トピックス

2019.04.05
NEWS

IR(特定複合観光施設)ニュース】マネー・ローンダリング対策(本人確認等の対象となる特定取引の範囲・現金取引報告(CTR)の対象となる取引の範囲)

(執筆者:渡邉雅之

[miyakenews] IR(特定複合観光施設)ニュースNo.1 / 「特定複合観光施設区域整備法施行令」の解説』もご覧ください。
 「特定複合観光施設区域整備法」(平成30年7月27日法律第80号、以下「IR整備法」又は「法」といいます。)の施行政令である「特定複合観光施設区域整備法施行令」(平成31年3月27日政令第72号、以下「IR整備法施行令」又は「施行令」といいます。)が公布されました。
 そこで、IR整備法施行令の内容を逐条解説いきます。
 今回は、専らカジノ行為の用に供される部分(ゲーミング区域)の床面積の上限(施行令第6条)について解説いたします。
 なお、筆者は、特定複合観光施設区域整備推進会議の委員ですが、本解説の意見は個人的な見解に過ぎないことにご留意ください。

※「意見の概要及びそれに対する特定複合観光施設区域整備推進本部事務局の考え方」に示される特定複合観光施設区域整備推進本部事務局の考え方を番号順に「PC」で記載しています。

1.本人確認等の対象となる特定取引の範囲(犯収法施行令第7条第4号等)
 
〇犯収法施行令第7条
(金融機関等の特定取引)
第7条 次の各号に掲げる法の規定に規定する政令で定める取引は、当該各号に定める取引・・・・とする。
 一~三(略)
 四 法別表第2条第2項第40号に掲げる者の項  次のいずれかに該当する取引
イ 特定資金移動業務(特定複合観光施設区域整備法(平成30年法律第80号)第2条第8項第2号イに規定する特定資金移動業務をいう。ホにおいて同じ。)又は特定資金受入業務(同号ロに規定する特定資金受入業務をいう。ニ及びホにおいて同じ。)に係る口座の開設を行うことを内容とする契約の締結
ロ 特定資金貸付契約(特定複合観光施設区域整備法第73条第10項に規定する特定資金貸付契約をいう。ホにおいて同じ。)の締結
ハ チップ(特定複合観光施設区域整備法第73条第6項に規定するチップをいう。以下ハにおいて同じ。)の交付若しくは付与又は受領をする取引(第3項第6号において「チップ交付等取引」という。)であって、当該取引に係るチップの価額が30万円を超えるもの
ニ 特定資金受入業務に係る金銭の受入れ
ホ 特定資金受入業務に係る金銭の払戻し(特定資金移動業務に係る為替取引を伴うものを除く。)、特定資金貸付契約に係る債権の弁済の受領(特定複合観光施設区域整備法第2条第8項第2号イに規定するカジノ管理委員会規則で定める金融機関が行う為替取引(口座間の金銭の移動に係るものに限る。)を伴うものを除く。)又は同号ニに掲げる業務に係る金銭の両替(第3項第7号において「カジノ関連金銭受払取引」という。)であって、当該取引の金額が30万円を超えるもの
ヘ カジノ行為関連景品類(特定複合観光施設区域整備法第2条第13項に規定するカジノ行為関連景品類をいい、同項第1号に掲げるものに限る。以下ヘ及び第3項第8号において同じ。)の提供であって、当該提供に係るカジノ行為関連景品類の価額が30万円を超えるもの
 五~七(略)
2(略)
3 特定事業者が同一の顧客等との間で2以上の次の各号に掲げる取引を同時に又は連続して行う場合において、当該2以上の取引が1回当たりの取引の金額を減少させるために1の当該各号に掲げる取引を分割したものの全部又は一部であることが一見して明らかであるものであるときは、当該2以上の取引を1の取引とみなして、第1項の規定を適用する。
 一~五(略)
 六 チップ交付等取引
七 カジノ関連金銭受払取引
八 カジノ行為関連景品類の提供
九(略)
 
