたっては、一般に、個々のリスクと顧客意向の見極めや商品内容等の顧客への説明を一層丁寧に行うことが重要となることから、商品性による限定に加え、商品の特性に応じて、保険金額や保険期間による限定を設けることも考えられます。
一方で、金融仲介サービスにおけるイノベーションの促進や利用者利便等の観点からは、法令上の制約が過度なものとならないよう留意する必要があります。
 
〇特定の金融商品を区分して取り扱う例

(出所)金融審議会「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」(第3回)「参考資料」(2019年10月30日)
 

 
〇新たな仲介業者が取扱可能な商品・サービスのイメージ

(出所)金融審議会「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」(第5回)「参考資料」(2019年11月26日)
 
 
Q3 新たな金融サービス仲介業の参入規制(①財産的基礎、②兼業規制、③その他)について教えてください。
 
【業務範囲】
1.財産的基礎
  • 保証金の供託等を求める
    • 保険仲立人と同程度の水準の供託を求めた場合、事業者にとって過度な参入障壁ともなりうるか
• 事業規模に応じて保証金の額を変動
2.既存の仲介業との兼業
  • 銀行・証券・保険それぞれの分野において、事業者の立場が混在しない形での兼業が可能
3.その他
  • 社会的信用、業務遂行能力等
 
1.財産的基礎
 所属制を採用する既存の仲介業においては、仲介行為に関して顧客に損害が生じた場合、原則として所属金融機関がその賠償責任を負うこととされていますが、新たな仲介業には所属制を採用しないことから、新たな仲介業者自らが賠償責任を負う前提で制度を検討する必要があると考えられます。このため、顧客の保護を図る観点から、新たな仲介業者の賠償資力の確保に資するよう、保証金の供託等を求めることが適当です。
 また、例えば、仲介業者のシステムトラブルによる顧客の損害の場合、多くの顧客に同様の損害が発生することが想定され、仲介業者の事業規模が大きくなれば賠償額も大きくなることがあると考えられます。これを踏まえ、新たな仲介業者に求める保証金の水準は、その事業規模に応じたものとなることが望ましいです。
 例えば、一定の額をベースに、前事業年度に得た手数料その他の対価の合計額の一定割合を加えた額の供託等を求めることが考えられます。
前述のとおり、保証金の供託等は、顧客保護の観点から望ましいものであるが、保証金の水準が高すぎれば、事業者にとって参入障壁ともなり得ます。保証金の水準を定めるにあたっては、新たな仲介業者の取扱可能な商品・サービスの範囲が限定されていることを踏まえつつ、顧客保護の観点と、事業者の参入によるイノベーションの促進及び利用者利便の向上の観点とのバランスに留意すべきです。
 
2.兼業制限
 新たな仲介業を創設することで、銀行・証券・保険の各分野において、①既存の仲介業者として仲介行為を行うこと、②新たな仲介業者として仲介行為を行うこと、がそれぞれ可能となります。仮に、銀行・証券・保険の各分野において、ある仲介業者が既存の仲介業と新たな仲介業の両方の許可・登録を受け、両方の立場で仲介行為を行いうることとした場合、仲介業者がいずれの立場でいかなる規制に基づいて仲介行為を行っているのか顧客に混同をもたらすおそれがあると考えられます。
 したがって、銀行・証券・保険の各分野において、仲介業者が複数の立場に立つことがないよう、既存の仲介業の許可・登録を受けている者については、当該分野において新たな仲介業としての仲介を認めないことが適当です。他方で、既存の仲介業と新たな仲介業を兼業した場合であっても、それぞれの立場で異なる分野における仲介を行う場合には、各分野における仲介業者の立場に重複が生じないため、兼業を認めることに問題はないと考えられます。
 このほか、既存の仲介業者は、公益に反する事業や仲介業務に支障を及ぼすおそれがあるものを除き、他の業務を行うことが認められており、新たな仲介業者についても、同様に広く兼業を認めることが適当です。
なお、金融機関(銀行・証券会社・保険会社等)が新たな仲介業を兼業すること又は子会社とすることについては、金融機関が既存の仲介業を兼業すること又は子会社とすることの可否にならって整理することが適当です。
 
〇新たな金融サービス仲介業と既存の仲介業の兼業について

(出所)金融審議会「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」(第3回)「参考資料」(2019年10月30日)
 
  
(出所)金融審議会「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」(第5回)「参考資料」(2019年11月26日)
 
 
3.その他
その他、既存の仲介業者に求められている社会的信用や業務遂行能力等の参入規制については、新たな仲介業者にも同様の規制を設けることが適当です。

 
 
Q4 新たな金融サービス仲介業の行為規制(①財産的基礎、②兼業規制、③その他)について教えてください。
 
1.総論
行為規制のうち、名義貸しの禁止や顧客に対する説明義務、業務運営に関する体制整備義務等、仲介する金融サービスによらず必要と考えられる規制については、新たな仲介業者が銀行・証券・保険のいずれの分野において仲介を行うかにかかわらず共通して求めていくことが適当です。
他方で、≪基本的な考え方≫に示されているように、例えば、仲介業者が、「資金供与」(「預金受入れ」)に関する仲介を行う場合と、「資産運用」に関する仲介を行う場合、「リスク移転」に関する仲介を行う場合とでは、利用者保護等の観点から必要とされる行為規制は当然にして異なると考えられる。このため、仲介業者が取り扱う商品・サービスの特性を踏まえ、必要なルールが過不足なく適用されることを確保する必要があります。
このように、仲介する金融サービスによらず必要と考えられる規制については、新たな仲介業者が銀行・証券・保険のいずれの分野において仲介を行うかにかかわらず共通して求め、金融サービスごとの特性に応じた規制については新たな仲介業者が取り扱う金融サービスに応じて課すことで、仲介業者の事業内容に応じたアクティビティーベースの規制体系となることが期待されます。
 
2.顧客資産の預託の受入れ
新たな仲介業者による仲介行為は「媒介」に限定されること、及び新たな仲介業者のビジネスとして、金融機関への送客サービスや、利用者が様々な金融商品・サービスを比較・検討した上で自身に最も適したものを選択できるサービス等が想定されていることにかんがみれば、新たな仲介業者の事業運営上、顧客資産の預託を受ける必要性は高くないと考えられます。
これを踏まえ、新たな仲介業者については、その行う業務に関して、顧客資産の預託の受入れを禁止することが適当です。
なお、新たな仲介業者が資金移動業等を兼業し、資金移動業者等として仲介業務に係る決済サービスを提供する場合など、他の規制により顧客資産の保全が適切に図られている業者として仲介業務に係る決済を併せ行うことは、妨げられるものではないと考えられます。
 

 
3.顧客情報の適正な取扱い
〇顧客の非公開情報の利用の制限

(出所)金融審議会「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」(第5回)「参考資料」(2019年11月26日)
 
新たな仲介業者は、銀行・証券・保険の各分野における仲介を横断的に行いうることから、顧客の資産状況等に関する様々な情報を保有しうる立場にある。新たな仲介業者が、保有する顧客の資産に関する情報を不適切に利用して様々な金融サービスの推奨を行えば、利用者の保護に欠ける仲介行為につながるおそれがあります。
既存の仲介業者については、顧客の利益を保護する必要性が高い場合について、仲介業務を通じて取得した顧客に関する非公開情報を、顧客の事前の同意を得ることなく、兼業業務に用いたり、親子法人等に提供したりすること等が禁止されています。
新たな仲介業者についても、①仲介行為を行う分野間(例:銀行分野における仲介業務を通じて取得した顧客情報を、証券分野や保険分野における仲介業務に用いること)、②兼業業務との間(例:仲介業務を通じて取得した顧客情報を、兼業業務に用いること)、③グループ会社等との間(例:仲介業務を通じて取得した顧客情報を、親子会社等に提供すること)のそれぞれにおいて、既存の仲介業者に対する規制を参考に、仲介業務を通じて取得した顧客に関する非公開情報の適正な取扱いの確保を求めることが適当です。
 
4.仲介業者の中立性
新たな仲介業には所属制を採用しないことから、金融機関と新たな仲介業者の関係は、法律上の義務に基づく指導関係から、業務上のパートナーとしての連携・協働関係となることが想定されます。このような仲介業者の中には、金融機関の側ではなく、顧客の側に立って仲介サービスを提供しようとする者も想定される。他方で、このような仲介業者が真に顧客の側に立って仲介サービスを提供しているか否かは、外観からは必ずしも明確ではありません。
既存の仲介業者については、法律上、“金融機関の委託を受けて”…を行う(又は“金融機関のために”…を行う)、とされているものもあれば、“顧客から委託を受けて”…を行う、とされているものもある。他方で、仲介業者の行動は、実態上は、このような法律上の定義・位置付けよりも、報酬・利益をどこから受け取るのかといった経済的なインセンティブの影響を強く受けていると考えられます。例えば、顧客に適した同種の金融商品・サービスが複数ある場合、仲介業者には、顧客の最善の利益ではなく、仲介業者が金融機関から受け取る仲介手数料の多寡に基づいて商品を紹介するインセンティブが働き得ます。
これを踏まえれば、新たな仲介業者の立場について、法律上何らかの位置付けを定めるのではなく、経済的なインセンティブに関する透明性を確保することで、顧客が仲介業者の中立性を評価できる環境を整えることが重要である。具体的には、所属金融機関を有しない既存の仲介業者である保険仲立人の制度にならい、新たな仲介業者に対し、金融機関から受け取る手数料等の開示を求めることが適当です。また、このような経済的なインセンティブに関する透明性の確保に加え、仲介先の金融機関との間の委託関係・資本関係の有無など仲介業者の立場を顧客へ明示することを求めることが適当です。そして、顧客本位で利便性の高い仲介サービスの実現に向けては、仲介業者の立場に関する透明性の確保を図るための制度上の対応に留まらず、新たな仲介業者において「顧客本位の業務運営の原則」を踏まえた自主的な取組が進められることが望ましいです。
なお、新たな仲介業者が報酬・利益をどこから受け取るのかについて制限を設けること(例:顧客からのみ報酬・利益を受け取ることを認めること)については、仲介業者のビジネスモデルを限定することにつながり、新たな仲介業への参入が進まなくなるおそれがあること、また、仲介業者が仲介先の金融機関等から報酬・利益を得ている場合でも、経済的なインセンティブに関する透明性の確保により、顧客に対する中立的なサービス提供を期待できる場合があると考えられることから、その必要性は乏しいと考えられます。