〇犯収法施行令第15
(少額の取引等)
第15条 法第7条第1項に規定する政令で定める取引は、次に掲げるものとする。
 一(略)
二 その価額が1万円以下の財産の財産移転に係る取引
 三 前号に掲げるもののほか、次のイからハに掲げる特定事業者の区分に応じ、当該イからハに定める取引
  イ(略)
  ロ 法第2条第2項第40号に掲げる特定事業者第7条第1項第4号ホに規定する金銭の両替であって、当該取引の金額が30万円以下のもの
  ハ(略)
 四(略)
2(略)
 
〇犯収法
(定義)
第2条(略)
2 この法律において「特定事業者」とは、次に掲げる者をいう。
 一~三十九(略)
 四十 特定複合観光施設区域整備法(平成30年法律第80号)第2条第9項に規定するカジノ事業者
 四十一~四十八
3(略)
 
(取引時確認等)
第4条 特定事業者(中略)は、顧客等との間で、別表の上欄に掲げる特定事業者の区分に応じそれぞれ同表の中欄に定める業務(以下「特定業務」という。)のうち同表の下欄に定める取引(次項第2号において「特定取引」といい、同項前段に規定する取引に該当するものを除く。)を行うに際しては、主務省令で定める方法により、当該顧客等について、次の各号(中略)に掲げる事項の確認を行わなければならない。
一 本人特定事項(自然人にあっては氏名、住居(本邦内に住居を有しない外国人で政令で定めるものにあっては、主務省令で定める事項)及び生年月日をいい、法人にあっては名称及び本店又は主たる事務所の所在地をいう。以下同じ。)
二 取引を行う目的
三 当該顧客等が自然人である場合にあっては職業、当該顧客等が法人である場合にあっては事業の内容
四 当該顧客等が法人である場合において、その事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にあるもの
2~6(略)
 
(取引記録等の作成義務等)
第7条 特定事業者(次項に規定する特定事業者を除く。)は、特定業務に係る取引を行った場合には、少額の取引その他の政令で定める取引を除き、直ちに、主務省令で定める方法により、顧客等の確認記録を検索するための事項、当該取引の期日及び内容その他の主務省令で定める事項に関する記録を作成しなければならない。
2・3(略)
 
別表(第4条関係)
特定事業者 特定業務 特定取引
第2条第2項第40号に掲げる者 特定複合観光施設区域整備法第2条第8項に規定するカジノ業務(同条第7項に規定するカジノ行為を除く。) チップ(同法第73条第6項に規定するチップをいう。)の交付又は付与をする取引その他の政令で定める取引
 
(1)カジノ事業者の犯収法上の取引時確認等の義務
ア 犯収法上の義務の概要
 犯罪による収益の移転に関する法律(以下「犯収法」といいます。)は、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与を未然に防止するための法律です。
犯収法上、金融機関等の「特定事業者」に該当する者は以下の義務を負います。
  • 取引時確認の義務(同法第4条)
  • 確認記録の作成・保存義務(同法6条)
  • 取引記録等の作成・保存義務(同法第7条)
  • 疑わしい取引の届出義務(同法第8条)
  • 取引時確認等を的確に行うための措置(同法第11条)
 
 「特定事業者」による「取引時確認」の義務(同法第4条)は、以下のとおりです。
①個人顧客
  • 本人特定事項(氏名、住居、生年月日)
  • 取引を行う目的
  • 職業
②法人顧客
  • 本人特定事項(商号・名称、本店又は主たる事務所の所在地)
  • 取引を行う目的
  • 事業内容
  • 実質的支配者の本人特定事項
  • 取引担当者の本人特定事項・代理権の確認
 
 「特定事業者」は、「特定取引」及び「特定業務」について以下の義務を負います。
①「特定取引」・・・「取引時確認」及び「確認記録の作成・保存」の対象となる取引
②「特定業務」は、「取引記録等の作成・保存」及び「疑わしい取引の届出」の対象となる取引
 
イ カジノ事業者(「特定事業者」)
 IR整備法の制定に伴い、IR整備法第2条第9項に規定する「カジノ事業者」が「特定事業者」として指定されます(犯収法第2条第2項第40条)。
 
ウ カジノ事業者の「特定業務」(「取引記録等の作成・保存」及び「疑わしい取引の届出」の対象となる取引)
 カジノ事業者の「特定業務」(「取引記録等の作成・保存」及び「疑わしい取引の届出」の対象となる取引)は、カジノ業務(法第2条第7項のカジノ行為を除く)とされています(犯収法別表(第4条関係))。
 具体的には、カジノ業務のうち、「カジノ施設におけるカジノ行為を顧客との間で行い、又は顧客相互間で行わせることに係る業務(以下「カジノ行為業務」という。)」(法第2条第8項第1号)を除く、以下の業務が対象となります。
 
①カジノ施設におけるカジノ行為を顧客との間で行い、又は顧客相互間で行わせることに係る業務(「カジノ行為業務」)(法第2条第8項第1号)
②特定資金移動業務(カジノ行為を行う顧客の依頼を受けて当該顧客の金銭について行う銀行その他のカジノ管理委員会規則で定める金融機関を介し、カジノ事業者の管理する当該顧客の口座と当該顧客の指定する預貯金口座との間で当該顧客の金銭の移動に係る為替取引を行う業務)(同項第2号イ)
③特定資金受入業務(カジノ行為を行う顧客の依頼を受けて当該顧客の金銭について行う当該顧客の金銭を受け入れる業務)(同号ロ)
④特定資金貸付業務(カジノ行為を行う顧客の依頼を受けて当該顧客の金銭について行う当該顧客に金銭を貸し付ける業務)(同号ハ)
⑤カジノ行為を行う顧客の依頼を受けて当該顧客の金銭について行う金銭の両替を行う業務(同号二)
⑥上記に掲げる業務に附帯する業務(同条第3号)
 
 なお、「特定業務」から、「カジノ業務」(法第2条第8項)のうち、「カジノ行為」(同条第7項)が除外されています。
「カジノ行為」とは、カジノ事業者と顧客との間又は顧客相互間で、同一の施設において、その場所に設置された機器又は用具を用いて、偶然の事情により金銭の得喪を争う行為であって、海外において行われているこれに相当する行為の実施の状況を勘案して、カジノ事業の健全な運営に対する国民の信頼を確保し、及びその理解を得る観点から我が国においても行われることが社会通念上相当と認められるものとしてその種類及び方法をカジノ管理委員会規則で定めるものをいいます(法第2条第7項)。すなわち、ゲーミング行為そのもののことです。
 カジノ行為(ゲーミング行為)自体の違反やチート行為そのものは、犯収法上の「特定業務」ではなく、疑わしい取引の届出の対象とはなりませんが、こういった行為に伴い、チップの交付・付与・受領をする取引(「チップ交付等取引」)が行われる場合には、マネー・ローンダリングとして疑わしい取引の届出の対象となると考えられます。
 
エ カジノ事業者の「特定取引」(「取引時確認」及び「確認記録の作成・保存」の対象となる取引)
 カジノ事業者の「特定取引」(「取引時確認」及び「確認記録の作成・保存」の対象となる取引)の対象となる取引としては、犯収法施行令第7条において以下のものが定められました。
 
〇カジノ事業者の「特定取引」
①「特定資金移動業務」(注1)又は「特定資金受入業務」(注2)に係る口座の開設を行うことを内容とする契約の締結(犯収法施行令第7条第1項第4号イ)
②「特定資金貸付契約」(注3)の締結(同号ロ)
③「チップ」(注4)の交付・付与・受領をする取引(「チップ交付等取引」)であって、当該取引に係るチップの価額が30万円を超えるもの(同号ハ)
④「特定資金受入業務」に係る金銭の受入れ(同号二)
⑤「カジノ関連金銭受払取引」(以下のいずれかの取引)当該取引の金額が30万円を超えるもの(同号ホ)
  • 「特定資金受入業務」に係る現金による払戻し
  • 「特定資金貸付契約」に係る債権の弁済の現金による受領
  • カジノ行為を行う顧客の依頼を受けて当該顧客の金銭について行う「金銭の両替」(注5)
⑥「カジノ行為関連景品類」(顧客をカジノ行為に誘引するための手段として、カジノ事業者がカジノ行為に付随して相手方に提供する物品、金銭、役務その他の経済上の利益(注6)に限る。)の提供であって、当該提供に係るカジノ行為関連景品類の価額が30万円を超えるもの(同号へ)