(出所)金融審議会「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」(第5回)「参考資料」(2019年11月26日)
 
5.顧客に対する説明義務
顧客が自身にあった金融サービスを選択できるようにするためには、様々な金融サービスについて、適切な情報提供を受けていることが重要です。新たな仲介業には所属制を採用しないことから、顧客に対する適切な情報提供を確保するため、既存の仲介業に求められている義務を参考に、書面交付、適合性原則を踏まえた適切な説明、情報提供を求めることが適当です。
その際、金融機関と新たな仲介業者の連携・協働関係において、仲介に関する両者の役割分担は、ビジネスモデルに応じて様々であると想定されます。また、顧客の立場に立ってみれば、仲介行為の開始から契約締結に至る一連の過程において、同じ情報の提供や説明を何度も受ける必要性は乏しいと考えられます。そこで、新たな仲介業者の説明義務等については、契約締結に至る一連の過程において、金融機関・仲介業者のいずれかが十分な説明を行えば足りることとすることが考えられます。
他方で、顧客保護上、金融機関と新たな仲介業者の間での書面交付や説明・情報提供の役割分担が明確になっていることは重要です。そこで、新たな仲介業者には、仲介を行うにあたって、書面交付や説明・情報提供に関して仲介業者が担う役割を顧客に明示することを求めることが考えられます。
6.「機能」ごとの特性に応じた規制
上記のとおり、新たな仲介業者が取り扱う商品・サービスの特性を踏まえ、必要なルールが過不足なく適用されることを確保する必要があります。
このため、銀行分野の仲介における情実融資の媒介の禁止、証券分野の仲介におけるインサイダー情報を利用した勧誘行為の禁止、損失補填の禁止、顧客の注文の動向等の情報を利用した自己売買の禁止、保険分野の仲介における意向把握義務、自己契約の禁止、告知の妨害の禁止、不適切な乗換募集の禁止、といった仲介分野ごとの特性に応じたルールについては、既存の仲介業に関する規制を参考に、必要なルールを過不足なく設けることが適当です。
 

(出所)金融審議会「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」(第5回)「参考資料」(2019年11月26日)
 

 
7.その他
(1)仲介業者が金融機関に及ぼす影響力
本制度が導入された場合、金融商品・サービスの提供における仲介業者のシェア・規模・存在感が大きくなっていく可能性はあるものの、仲介業者と金融機関との関係性において、仲介業者が支配的な影響力を及ぼすような懸念は、現時点では、大きくないものと考えられます。仮に仲介業者の影響力が過大なものとなる状況となれば、まずは競争法の適用により対処されるものと考えられますが、今後、金融行政の観点からも必要な対応がありうることについて留意が必要であると考えられます。
(2)協会・裁判外紛争解決制度
新たな仲介業者に所属制を採用しないことを踏まえれば、利用者保護の観点から、新たな仲介業者に係る自主規制や紛争解決手続が整備されることが重要です。
そのため、新たな仲介業者に係る協会を設け、自主規制の整備や適切な業務運営に資する情報交換等を促すことや、新たな仲介業者を当事者とする紛争解決手続が整備されることが望ましいと考えられます。その際、必要に応じて既存の協会と連携・協力しながら、自主規制や協会体制の整備が進められることが期待されます。

[1]https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20191220.html
[2]本報告書は、令和元年7月26日の金融審議会 金融制度スタディ・グループ 「「決済」法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告≪基本的な考え方≫」(以下「基本的な考え方」という。)(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190726.html)で検討された内容を更に詳細に検討したものである。
[3]銀行代理業者、金融商品仲介業者、保険募集人等は、制度上、特定の金融機関に「所属」することとされている。所属制の下では、所属先の金融機関は、例えば、①仲介業者の指導等の義務や、②仲介業者が顧客に加えた損害の賠償責任、を負うこととされている。
[4]日本証券業協会「協会員の外務員の資格、登録等に関する規則」第2条第4号において、二種外務員には、デリバティブ取引や信用取引等の取扱いに一定の制限が設けられている。