(注1)特定資金移動業務」とは、カジノ行為を行う顧客の依頼を受けて当該顧客の金銭について行う銀行その他のカジノ管理委員会規則で定める金融機関を介し、カジノ事業者の管理する当該顧客の口座と当該顧客の指定する預貯金口座との間で当該顧客の金銭の移動に係る為替取引を行う業務(法第2条第8項第2号イ)。
(注2)「特定資金受入業務」とは、カジノ行為を行う顧客の依頼を受けて当該顧客の金銭について行う当該顧客の金銭を受け入れる業務(法第2条第8項第2号ロ)。
(注3)「特定資金貸付契約」とは、顧客からカジノ行為に供しようとする金銭の貸付けに係る依頼を受け、当該顧客との間でカジノ事業者が締結する特定資金貸付業務に係る契約をいう(法第73条第10項)。
(注4)「チップ」とは、金銭の額に相当する価額を有するものとして交付又は付与をされる証票、電子機器その他の物又は番号、記号その他の符号であって、カジノ行為を行うために提示、交付その他の方法により使用することができるものをいう(法第73条第6項)。
(注5)法第2条第8項第2号ニ
(注6)法第2条第13項第1号
 
 これは、IR推進会議取りまとめ(政令)において、以下のとおり提言されたことを受けたものです。

〇IR推進会議取りまとめ(政令)(2018年12月4日)
Ⅳ.マネー・ローンダリング対策(本人確認等の対象となる特定取引の範囲・現金取引報告(CTR)の対象となる取引の範囲)の考え方
<政令の方向性>
(本人確認等の対象となる特定取引の範囲)
・ 犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19 年法律第22 号。以下「犯収法」という。)における「特定事業者」として、カジノ事業者が、本人確認(取引時確認)等を行うことが義務付けられる「特定取引」の範囲は、カジノ事業者と顧客との間の現金とチップの交換の他、カジノ事業者が管理する顧客の口座の開設や顧客からの金銭の受入れ、貸付け等に係る取引、カジノ行為関連景品類(コンプ)の提供等に係る取引とすべき。
・ 「特定取引」のうち、現金とチップの交換等について閾値 を定める場合には、FATF(注)勧告(3千ドル/ユーロ)を参考とすべき。
※FATF勧告22及びその解釈ノートにおいて、カジノにおいて顧客が3000ドル/ユーロ以上の金融取引に従事する場合に顧客管理措置を取ることを求めている。
(注)「FATF」とは、Financial Action Task Force:国際金融作業部会。マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策のための国際基準を策定する多国間の枠組みとして、1989 年のアルシュ・サミット経済宣言によって設立された。

 ③「チップ」 の交付・付与・受領をする取引、⑤「特定資金受入業務」に係る現金による払戻し、⑥「特定資金貸付契約」に係る債権の弁済の現金による受領、⑦カジノ行為を行う顧客の依頼を受けて当該顧客の金銭について行う「金銭の両替」、⑥「カジノ行為関連景品類」(顧客をカジノ行為に誘引するための手段として、カジノ事業者がカジノ行為に付随して相手方に提供する物品、金銭、役務その他の経済上の利益に限る。)の提供については、いずれも、「当該取引の金額が30万円を超えるもの」のみ、「特定取引」の対象となります(犯収法施行令第7条第1項第4号ハ、ホ、ヘ)。これは、FATF勧告22及びその解釈ノートにおいて、カジノにおいて顧客が3000ドル/ユーロ以上の金融取引に従事する場合に顧客管理措置を取ることを求めていることを踏まえたものです。
これに対して、①「特定資金移動業務」 ・「特定資金受入業務」 に係る口座の開設を行うことを内容とする契約の締結、②「特定資金貸付契約」 の締結、④「特定資金受入業務」に係る金銭の受入れについては、当該取引の金額が30万円を超えないものについても「特定取引」の対象となります(犯収法施行令第7条第1項第4号イ・ロ・二)。
 
オ カジノ事業者の敷居値あたりの金額を分割したことが明らかな取引
 特定事業者が同一の顧客等との間で二つ以上の以下の取引を同時にまたは連続して行う場合において、当該二以上の取引が1回当たりの取引の金額を減少させるために以下に掲げる取引を分割したものの全部または一部であることが一見して明らかである場合は、当該二以上の取引を一の取引とみなして、「特定取引」該当性が判断されます(犯収法施行令第7条第3項)。
 カジノ事業者の行う取引については、30万円の敷居値(30万円を超える取引のみが対象)のある以下の取引が対象となります。
 
  • 「チップ交付等取引」(犯収法施行令第7条第3項第6号)
  • 「カジノ関連金銭受払取引」(同項第7号)
  • 「カジノ行為関連景品類」(顧客をカジノ行為に誘引するための手段として、カジノ事業者がカジノ行為に付随して相手方に提供する物品、金銭、役務その他の経済上の利益に限る。)(同項第8号)
 
カ 取引記録等の記録から除外される取引
 上記ウのとおり、カジノ事業者による取引記録等の作成・保存(犯収法第7条)の対象となるのは、以下の「特定業務」です。
①特定資金受入業務(カジノ行為を行う顧客の依頼を受けて当該顧客の金銭について行う当該顧客の金銭を受け入れる業務)(同号ロ)
②特定資金貸付業務(カジノ行為を行う顧客の依頼を受けて当該顧客の金銭について行う当該顧客に金銭を貸し付ける業務)(同号ハ)
③カジノ行為を行う顧客の依頼を受けて当該顧客の金銭について行う金銭の両替を行う業務(同号二)
④上記に掲げる業務に附帯する業務(同条第3号)
 
もっとも、このうち、①その価額が1万円以下の財産の財産移転に係る取引、及び、②金銭の両替であって、当該取引の金額が30万円以下のものについては、取引記録等の作成・保存義務から除外されます(犯収法施行令第15条第1項第2号、第3号ロ)。
 
2.現金取引報告(CTR)の対象となる取引の範囲(法第109条第1項、施行令第16条)
 
〇施行令第16
(届出の対象となる取引)
第16条 法第109条第1項の政令で定める取引は、次に掲げる取引とする。
 一 チップの交付若しくは付与又は受領をする取引
 二 法第2条第8項第2号ロに規定する特定資金受入業務に係る金銭の受入れ若しくは払戻し、特定資金貸付契約に係る債権の弁済の受領又は同号二に掲げる業務に係る両替
2 法第109条第1項の政令で定める額は、100万円とする。
 
〇法第109
(取引の届出等)
第109条 カジノ事業者は、顧客との間で、カジノ業務に係る取引のうち、チップの交付等をする取引その他の政令で定める取引であって、政令で定める額を超える現金の受払いをするものを行ったときは、カジノ管理委員会規則で定めるところにより、遅滞なく、当該取引の内容、金額その他カジノ管理委員会規則で定める事項をカジノ管理委員会に届け出なければならない。
2(略)
 
(1)現金取引報告(CTR)(注)
 カジノ事業者は、顧客との間で、カジノ業務に係る取引のうち、以下のいずれかの取引であって、100万円を超える現金の受払いをするものを行ったときは、遅滞なく、当該取引の内容、金額その他カジノ管理委員会規則で定める事項をカジノ管理委員会に届け出なければなりません(法第109条第1項、施行令第16条)。
(注)Cash Transaction Report:現金取引報告。
 
①チップの交付若しくは付与又は受領をする取引(施行令第16条第1項第1号)
②特定資金受入業務に係る金銭の受入れ・払戻し(同項第2号)
③特定資金貸付契約に係る債権の弁済の受領(同項第2号)
④カジノ行為を行う顧客の依頼を受けて当該顧客の金銭について行う金銭の両替を行う業務に係る両替(同項第2号)
 
 法第109条第1項に基づく現金取引報告(CTR)は、カジノ事業がマネー・ローンダリングに利用されるリスクが高く、また、米国やシンガポール等の諸外国のカジノでもCTRが導入することを踏まえ、犯収法の規制に上乗せして導入された制度です(PC113~115)。
 金額が「100万円超」(施行令第16条第2項)とされたのは、米国が1万ドル超、シンガポールが1万シンガポールドル以上とされていることを踏まえたものです(PC108~112)。
 
〇IR推進会議取りまとめ(法律)
○一定額以上の現金取引の届出
カジノ事業は、現金取引を原則とし、1年を通じて多額の現金とチップの交換等が頻繁に行われること等から、マネー・ローンダリングのリスクが高いという特性に鑑み、諸外国の規制を参考にして、犯罪収益移転防止法の枠組みに上乗せして、一定額以上の全ての現金取引についてカジノ管理委員会への届出(CTR:Cash Transaction Report)を義務付けるべきである。
 
〇IR推進会議取りまとめ(政令)
Ⅳ.マネー・ローンダリング対策(本人確認等の対象となる特定取引の範囲・現金取引報告(CTR)の対象となる取引の範囲)の考え方
(現金取引報告(CTR)の対象となる取引の範囲)
現金取引報告(CTR)の対象となる取引の範囲 については、カジノ事業者と顧客との間の現金とチップの交換等、現金の受払いが行われるとすべき。
・ その閾値については、米国(1万ドル超)やシンガポール(1万シンガポールドル以上)を参考とすべき。
 
(2)現金取引報告(CTR)の対象とならない取引
 現金取引報告(CTR)は、カジノ事業がマネー・ローンダリングに利用されるリスクが高く、また、米国やシンガポール等の諸外国のカジノでもCTRが導入されていること等を踏まえて導入あれた制度であり、カジノ以外のIRにおける取引については対象としていません(PC117)。
 現金取引報告(CTR)の対象は、現金により受払いが行われたもののみであり、特定資金貸付契約の個々の貸付けは、法第76条第1項の規定の趣旨から現金による貸付けは想定されないため、対象としていません(PC118)。これに対して、特定資金貸付契約に係る弁済の受領については現金による受払いが想定されるため、対象とされています(PC118)。
 なお、現金取引報告(CTR)の対象とされる取引については、犯収法上の取引時確認により本人特定事項を確認する取引であって現金の受払いが想定されるものを対象としていますが、犯収法は「債権の譲受者」に取引時確認の義務を貸しておらず、本人特定事項を確認する必要がないことから、現金取引報告(CTR)の対象とされていません(PC118)。
 
3 IR整備法上のその他のマネー・ローンダリング規制
 IR整備法には、上記1の犯収法に基づく規制と上記2の現金取引報告(CTR)に加えて以下の規制が設けられています。
(1)取引時確認等の措置等の的確な実施のための措置(法第103条)
 犯収法第11条では、「取引時確認等を的確に行うための措置」は努力義務に留まるものとされています。
これに対して、法第103条は、犯収法第11条の規定に関わらず、同条に基づく取引時確認等の措置、チップの譲渡等の防止のための措置(法第104条)、チップの譲渡等の禁止の表示(法第105条)及び取引の届出(法第109条第1項)(「取引時確認等の措置等」)を的確に実施するため、「犯罪収益移転防止規程」に従って、取引時確認をした事項に係る情報を最新の内容に保つための措置を講ずるほか、次に掲げる措置を講じなければならなりません(法的義務)。
①取引時確認等の措置等の的確な実施のための従業者に対する教育訓練の実施(法第103条第1項第1号)
②取引時確認等の措置等の的確な実施のための体制の整備(取引時確認等の措置等の的確な実施のために必要な業務を統括管理する者及び当該業務を監査する者の選任を含む。)(同項第2号)
③取引時確認等の措置等に関する評価の実施(同項第3号)
④前3号に掲げるもののほか、犯罪収益移転危険度調査書の内容又はカジノ事業の特性を勘案して講ずべきものとしてカジノ管理委員会規則で定める措置(同項第4号)
 
 カジノ事業者は、取引時確認等の措置等の的確な実施のための措置に関して、以下の義務を負います(法第103条第2項、第68条第3項)。
 
  • 犯罪収益移転防止規程の遵守。
  • 取引時確認等の措置等の的確な実施のための措置(法第103条第1項)の的確な実施に関し、統括管理者のその職務を行う上での意見を尊重。
  • 「取引時確認等の措置等に関する評価」(上記③・法第103条第1項第3号)を行ったときは、カジノ管理委員会規則で定めるところにより、遅滞なく、当該評価の結果をカジノ管理委員会に届け出る義務。
  • カジノ事業者は、取引時確認等の措置等に関する監査報告の内容の通知を受けたときは、遅滞なく、これをカジノ管理委員会に届け出る義務。
 
 これらの義務は、IR推進会議取りまとめ(法律)において、以下のとおり提言されたことを受けたものです。
〇IR推進会議取りまとめ(法律)
<制度設計の方向性>
カジノ事業者に対し、マネー・ローンダリング対策に係る業務について、万全の内部管理体制の整備を例外なく義務付けるべきである。
また、カジノ事業者が実施する自己評価及び監査の結果については、その都度カジノ管理委員会に報告させることとすべきである。
 
(2)チップの譲渡等の防止のための措置・チップの譲渡等の禁止の表示(法第104条・第105条)
 カジノ事業者は、カジノ管理委員会規則で定めるところにより、顧客がチップを他人(自己と生計を一にする配偶者その他の親族(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者及び当該事情にある者の親族を含む。)及び当該カジノ事業者を除く。)に譲渡すること及びチップを他人から譲り受けることを防止するために必要な措置を講じなければなりません(法第104条第1項)。
 また、カジノ事業者は、カジノ管理委員会規則で定めるところにより、顧客がチップをカジノ行為区画の外に持ち出すことを防止するために必要な措置を講じなければなりません(法第104条第2項)。
 さらに、カジノ事業者は、カジノ管理委員会規則で定めるところにより、顧客がチップを他人に譲渡し、若しくはチップを他人から譲り受け、又はチップをカジノ行為区画の外に持ち出すことが禁止されている旨を、本人確認区画及びカジノ行為区画に表示しなければなりません(法第105条)。
 これらの措置は、IR推進会議取りまとめ(法律)において、以下のとおり提言されたことを受けたものです。海外(米国やシンガポール)にもない措置であり、世界最高水準のマネー・ローンダリング規制を目指すものです。
〇IR推進会議取りまとめ(法律)
<制度設計の方向性>
○カジノ施設内での顧客間のチップ、バウチャー等(以下「チップ等」という。)の譲渡については、原則として禁止し、日本独自の規制を導入すべきである。
○カジノ施設外へのチップ等の持ち出しについては、禁止すべきである。
○これらの規制の執行のための措置として、カジノ事業者に対し、
・カジノ施設利用約款において、上記の禁止事項について規定すること
・入退場ゲートやカジノ施設内に、上記の禁止事項を表示させること
・監視カメラや従業員による巡回警備等を通じて、チップ等の譲渡やカジノ施設外への持ち出しが行われないよう監視を行うこと
等の措置を講じることを義務付けるべきである。
○また、チップについて入退場ゲートで反応するIC タグを内蔵するなどの機能上の規制を設けることについて検討すべきである。